産婦人科医のための「妊婦のアナフィラキシー」対策

1)胎児低酸素と中枢神経障害を引き起こす

妊婦のアナフィラキシーは、母体のみならず胎児にも影響があります。

妊娠中にアナフィラキシーを起こした場合には、母体低酸素血症が胎児低酸素を引き起こし、胎児の低酸素脳症や不可逆的な脳神経障害を引き起こします1~7)

これは母体がアナフィラキシーで助かった場合にも同様に引き起り、出産後も成長障害のチェックを通じて、中枢神経障害の影響がないか確認していく必要があります。

そもそも、妊娠中の母体にアレルギー症状ある場合、子どもが自体がそのアレルギーになるリスクが上がることが言われています。代表が、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎です。

例えば、妊娠中の気管支喘息コントロール状態は、胎児死亡、低出生体重児や早流産、先天異常のリスクとなります。気管支喘息、未治療ならさらに母体死亡のリスクは増加し、胎児には早産をはじめとする合併症、胎児死亡や重篤な中枢神経障害を残します9,15,16)

なので、妊婦中はそもそものアレルギー症状をゼロに保つ必要があります。

うちが、妊婦のアレルギー治療に力を入れている理由はここにあります。

2)妊娠中のアナフィラキシーの原因は日本人では「食物」

アナフィラキシーで私のところに搬送・受診があった妊婦さんは、圧倒的に食物アレルギーです11)、22)

論文報告では薬物が多いですが、原因は多岐にわたり、抗生剤、麻酔、麻酔拮抗薬、ラミナリアなどです。これはGBSの治療で行われるためペニシリンの報告も多いです。

私のところに受診する妊婦さんは、抗生剤がほとんどです。

出産直前にペニシリンアレルギーが判明し、産婦人科の依頼を受けて出産の際には私が待機し、クリンダマイシン投与を行いながら出産したケースもあります。

不妊治療中にアスピリンでアナフィラキシーを起こす人も目立つ印象です。

一方で食物の場合の原因は様々。そば、フキノトウ、エビ、魚など多岐にわたり、50%の人は妊娠中に食物アレルギーを新規発症する印象です。

つまり、コロナワクチンでアナフィラキシーを起こす女性が持っているアレルギーの原因と同じです。

3)アナフィラキシーをおこす妊婦さんのほとんどが、アトピー性皮膚炎が未治療

これまで、私のところにアレルギー治療を目的に受診・救急搬送された妊婦さんの14/18(78.7%)が、妊娠中もアトピー性皮膚炎が未治療でした。

アナフィラキシーを起こし搬送された妊婦さんでもこの傾向は変わらず、3/4(75%)がアトピー性皮膚炎を未治療もしくは治療不十分で、全員が花粉症をふくめたアレルギー性鼻炎、薬物アレルギー、気管支喘息などアレルギー疾患を3つ以上持っていました。

この傾向はコロナワクチンでアレルギーを起こす場合でも変わりがないと考えています。

#妊婦のためのコロナワクチン接種はこちら

4)妊婦のアナフィラキシー対応はこれ

実際には、全てが同時進行です。様子を見ながらの追加投与はあまりお勧めできません。

アレルギー医、産婦人科医、助産師、看護師、麻酔科医に連絡します。

①気道、呼吸、循環の確保:とにかく酸素!

SPO2が下がってる上がってる関係ないです。とにかく酸素投与。アッとゆう間に母体、胎児ともに窒息しますから。

②第1選択:エピネフリン0.01 mg/kg筋注

テンプレで0.3㎎は少ないです。必要あれば再投与します。

③第2選択:ステロイド、抗ヒスタミン薬投与

実際には全てが同時進行です。リンデロン0.1㎎/㎏、ポララミン1A ivです。

④胎児モニターは絶対

胎児に影響が多大にあります。胎児機能不全になる可能性が高いです。

⑤帝王切開の準備

週数、胎児の状態によりますが、帝王切開の準備はしておきます。当番の麻酔科医に連絡しておきましょう。

5)だから、これが必要です

①エピネフリンが第一選択

0.01mg /kg。これは妊婦でも変わりません1~7)

②ABCは確保

酸素、ルート確保は必須です。

③様子を見ない

治療が遅れれば遅れるほど、胎児後遺症のリスクは上がります。

 

 

【参考文献】

1) Simons FER, Schatz M. Anaphylaxis during pregnancy. J. Allergy. Clin. Immunol. 2012; 130: 597–606.

2) Berardi A, Rossi K, Cavalleri F, et al. Maternal anaphylaxis and fetal brain damage after intrapartum chemoprophylaxis. J. Perinat. Med. 2004; 32: 375–7.

3) Chaudhuri K, Gonzales J, Jesrun CA, Ambat MT, Mandal-Chaudhuri S. Anaphylactic shock in pregnancy

: a casestudy and review of the literature. Inter. J. Obstet. Anest. 2009; 17: 350–7.

4) Berenguer A, Couto A, Brites V, Fernandes R. Anaphylaxis in pregnancy: a rare cause of neonatal mortality. BMJ Case Reports. 2013, doi:10. 1136/bcr-2012-007055. 

5) Simons FER. Anaphylaxis. J. Allergy. Clin. Immunol. 2010; 125: 161–81.

6) Simons FER, Ardusso LRF, Bilò MB, et al. World Allergy Organization anaphylaxis Guidelines: Summary. J. Allergy. Clin. Immunol. 2011; 127: 587–93.

7) Simons FER, Ardusso LRF, Bilò MB, et al. International consensus on (ICON) anaphylaxis. WAO. J. 2014; 7: 9. 

8)KwonHL et al : Immunol Allergy Clin North Am 26:29-62,2006.

9)土田朋子ほか:妊娠と気管支喘息. アレルギー 63:155-162, 2014.

10)Estelle et al : Anaphylaxis during pregnancy. JACI 130:597–606,2012.

11)Yasunobu Tsuzuki, et al : Management of maternal anaphylaxis in pregnancy. Acute Med Surg 10:202-204,2016.

12)日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部(著).喘息予防・管理ガイドライン

13)Lucie Blais, et al : Human Rproduction 28;908-915, 2013.

14)Carroll KN, et al :Pediatrics 133:1104-1112,2007.

15) ILLi S et al : Ann Allergy Asthma Immunol 112:132-9,2014.

16)村島温子: アレルギー疾患と妊娠.アレルギー 61:181-183, 2012

17)Naho Yakuwa, et al : Reproductive Toxicology 79:66-71,2018.

18)平松祐司: 妊娠と薬. アレルギー 63:6-13, 2014.

19)Karen Rance et al : Managing asthma during pregnacy. JAAP. 25: 513–521, 2013.

20)Eltonsy. Et al. JACI 135:123–130, 2015. 

21) Vanessa E. Murphy et al : Asthmainpregnancyahitfortwo. Eur Rspir Rev. 23:64–

  68, 2014. 

22) 続木康伸. フキノトウでアナフィラキシーを起こした妊婦の1例. 産科と婦人科. 87(7).2020.

1)胎児低酸素と中枢神経障害を引き起こす

妊婦のアナフィラキシーは、母体のみならず胎児にも影響があります。

妊娠中にアナフィラキシーを起こした場合には、母体低酸素血症が胎児低酸素を引き起こし、胎児の低酸素脳症や不可逆的な脳神経障害を引き起こします1~7)

これは母体がアナフィラキシーで助かった場合にも同様に引き起り、出産後も成長障害のチェックを通じて、中枢神経障害の影響がないか確認していく必要があります。

そもそも、妊娠中の母体にアレルギー症状ある場合、子どもが自体がそのアレルギーになるリスクが上がることが言われています。代表が、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎です。

例えば、妊娠中の気管支喘息コントロール状態は、胎児死亡、低出生体重児や早流産、先天異常のリスクとなります。気管支喘息、未治療ならさらに母体死亡のリスクは増加し、胎児には早産をはじめとする合併症、胎児死亡や重篤な中枢神経障害を残します9,15,16)

なので、妊婦中はそもそものアレルギー症状をゼロに保つ必要があります。

うちが、妊婦のアレルギー治療に力を入れている理由はここにあります。

2)妊娠中のアナフィラキシーの原因は日本人では「食物」

アナフィラキシーで私のところに搬送・受診があった妊婦さんは、圧倒的に食物アレルギーです11)、22)

論文報告では薬物が多いですが、原因は多岐にわたり、抗生剤、麻酔、麻酔拮抗薬、ラミナリアなどです。これはGBSの治療で行われるためペニシリンの報告も多いです。

私のところに受診する妊婦さんは、抗生剤がほとんどです。

出産直前にペニシリンアレルギーが判明し、産婦人科の依頼を受けて出産の際には私が待機し、クリンダマイシン投与を行いながら出産したケースもあります。

不妊治療中にアスピリンでアナフィラキシーを起こす人も目立つ印象です。

一方で食物の場合の原因は様々。そば、フキノトウ、エビ、魚など多岐にわたり、50%の人は妊娠中に食物アレルギーを新規発症する印象です。

つまり、コロナワクチンでアナフィラキシーを起こす女性が持っているアレルギーの原因と同じです。

3)アナフィラキシーをおこす妊婦さんのほとんどが、アトピー性皮膚炎が未治療

これまで、私のところにアレルギー治療を目的に受診・救急搬送された妊婦さんの14/18(78.7%)が、妊娠中もアトピー性皮膚炎が未治療でした。

アナフィラキシーを起こし搬送された妊婦さんでもこの傾向は変わらず、3/4(75%)がアトピー性皮膚炎を未治療もしくは治療不十分で、全員が花粉症をふくめたアレルギー性鼻炎、薬物アレルギー、気管支喘息などアレルギー疾患を3つ以上持っていました。

この傾向はコロナワクチンでアレルギーを起こす場合でも変わりがないと考えています。

#妊婦のためのコロナワクチン接種はこちら

4)妊婦のアナフィラキシー対応はこれ

実際には、全てが同時進行です。様子を見ながらの追加投与はあまりお勧めできません。

アレルギー医、産婦人科医、助産師、看護師、麻酔科医に連絡します。

①気道、呼吸、循環の確保:とにかく酸素!

SPO2が下がってる上がってる関係ないです。とにかく酸素投与。アッとゆう間に母体、胎児ともに窒息しますから。

②第1選択:エピネフリン0.01 mg/kg筋注

テンプレで0.3㎎は少ないです。必要あれば再投与します。

③第2選択:ステロイド、抗ヒスタミン薬投与

実際には全てが同時進行です。リンデロン0.1㎎/㎏、ポララミン1A ivです。

④胎児モニターは絶対

胎児に影響が多大にあります。胎児機能不全になる可能性が高いです。

⑤帝王切開の準備

週数、胎児の状態によりますが、帝王切開の準備はしておきます。当番の麻酔科医に連絡しておきましょう。

5)だから、これが必要です

①エピネフリンが第一選択

0.01mg /kg。これは妊婦でも変わりません1~7)

②ABCは確保

酸素、ルート確保は必須です。

③様子を見ない

治療が遅れれば遅れるほど、胎児後遺症のリスクは上がります。

 

 

【参考文献】

1) Simons FER, Schatz M. Anaphylaxis during pregnancy. J. Allergy. Clin. Immunol. 2012; 130: 597–606.

2) Berardi A, Rossi K, Cavalleri F, et al. Maternal anaphylaxis and fetal brain damage after intrapartum chemoprophylaxis. J. Perinat. Med. 2004; 32: 375–7.

3) Chaudhuri K, Gonzales J, Jesrun CA, Ambat MT, Mandal-Chaudhuri S. Anaphylactic shock in pregnancy

: a casestudy and review of the literature. Inter. J. Obstet. Anest. 2009; 17: 350–7.

4) Berenguer A, Couto A, Brites V, Fernandes R. Anaphylaxis in pregnancy: a rare cause of neonatal mortality. BMJ Case Reports. 2013, doi:10. 1136/bcr-2012-007055. 

5) Simons FER. Anaphylaxis. J. Allergy. Clin. Immunol. 2010; 125: 161–81.

6) Simons FER, Ardusso LRF, Bilò MB, et al. World Allergy Organization anaphylaxis Guidelines: Summary. J. Allergy. Clin. Immunol. 2011; 127: 587–93.

7) Simons FER, Ardusso LRF, Bilò MB, et al. International consensus on (ICON) anaphylaxis. WAO. J. 2014; 7: 9. 

8)KwonHL et al : Immunol Allergy Clin North Am 26:29-62,2006.

9)土田朋子ほか:妊娠と気管支喘息. アレルギー 63:155-162, 2014.

10)Estelle et al : Anaphylaxis during pregnancy. JACI 130:597–606,2012.

11)Yasunobu Tsuzuki, et al : Management of maternal anaphylaxis in pregnancy. Acute Med Surg 10:202-204,2016.

12)日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部(著).喘息予防・管理ガイドライン

13)Lucie Blais, et al : Human Rproduction 28;908-915, 2013.

14)Carroll KN, et al :Pediatrics 133:1104-1112,2007.

15) ILLi S et al : Ann Allergy Asthma Immunol 112:132-9,2014.

16)村島温子: アレルギー疾患と妊娠.アレルギー 61:181-183, 2012

17)Naho Yakuwa, et al : Reproductive Toxicology 79:66-71,2018.

18)平松祐司: 妊娠と薬. アレルギー 63:6-13, 2014.

19)Karen Rance et al : Managing asthma during pregnacy. JAAP. 25: 513–521, 2013.

20)Eltonsy. Et al. JACI 135:123–130, 2015. 

21) Vanessa E. Murphy et al : Asthmainpregnancyahitfortwo. Eur Rspir Rev. 23:64–

  68, 2014. 

22) 続木康伸. フキノトウでアナフィラキシーを起こした妊婦の1例. 産科と婦人科. 87(7).2020.

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