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医師のためのコロナワクチンアレルギー

医師のためのコロナワクチンアレルギー

コロナワクチンでは、良くアナフィラキシ―が取りざたされます。

しかし、私が「対策の方向、間違えてるなー」と思っている点があります。

それは「アナフィラキシーを起こすことが前提」とゆうことです。

アナフィラキシーは、そもそも頻度はかなり少ない、でも対応が遅い・間違うと死亡する。

つまり、間違わなければ死ぬ可能性はとても低いです。

年間70人ほどが薬物アレルギーで死亡していますが、ほとんどが高齢者です。

予防接種で死亡する人はこれまではいませんでした。

医者がその場にいるのに、アナフィラキシーで死亡者を出すのはとても、とても、とても恥ずべきことです。

なので、「起きることが前提」から「起こさないようにすることを前提」にしましょう。

1)アナフィラキシーを起こしにくい状態へ

②起こした時に、ガイドラインに沿った対応をする

これまで予防接種アレルギーを含め、200人程度の薬物アレルギーの人を対応してきましたが、普段から既往のアレルギーを症状があるのに治療していないと、アレルギー症状を起こす閾値が極度に下がる印象です。

つまり、「事前にアレルギーをチェックして、アレルギー症状があるなら、治療しておく」これが正解。

2)コロナ予防接種で、アレルギーを起こしやすい人はこの人

コロナの予防接種で、アレルギー症状を起こす人の約60%は軽症です①,②)。

コロナ予防接種で、アナフィラキシーを起こす人は約0.00001%と非常に稀で、全員が回復しています①,②)。

アナフィラキシーは、アレルギー症状のひどいヤツと思って頂いて結構です。

アナフィラキシー

【アレルギー症状】

蕁麻疹、紅斑、口や喉の痒み、喉の閉塞感、軽度の呼吸症状があります。アレルギー症状を起こす約90%が女性です①)。

【症状出現の日数】

アレルギー症状は、平均7.5分-13分で始まり、ほとんどの人が接種15分以内に症状が起きます①,②)。

30分以上経過してからアレルギー症状を起こす人は少数ですが、最も長い人ではモデルナ社で53分、バイオンテック・ファイザー社で150分でした。モデルナ社よりもバイオンテック・ファイザー社製の方が、症状が出るのが遅めです。

3)このアレルギーを持っている人に注意

①薬と食物にアレルギー、以前にアナフィラキシ―を起した人

モデルナ社の予防接種でアナフィラキシーを起こした人は、以前に他の予防接種でアナフィラキシーを起こした人はいませんでした。

バイオンテック・ファイザー社の予防接種でアナフィラキシーを起こした人は、1人ですが以前に狂犬病・インフルエンザワクチンでアナフィラキシーを起こしていました。

アレルギー症状を起こした人は、モデルナ社では約60%が「薬か食物」に、バイオンテック・ファイザー社では約81%が「薬か食物、昆虫」にアレルギーを持っていました①,②)。

また、アナフィラキシーを起こした人は、モデルナ社では「薬、造影剤、食物」に、バイオンテック・ファイザー社では「薬、食物、昆虫」にアレルギーを持っていました⑪,⑫)。

また、約30-50%の人が「以前にもアナフィラキシ―」を起こしていました①,②)。

しかし、人口の30%以上がなんらかのアレルギーを持っていると言われており、これらのアレルギーがある場合、注意が必要なものの接種不可にはなっていません。

なので、

薬と食物にアレルギー、以前にアナフィラキシ―を起した人

に、注意するのが良いのです。

4)コロナ予防接種が打てない人

ポリエチレングリコール(PEG)とポリソルベートにアレルギーのある人

とても、とても、とても、とても珍しいです。

私は出会ったことがありません。

コロナ予防接種(mRNA)で起きるアレルギー反応は、mRNAワクチンの半減期を伸ばすための成分PEG(ポリエチレングリコール)、または交差性を持つポリソルベートで起きている可能性があります③)。アレルギーの原因は人によって様々なので断定はできませんが、アナフィラキシーを起こせば同製剤は使えないのは同じなので、原因はなんであれ、起こした時もその後も対応は変わりません。

なので、PEGとポリソルベートに対して、重度もしくは即時型のアレルギー反応がある場合は接種不可になっています③)。

PEGを添加しない場合、mRNAは体内で数分で分解されてしまうため、ワクチンとして成り立ちません。なので、PEG(ポリエチレングリコール)を添加して、分解される時間を出来るだけ延ばし(結局は分解されますが)、さらに接種直前まで冷凍して保存しています。

mRNAワクチンでは、PEGの中でもPEG2000が使用されています④)。

これは、mRNAワクチンのみで使われており、他のワクチンでは当然使用されていません。

一方で、PEG3350~4000が大腸内視鏡前のプレパレーション薬剤、マグコロールなどに含まれており、医療者には化粧品より身近です。

この大腸プレパレーションで、アナフィラキシーを起こした症例の報告もありますが、非常に珍しく、個人的に数百人の薬物アレルギーの人をみてきましたが、一度も見たことがありません。薬物アレルギーのために、目の前で心肺停止になった人もいましたし、「CPAになった」と応援に呼ばれたり、薬物アレルギーが原因で全身の表皮剥離が起き、スティーブンスジョンソンになった人も1人や2人ではありません。子どもがスティーブンスジョンソンになった親から直接電話が来たこともありました。

でも、PEGでアレルギーを起こした人は見たことがありません。

ちなみに、メチルプレドニゾロン酢酸エステル(デポメドロール®)はPEG3350を含んでいますが、こちらも見たことがありません。

メチルプレドニゾロン酢酸エステル(デポメドロール®)アレルギーの場合にも、PEGが原因であろうと思われています。

薬物アレルギーがある人でも接種不可にはなりませんが、必ず医師との相談のうえで接種することになっています。

また、卵やゼラチンなどの成分はmRNAワクチンには含まれていないため、他のアレルギーを持っていた場合でも接種はできます③)。

mRNAワクチンが打てない場合でも、mRNAではないアストラゼネカ社やジョンソン・エンド・ジョンソン社の製品を使うことになっていますが、妊婦も安全性のデータがないために、接種の推奨はしないとされています⑤)。しかし、アメリカでは医療従事者の妊婦さんの1万人以上がすでに接種をしています。

5)エピペンでは足りません

自治体からエピペンが配られているようですが、「エピペン 0.3㎎」は病院に救急搬送されるまでに、症状を緩和させるものです。成人の体重では投与量が足りません。

つまり、体重50㎏の人であれば、0.5㎎投与、0.3㎎では必要量の60%です。

ここでのポイントが、投与をためらわないこと。

アナフィラキシーを含めて、アレルギーは症状を長く放置すればするほど治りにくくなります。

そもそも、接種会場が診療所に登録されている、地方自治体で近くに公立病院があって救急カートや酸素が用意されているような場合、医者がその場にいるのに、エピペンを使うのはではなく、エピネフリンを用意して投与しましょう。

6)だから、これ

①ワクチンが怖い?

コロナ予防接種の副反応を起こす人は0.2~0.3%、1-2日で治る。アレルギー症状を起こす人も0.00001%です。

②アレルギーを起こしやすいのはこの人

・薬、食物、造影剤、昆虫にアレルギーがある

・以前にアナフィラキシーを起こしたことがある

・女性(平均年齢43歳)

③アナフィラキシ―、絶対にエピネフリン投与

薬物アレルギーでの死亡原因は、エピネフリンの投与遅れです。

#コロナワクチン対応 医療者用まとめはこちら

【参考文献】

①CDC COVID-19 Response Team. Allergic Reactions Including Anaphylaxis After Receipt of the First Dose of Moderna COVID-19 Vaccine — United States, December 21, 2020–January 10, 2021.

②CDC COVID-19 Response Team. Allergic Reactions Including Anaphylaxis After Receipt of the First Dose of Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine — United States, December 14–23, 2020.

③Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States.

④Mariana C. Castells, etal. Maintaining Safety with SARS-CoV-2 Vaccines. NEJM. 2021; 384:643-649.

日本経済新聞. 新型コロナワクチン、妊婦の接種推奨せず WHO

記事監修医師
続木 康信
                     

続木 康伸

岩手医大卒、蓮桜会理事長。医師・歯科医師のダブルライセンス。新生児から妊婦まで、人生を自由にするアルバアレルギークリニック院長 。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ」、東京MX「医史」出演。学研「保湿を変えればアトピーは治せる」著者。

【所属】
・日本花粉学会(評議員)・ヨーロッパアレルギー・臨床免疫学会・アメリカアレルギー・喘息・免疫学会・日本小児アレルギー学会
・抗原研究会・日本美容皮膚科学会・日本痤瘡研究会・日本脱毛学会・再生医療クロスボーダー協会・日本臨床カンナビノイド学会

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