アナフィラキシーとは
「いつもと同じパンを食べ、いつもと同じようにマラソンをしただけなのに、全身真っ赤になり動けなくなって、救急車で運ばれた。
受診した病院で、うちでは検査出来ないと大学病院を紹介されたが、そちらでも、うちで対応する病気ではないと言われ、症状が出たら救急車を呼ぶようにと言われただけ。
日常生活で何を食べて良いかわからず、救急車で運ばれたことを思い出し、常に不安に思っていたら、同じ状況だったを友人を解決してくれたかかりつけのアレルギー医を紹介された。」
1.アナフィラキシーとは
アナフィラキシーは、短時間で命にかかわる症状をおこすひどいアレルギー反応のことです。
「ひどい」
まずは、「以下の2つの場合」に、アナフィラキシ―と診断できます。
①皮膚、軟膜、またはその両方の症状が急速に悪くなる(数分~数時間)
さらに、少なくとも以下の1つを伴う
・呼吸器の症状
息切れ、苦しい、喘鳴、呼吸困難感、など
・消化器の症状
強い腹痛、下痢、嘔吐、など
・循環器の症状
血圧低下、脱力、不整脈、動悸、失神など
②アレルギーだと知ってるもの、もしくはアレルギーが強く疑われるものを摂取後
血圧低下、喘鳴、嚥下痛などが、急速に発症。
2.原因は人によって全く違う
「そんなの聞いたことがない」、「それはアレルギーではない」と言われたり、診断がつかずアナフィラキシーを繰り返して救急搬送されてから受診される方、どこか病院に行ってと言われどこに行ったらよいのかわからず受診される方が多くいるのが現状です。
最近の傾向として、病院に受診しても、アレルギー症状があると「アナフィラキシー」と説明される方が、ものすごく増えています。
成人では小麦、小児では卵、牛乳、小麦です。
子どものアナフィラキシー
他の食べ物でも当然アナフィラキシ―の原因になります。
食べ物やその人、その時の体調や食べた量によっても、症状の出方が違うこともあります。
さらに、アナフィラキシーの原因は、食べ物の他にも動物・薬・ハチ・食物など人によって様々であり、食物だけがアナフィラキシーの原因ではありません。
痛み止めでも起こしてきますし、抗生剤でも起こしてきます。
つまり、世の中にあるすべてのものが原因になります。
例えば、シラカバアレルギーの人はキシリトール入りの歯磨き粉でアナフィラキシ―をおこしますし、クラゲに刺された漁師さんは納豆アレルギーで倒れたりします。
ネコアレルギーで意識を失うこともあります。
3.アナフィラキシーは命にかかわる
日本でも数年に1回、アナフィラキシーで子どもたちの命が失われています。
ニュースになるのは子どもだけですが、実は年間60~70人の成人がアナフィラキシーで死亡し、そのほとんどは高齢者です。
アナフィラキシ―は、症状が出る時間や程度も様々です。
数分~数時間後に症状を起こすこともあり、特に納豆アレルギーに関しては8時間~12時間後にアナフィラキシーを起こすことが多いです。
例えば、「いつもは口が痒いだけだから」、「あの子はこの量でこのくらいの症状だから、うちの子も大丈夫」は通用しません。
アレルギーの症状は、最初は軽い症状で、徐々に重くなっていくことが多いです。
ただし、小麦の運動誘発アナフィラキシー(小麦を食べて動いた時だけに症状がでる)、鶏肉、薬のアレルギーは、ある日突然アナフィラキシ―として症状がでる印象を持っています。
高齢者の場合、生活習慣病が大きくかかわってきます。
アナフィラキシ―に多く対応している医師は、必ず経験していることですが、意識を失って公園で倒れていたり、家族の目の前で痙攣することも多くあります。また、高齢者や糖尿病などの生活習慣病を持った方では、心筋梗塞や命に係わる不整脈を引き起こします。
4.妊娠中のアナフィラキシーは胎児に影響がでる
特にこれが、妊娠中だったら?
アナフィラキシ―の時にケイレンしたり、意識を失って倒れたり、心臓が止まることもあります。
特に、妊娠中のアナフィラキシーは、お腹の赤ちゃんに大きな影響を与えます。
残念ながら、日本でも薬によるアナフィラキシーで、母は助かりましたが、お腹の赤ちゃんが死亡した事例があります。
これを防ぐためには、妊娠中はもちろんのこと、ご妊娠前に自分の状態を理解しておくことがお母さんと赤ちゃんにとって大切です。
アナフィラキシーは起こさないこと、そのためにきちんと把握しておくことが大切です。
妊娠前にぜひ治療できるアレルギーは治療をおすすめします。
5.だから、これが必要なんです
①エピネフリン
アナフィラキシーの第一選択です
②原因を特定すること
アナフィラキシーだった場合、原因は特定させましょう。
このためには、診断が出来ない病院で粘っても意味がありません。病院を紹介してもらうか、自分で探すしかないのです。
③一番大事なことは「今後の対応」
アレルギーの採血はすることが目的ではなく、結果を分析することで、「今後はどうしたら良いのか」を判断することが、最も大切な部分になります。
アレルギーでは特に大切ですが、アナフィラキシ―においては命の危険があるために、必ず今後の対応をはっきりさせておく必要があります。
これが無ければ、アレルギーの診療ではないのです。
参考文献
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アトピー性皮膚炎は毎日薬を塗り段階的に減らしていくのが主流で、きちんと治療していれば、症状が無いもしくはほとんど無い日常を目指しています。
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