自分自身は、子どもの頃からアトピー性皮膚炎とアレルギー性鼻炎を持ち、いつも鼻が痒くて、今もベッドに入ると苦しいことが続いている。
妊娠中は鼻が詰まって耐えられないくらいになったが、子どもに影響があると我慢していた。
自分の子どもも、兄弟揃ってアトピー性皮膚炎、卵と牛乳アレルギーがあるが、3歳になっても様子をみましょうと言われるばかりで何も良くなってない。
布団の上で遊ぶとくしゃみ、毎朝鼻がつまっていたが、最近鼻が痒いらしく、いつも鼻をいじっている。
病院に行っても、薬を処方されるだけ。やることはないと言われている。
治らない子どもの鼻をみて、悲しくなった。
さて、アレルギー性鼻炎で長年同じような薬を飲み続けていませんか。
お医者さんに相談しようにも薬を飲みなさいと言われるだけ。
良くも悪くも良くもならないまま、こんなものだと諦めているかもしれませんが…実は、どんな症状が出るかによって、薬の組み合わせを変えることで、症状をゼロもしくはほとんどないようにすることが、アレルギー治療の目標です。
【まとめ】
・アレルギー性鼻炎を、根本から治して薬を無くすことができる可能性があるのは、ダニ免疫療法しかない。
・様子を見るのは、多くの場合、事態の悪化しか招かない。
1)原因はダニ
アレルギー性鼻炎の有病率は、日本人の30%を超えていると報告されています。
アレルギー性鼻炎の原因は、ダニアレルギーです。
一つのアレルギーは他のアレルギーを呼んできますが、アレルギー性鼻炎の場合には花粉症になります。さらに、花粉症になると自然に治ることはありません。そして、近年患者数も顕著に増え、若年化しています。
北海道では、ダニアレルギー、からのアレルギー性鼻炎、そして花粉症、最後に果物・野菜アレルギーの順番で進みます。
花粉症になると、50%の人が果物・野菜アレルギーになりますので、果物・野菜のアレルギーがある時点で、ダニ、アレルギー性鼻炎、花粉症は持っていることになります。
数十年前にハウスダストと言われていたものは、現在ではダニがアレルギーの原因だとわかっています。
ちなみに、10年前のエキスパ―トセミナーで、「ハウスダストは日本でしか検査しない。恥ずかしいからアレルギー医なら絶対に検査するな」と、アメリカ帰りの先生からお言葉を頂戴しました。
ダニの種類でほとんどを占めるのはチリ科のダニで、山にいるダニとは違います。ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニが代表で、採血ではどちらかを見れば十分です。
ハウスダストを採血で計測することに意味はありません。
日本で1gのチリ中に含まれるダニのアレルゲン量(アレルゲン:アレルギーを起こす原因物質)は、寝具中も絨毯も20㎍/g dustと言われます。1歳時に室内でのダニ(アレルゲン量という)が、2㎍/g dust以上だと採血でダニの値が上がりはじめ、10㎍/g dustだと7~11歳で喘息になる可能性は他の子より3~4.8倍高くなります。
これは喘息が発症する量、発作が起きる量が10㎍/g dustであることを考えると、寝具を掃除しないと、かなりの高い確率でアレルギー性鼻炎、気管支喘息になる、そして様子を見ても事態は悪化することがわかります。
つまり、喘息やアレルギー性鼻炎になりやすいことがわかります。
2)抗アレルギー剤で、治る可能性はない
アレルギー性鼻炎の場合、抗アレルギー薬を飲むことが一般的ですが、効果は60%程度の人にしかなく、 2~4週間の治療で効果がない場合には、薬剤を変更し、あなたに合った薬を選ぶ必要があります。
「効果がある」とは、「症状がゼロになる」ことです。
一方で、ほとんどの場合そうはならず、効果があったとしても、症状をそれなりに抑えているだけです。
私の息子はアレルギー性鼻炎がとても酷く、人の4倍の薬を飲んで、2倍の量の点鼻薬を使っていました。
これが、4歳の時です。薬漬けでした。
しかし、色々な専門医に受診しても、4歳の時にはこれ以上やれることはないと言われ、鼻の詰まりで息子は夜中に泣いて起きる状態でした。
その当時、アレルギー医になりたてだった私は、親として「本当に治療方法はないのか?」と思う反面、専門医が言うならと諦めの気持ちから泣きたくなっていました。
ところが、勉強に行ったイタリアのアレルギー学会で、アメリカやヨーロッパではアレルギー性鼻炎の原因のダニアレルギーは、注射や舌下と言われる方法で根本的に治療することが一般的であることを知ります。
そこで、私は日本でも同様の治療を探しましたが、2013年の日本では他の国よりも6割程度の効果しかない薬しかありませんでした。
他の国と同じ薬をアメリカから輸入して治療しようとしましたが、3ヶ月以上はかかる事がわかったので、他の国と同じ薬をアメリカから輸入をしつつ、まずは日本の薬で息子のダニアレルギーの治療を開始しました。ちなみに、この輸入した薬は私が自分自身で治療を行いました。
すると、6割程度の効果の薬でも治療開始1ヶ月後には夜中に起きることは一切なくなり、不眠が続き機嫌の悪かった息子や家族がイライラする事はなくなり、明らかに私の息子の鼻は良くなっている事を実感しました。
そして、3ヶ月後には今まで悩んでいた症状を忘れるくらいになり、今までの薬を減らし始めました。
治療開始6ヶ月後には月1回の注射以外、薬は必要がなくなりました。
現在は、日本でも同程度の効果のある薬が健康保険で使えるようになりましたが、5年前までは大変だったのです。
3)治せる可能性があるのは、ダニアレルゲン免疫療法だけ
ダニアレルギーを治療すること、これがアレルギー性鼻炎を治すことが期待できる唯一の方法です。
治るとゆうことは、薬もいらなくなるとゆうことです。
世界ではアレルギー性鼻炎の治療と言えばこれです。
ダニアレルゲン免疫療法は「ダニアレルギーと診断が確定している」すべての人に適応があり(採血で値が高いこと)、ダニアレルギーが原因であれば、アレルギー性鼻炎でも気管支喘息、結膜炎にも効果があることが報告されていますし、実際高い効果があります。
10年近く前にヨーロッパの学会で、世界ではアレルギー性鼻炎の治療は、ダニアレルゲン免疫療法が主流であり、日本のように抗アレルギー剤をずっと飲み続けることはないのだと、初めて知りました。
内服薬は2種類を2倍、点鼻は2倍使用しても、鼻がつまり、かゆくなって寝不足になっていた私は、自分自身治療を始めようと思った時には、ダニアレルゲンの薬が日本にありませんでした。当時、日本にあったハウスダストはダニアレルゲンの薬の60%程度しか効果がありませんでしたので、アメリカから輸入して自分で治療していました。
研究結果では、ダニアレルギーの治療に成功するのは80%程度、成功した方の約70%は20年経過しても無症状と報告されていますが、私の経験と自分の調子からはその通りだと思っています。
気管支喘息へのダニ免疫療法の最大のメリットは、吸入薬が減らせることと、過敏性(気温差でも耐えられない子など)、アレルギー性鼻炎のかゆみ、印象的には50%の子が花粉症になるのを防止できる印象があります(花粉症だけは、あくまでも経験的な印象)。
【こうなることを目指します】
症状なし、薬もなし。悪くなったら薬を飲むのではなく、本当の意味で治ったとゆうこと。
4)メリットとデメリット
免疫療法のメリット:
唯一、根本から治せる可能性のある治療です。
免疫療法のデメリット:
しかし、体が敵だと思っているものを接種するので、体調不良時などにはアレルギー症状が出ます。当然注意をしながら行いますが、舌下・皮下ともにアナフィラキシーの可能性があります。
【実際はこんな感じ】
・簡単にお話しすると今のアレルギー体質を、アレルギーをおこしにくい体質にスイッチを入れ替える感じです。
・約80%の人に効果があります。ただし、個人差が大きいです。
薬が長年不要になる人から、2倍量使用していた人が通常量で済む程度まで様々とゆうことです。
・花粉症を予防できる可能性があります。
・気管支喘息にも、アレルギー性鼻炎にも効果があります。すごく。
・冬のアトピー性皮膚炎の悪化防止効果が結構あります。
5)皮下注射と舌下療法がある
「予防接種のような皮下注射」と「内服のような舌下」の2種類があります。
子どもにどっちが良いのか、決めさせるのはやめた方が良いです。舌下とゆうより「100%注射以外の方法」を選びますので、聞く意味がありません。
当然ですが、舌下は親が管理できるかどうかです。子どもに毎日飲めと言うだけでは飲まないのは明らかです。
私から子供に言ってくれと依頼するのも✖です。
他人が言って毎日継続するのであれば、みんな東大に入っているはずです。
・対象年齢:舌下は5歳以上、注射は厳密には年齢制限なし
ですが、2歳以上をお勧めします。
年齢とゆうよりはその子の性格で決まります。何歳でも注射が嫌な子は嫌です。実際には女の子4歳、男の子5歳といったイメージです。男の子は、女の子より痛みに弱いです。
・治療期間:どちらも3年以上、当院での推奨は5年
研究結果では、症状がゼロになっても3年以下で治療を中止すると、ほとんどが再発します。経験上、半年持ちません。
【 舌下】:舌の下に1分間おいておくだけ
全ては、自分で継続できるかどうかにかかっています。
量が決まっています。最初の1週間は少量の慣らし(黄色)で、次の1週間から本当の量(ピンク)で治療が始まります。
〇メリット:自宅で出来るので、治療開始に頻回に受診しなくてもよい
〇デメリット:毎日服用する必要がある。結局、2年分くらいは飲み忘れる。
自宅で飲み続けられることが前提です。
私の周囲では継続し続けることができる人は40%程度と言われており、私の患者さんでは30人程が舌下を選択していますが、有名国立大学に行っていた子、進学校として有名な高校に進学した子、本当にダニアレルギーで困っていた方の3人のみが3年以上できましたが、平均3ヶ月で大人は中止しています。
【皮下注射】:月1回だけど、導入時は1週間は毎日受診
うちでお勧めなのは、皮下注射です。
予防接種のような感じで注射を皮膚に行います。
目標とする注射量があり、最初だけは2週間かけて外来で1日2~3回注射を、薄い→濃い濃度で、目標濃度まで徐々に濃度をあげて、1日2~3回注射します。目標濃度到達からは、月1回の注射です。
舌下と違い、その子その子で注射量を調するため、反応が強い子は量を少なくして、期間を長くすることもあります。このため、ほとんどの子が、長期休みを利用します。
〇メリット:月1回、親は連れてくるだけなので、とても楽
〇デメリット:注射部位が腫れる。導入時は1週間毎日受診して1日に数回注射して免疫をつける。
・皮下も舌下も効果に変わりはない
どちらも効果は変わりませんが、内服は5年間毎日内服して、注射は月1回5年間やって同じ効果です。
皮下は皮下注射(これまでの予防接種みたいな感じ)、舌下は舌の下に置いておくだけです。
舌下は毎日、皮下は月1回の注射です。
・治療中は抗アレルギー剤の内服が必要
・もともと、抗アレルギー剤を内服されている方はそのまま継続です。
・治療開始3ヶ月後から、抗アレルギー剤の減量をはじめ、治療開始6ヶ月でダニ免疫療法以外の薬をゼロにします。
【治療について】
治療内容:アレルギー性鼻炎に関連した採血の分析をアレルギーの観点から行います。
費用:保険診療の範囲内。
考えられる副作用:頻度は少ないですが、治療に伴い蕁麻疹などのアレルギー症状が出る可能性はあります。
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