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食物アレルギーと発達障害児の偏食

食物アレルギーと発達障害児の偏食

1)偏食は治ると思われてる

子供の成長発達において、偏食はある一定時期には現れます。
5歳くらいまでは、言葉で表現するのが難しいので、「なにが嫌で食べない」のか、偏食の原因の特定が難しい。

これが、子育てをされている方の実感だと思います。

ただし、自閉症スペクトラム障害児においては、適切な介入がなければ偏食を治すのは困難になり、長引くことになるかもしれません。

例えば、自閉症の診断がついている子どもをみると、生後6ヶ月以降では固形物を食べ始めるのが遅く、ゆっくり食べる傾向にあり、生後15~54ヶ月では、親が食事させるのが難しいか偏食がひどいと感じていました。

また、生後24か月~54ヶ月児では、新しい食べ物を食べさせるのが難しかったとの報告もあります。

エモリー大学の発表では、定型発達児に比べて、自閉症児では5倍、食事中の偏食、癇癪、こだわりなどがあるとしています。

2)自閉症だから?

アーカンサス、シンシナティ、コロラド、 ピッツバーグ、ローチェスターで行われた252人の自閉症スペクトラム障害児の調査では、2~5歳では肥満傾向にあり、5~11歳では痩せ傾向にありました。

別の報告では、野菜、サラダ、果物摂取が少ないが、同様に甘いものや炭酸飲料の摂取も少なかったともあります。栄養面でカルシウムとタンパク質が不足し、生後38ヶ月の時点ではビタミンC,Dが不足する傾向にあるとされています。
つまり、自閉症児では栄養がかなり偏っています。

この食問題が長引けば、成長発達、社会生活困難と学業不振、肥満や糖尿病、心疾患などの内科的問題が出てきますし、極端なタンパク質不足は、精神発達にも影響を与えます。

このため、自閉症児の栄養状態の評価は、ルーチンで組み込まれるべきとしている施設もあります。

3)食物アレルギーと自閉症

偏食で悩む場合には、まず重要なのは内科的問題や食物アレルギーの否定です。

小児科医かアレルギー医に、食物アレルギーや医学的問題がないか確かめる必要があります。

自閉症児でも食物アレルギー児でも、匂いや特定の食べ物で胃腸の調子が悪くなることから、ある食べ物のグループを嫌がる避けることがありますし、以前にひどい味がした、下痢や嘔吐してしまったなどの経験がある場合には、その後から嫌がることはどの子どもにおいても普通です。

食生活が困難とされた自閉症児のうち、約8%が生後54ヶ月までに偏食ではなく、実は食物アレルギーだったとしている報告もあります。

食物アレルギーの場合には無理に食べさせると重篤なアレルギー症状を起こすことがあるので、医学的問題の否定なしに無理に食べさせることは行ってはいけません。

偏食が極度に進んで入院で治療する場合もありますが、羽交い絞めなどの身体拘束で無理に食べさせることは論外であり、子供にとって非常に危険です。

また、ごはんを食べたらアイスクリームを食べてよいなどの称賛を与えて食事をさせるのも長期的にみて成功しません。
もし、医学的問題がなければ、決して家族内だけで解決しようとしてはいけないとされています。

子供がいる家庭で偏食を問題にするのは普通でありますが、決して子供に強制して食べさせたり、口論の原因になったりしてはいけません。状況が悪化するばかりで、好転することは決してありません。

4)理由があります

そもそも、自閉症スペクトラム障害児は新しいことを嫌がる傾向にあります。

内科的な問題がない場合、この「新しいことを嫌がる」ことに対する対策を考えるのが原則です。

つまり、考えずに安易に「偏食」と決めないことが大切です。

自閉症児を持つ親の約70%は、偏食に悩んだ経験があります。

悩んでいるのは自分だけではないといった意識を持つことも大切です。

偏食の原因が医学的問題でないとわかった場合には、決して家族内だけで解決しようとしてはいけません。偏食は子どもがいる家庭は普通であり、決して子供に強制して食べさせたり、偏食が口論の原因になることは状況を悪化させるばかりです。

偏食については過剰に反応することなく一歩引いた目線で、出来るだけ子供が嫌がる理由を考えて仮説を立ててみましょう。

そもそも、自閉児は新しいことを嫌がる傾向にあるので、この不安に対する対策を考えます。介入に子供の年齢は関係ありませんので、不安、こだわり、感覚過敏の問題に着眼して食物の選択を広げていこうとする研究もあります。
では、考え方の手順はとゆうと

①:出来うる限り多くの偏食の原因を考えます
②:次に、どのように介入して食事を広げていくのか考えます
③:①、②に挑戦することが大切です。

偏食には行動学的手法が有効だとされていますので、具体的な考え方をお示しします。

5)偏食対策7つの方法

1:内科的問題の除外

胸焼けや胃食道逆流症を含む胃腸障害やアレルギーの問題を除外する。子供にとって表現するのは難しいことであり、まずは内科的問題の除外から始めましょう。

2:落ち着くこと

子供は通常大人しく食べるようになるのに、同じものを何度も食べる必要があります。
食卓が議論の場にならないようにしましょう。

3:食べることに段階を踏む

自閉症児は新しいことを怖がる傾向にあります。

触ったり、においをかいだりする体験を手助けをすることである。食べる準備が出来た時にはキスする、なめる程度から始める。食べ物を混ぜて、味を混在させることが役に立ちます。

4:材料の調和

自閉症児は匂いや味よりも材料の食感、例えばぐしゃぐしゃのトマトなどに関してしばしば過敏性があります。刻んだり、混ぜたり、ソースにしたりして工夫しましょう。

5:新しい食べ物で遊ぼう

パスタソースでお絵かきしたり、野菜の顔でピザを作ったりする。楽しむことが大事。

6:選択とコントロールを提案する

多種類の食事をテーブルに並べ、多くの食材の中から自分で選択するのも手です。

好みのものばかり毎日選ばせないようにすることも大事です。

7:ご褒美には十分注意する

称賛やご褒美があると、食事を楽しむことや十分な栄養がなぜ大事かを学びません。

称賛やご褒美がゴールになる。

デザートやお菓子は、食事やおやつの一環として与え、人参などを食べるために使ってはいけません。ご褒美を与えるのは長期的にみて成功しない。

親が強く食べさせようとすればするほど、子供側からは「食べさせられている」強制的な体験を繰り返すことになります。その結果、子供は自己防衛反応によりますます食べなくなったり、遊び食べなど「負のスパイラル」につながります。
決して子供に強制して食べさせたり、偏食が口論の原因になったりしてはいけない理由がここにあります。多くの文献でも、親が楽しそうに食事をすることの重要性があげられています。

人は物を食べた時に、味覚、臭覚、食感などの複合体が脳で分析され、その人にとって「快」、「不快」、「その中間」に分類されます。どれに分類されるかは人それぞれであり、過去の経験や食習慣、人種差などが影響されます。

食べ物を「不快」と感じる要因は1つではなく、食感、におい、味、温度などを考える必要があり、自閉症児は匂いやよりも、材料の食感に関して過敏性があると言われています。

この改善のための偏食対策例としては、好きなものと新しいものを混ぜることもあります。最初に好きなものがくるようにすれば、好き嫌いの軽減に役立ちます。

子供に多くの選択肢を与え、自分で選ばせることも重要です。

栄養面の配慮は必要ですが、野菜を食べないとしたら3つの野菜のうち1つは自分で選んで食べてもらう、食事の時に多くの種類のものを並べて、その中から選ばせる(これで好きなものと嫌いなものを判別していくことに約立ちます)などがあります。食感に対する感覚過敏の問題がある場合は、つぶして混ぜるなど色々と調理法を試していく必要があります。

大切なのは自分で解決する手助けをすること、食事を楽しくすることです。

養育者は、食事の時間を柔軟性、教育、選択の練習と捉え、食事をアクティビティにしてしまうことで、子供達が新しい味や食べ物に挑戦していくことが楽しくなるようにしましょう。

ボウルにスイカを入れてみたり、野菜やぺパロニを使って顔を描いたピザをつくったり、パスタソースでお絵かきをしてみたり、材料をまぜることでどんな色に変化するのかを確かめるなど様々なものがあります。

偏食は食べないだけと決めつけて無理に食べさせることなく、原因をしっかり分析してから行いましょう。

【参考文献】

・“Encouraging Picky Eaters with Autism to Try New Foods”
Emily Kuschner, PhD Children’s Hospital of Philadelphia
Autismspeaks “GOT QUESTION” November 9, 2012
・“Seven Ways to Help a Picky Eater with Autism” Autismspeaks May 7, 2013
・“Nutrition and Autism”  Autismspeaks February 07, 2013
・“Feeding Symptoms, Dietary Patterns, and Growth in Young Children With Autism Spectrum Disorders”
Alan Emond, Pauline Emmett, Colin Steer and Jean Golding
Pediatrics 2010;126;e337
・“Dietary Management of Autism Spectrum Disorder”
Elaine Isherwood BSc SRD, Katie Thomas Dip D SRD, Beverley Spicer BSc SRD
the British Dietetic Association Specialist Paediatric and Mental Health Groups
・“Iron Status in Children With Autism Spectrum Disorder”
Ann Reynolds, Nancy F. Krebs, Patricia A. Stewart, etc
Pediatrics 2012;130;S154

記事監修医師
続木 康信
                     

続木 康伸

岩手医大卒、蓮桜会理事長。医師・歯科医師のダブルライセンス。新生児から妊婦まで、人生を自由にするアルバアレルギークリニック院長 。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ」、東京MX「医史」出演。学研「保湿を変えればアトピーは治せる」著者。

【所属】
・日本花粉学会(評議員)・ヨーロッパアレルギー・臨床免疫学会・アメリカアレルギー・喘息・免疫学会・日本小児アレルギー学会
・抗原研究会・日本美容皮膚科学会・日本痤瘡研究会・日本脱毛学会・再生医療クロスボーダー協会・日本臨床カンナビノイド学会

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