食物アレルギーは皮膚から起きる
【質問】皮膚から食物アレルギーになるんですか?
【回答】なります。説明しましょう。
1)皮膚から食物アレルギーが始まる
そもそもは、イギリスでは伝統的にピーナッツオイルが子どもの保湿として使われており、ピーナッツアレルギーの原因となるも、気がつかれていませんでした。その後の研究で、湿疹がある肌に食物成分を使うとそのアレルギーを起こすことがわかりました。
医学用語で、経皮感作と言います。
この経皮膚感作、アトピー性皮膚炎で湿疹が残っていれば起こることが解っています。
日本でも、手湿疹からの魚アレルギーになったり、化粧品に含まれていたアーモンドから食物アレルギーを起こしたことが報告されています。有名なところでは石鹸に入っていた小麦が原因で、小麦アレルギーを発症した方が大勢おり、大問題になった事例がありました。
この場合の小麦アレルギーは、小麦を食べた後、動いて初めてアレルギー症状が出るタイプで、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」と言います。
2)世の中では、皮膚だけと思われています
アトピー性皮膚炎はいわば、全身の問題が表現の形として皮膚に出てきているだけ。
つまり、アトピー性皮膚炎は皮膚だけの問題ではありません。
アトピー性皮膚炎以外のアレルギーを次々に呼び込んでくる状態が、アレルギー・マーチ。このアレルギー・マーチは食物アレルギーを発端にはじまり、次々にアレルギーを起こしてきます。
私の経験的には、小児期にアトピー性皮膚炎を治療していないままにしておくと、女性であれば22歳~27歳くらいからアレルギーマーチを起こしてくることが多い印象です。
成人の場合には、食物アレルギーから始まり、薬物アレルギーに発展することが多いです。
3)アトピー性皮膚炎の治療が必要です
肌荒れやボツボツがあると、皮膚を通してアレルギーを引き起こしてきます。
イメージで言えば、アレルギー体質にどんどん傾いていく。
成人で起きてしまったアレルギーは自然には治りませんので、そうならないようにアトピー性皮膚炎の治療が必要です。
#「アトピー性皮膚炎を治療している」とは、「症状がない」もしくは「ほとんどない」状態のこと
4)現に、食物・植物成分配合のケア用品が良いと思われています
オーガニックやナチュラルと表示されている製品は、食物か植物成分が多く使用されています。また、最近の化粧品には、機能成分だけではなくイメージ成分としても、食物や植物成分が多くの製品、クレンジグにも使用されています。
しかし、アトピー性皮膚炎の人は、このタイプのスキンケア製品は高い確率でそのアレルギーになるからダメなんです。しかし、現在は含まれていないものを探す方が大変です。
以前勤務していた病院の近くで花の出荷工場が出来た際、キクアレルギーになる人が続発しました。受診された方の全員がアトピー性皮膚炎を持っていましたが、ほぼ未治療でした。
また、手荒れがあっても、ほとんどの方が作業効率が落ちるからと、手袋なしで作業されていました。一方で、工場で働く前は以前にはキクの花粉症はなく、さらに工場でもゴーグル・マスクをするため、目や鼻の一般的な花粉症状は感じたことがなかったそうです。
しかし結局は、キク科の成分(とくにベニバナ)が含有された食物でアナフィラキシーを起こしたり、手荒れがひどくなって受診することになります。
花のアレルギーだから、花粉症のような症状だけが出る訳ではありません。
なので、アトピー性皮膚炎の方は、食物・植物配合の製品を皮膚に使うと、その成分のアレルギーになるリスクがあります。香料もかなりの確率で痒みがでるので、避けた方が無難です。顔が腫れることもあります。
化学成分不使用やパラベンフリーは、アトピー性皮膚炎の方にとってむしろ安全です。世の中のものすべては化学物質で、現在安全なものしか生き残っていません。
避けるべきものを知っておけば、他のものはあまり気にしなくて良いです。
5)だから、これが必要です
①食物アレルギーは皮膚から始まる
湿疹があると、食物アレルギーになりやすいです。
②食物・植物成分配合はアトピー性皮膚炎にはダメ、絶対
その成分のアレルギーになります。つまり、食物アレルギーになります。
③大人でも変わらない
子どものアトピー性皮膚炎を未治療にしておくのは、後々のリスクが大きいです。ただし、大人でもアレルギー・マーチは普通に起きてきます。
参考文献
・千貫裕子. 経皮感作から始まる成人食物アレルギーの予後. アレルギー 68(1)24-28、2019.
・Minami T, etal. Allergol Int. 67(2):217-224, 2018.
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