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魚じゃないかも?アニサキスアレルギー?

魚じゃないかも?アニサキスアレルギー?

いつもと同じイカを食べ、いつもと同じようにお酒を飲んだだけなのに、全身真っ赤になり、呼吸も苦しくなり動けなくなって、救急車で運ばれた。

近くのクリニック受診したが、魚を全般的に採血しても反応がない。採血では大丈夫なはずなのに、その後も食べるとお腹が痛くなったり、逆に、反応が出ているので食物アレルギーだと言われたものを食べてもなんともない。

うちでは対応出来ないと大学病院を紹介されたが、大学でもうちで対応する病気ではないと言われ、症状が出たら救急車を呼ぶようにと言われただけ。何を食べてよいのか、日常生活をどうして良いかわからず、常に不安。

実は、食物アレルギーの採血は、年齢、食べ物、症状、合併するアレルギーによって、見るべきポイントと対応が全く違ってくるので、幅広い経験と知識が必要なのです。

1)魚で体調が悪くなった時には、考えることがある

魚を食べて蕁麻疹や腹痛などの症状が出た時に考えることは、4つあります。

①食中毒

②魚アレルギー

③ヒスタミン中毒

④アニサキスアレルギー

です。

2)世の中では、なんでもアレルギーに?

①の食中毒は、一緒に食事をした人全員が体調不良になります。特に腹痛や下痢、嘔吐になりますので、間違えることはないでしょう。

②、③、④は複数で食事をしていても、1人だけ症状がある場合がほとんどです。

②の魚アレルギーの場合には、成人で突然発症することはありません。また、採血結果の分析も成人は難しく、採血表に乗っている検査基準では判断できません。

③は、問診と皮膚テスト、そして「ヒスタミン中毒以外の病気ではない」と除外して判断することが必要になります。

④のアニサキスアレルギーは、魚の寄生虫であるアニサキスにより起こります。

3)私はこう思います。

アニサキスアレルギーは、アレルギーとして成立するまでに長く時間がかかると思われ、成人に限定して起きるといっても過言ではありません。

アニサキスを摂取する可能性が高い魚好きな方が起こしやすいです。

さらに、予兆なく突然のアナフィラキシーで発症することが、ものすごく多いのも特徴です。多くの場合、皮膚症状(蕁麻疹、顔面腫脹)と消化器症状(腹痛)を伴います。

また、教科書には、発症時間はアニサキスの摂取からそれほど早くないと記載されていることもありますが、実際は刺身を食べながら飲酒していることが多いため、発症時間は早いです。食べている最中から症状が蕁麻疹が出ることも多くあります。

アニサキスアレルギーであれば、採血で「反応が出ている」程度の数値ではすまず、ものすごく高い値がでます。少し上がっているくらいではアニサキスアレルギーと、言い切ることはできません。

また健康保険上しかたがないですが、我々アレルギー医はコンポーネントと呼ばれる採血を行って診断する場合も少なくありません。このコンポーネントは、現在日本ではアレルギー医が保険外もしくは研究目的でしか行うことができません。

4)現に、こういうことが起きています

生きたアニサキスが、胃に喰いついて激烈な腹痛を起こす「アニサキス症(胃カメラで直接駆除が必要)」と違い、アニサキスは生きていても死んでいても関係ありません。また、アニサキスのアレルギー成分は耐熱性、耐冷凍性です。

つまり、調理・冷凍すれば「胃に喰いつくアニサキス症」は防げますが、「アニサキスアレルギー」は防ぐことは出来ません。

また、数多くの方に対応した経験が必要なので、前述のように診断が難しいアレルギーの一つです。

アニサキスは、「イカ」が有名ですが、すべての魚に存在します。イクラの間にも見られることがあります。

また、泳ぐスピードの速く止まらない魚(マグロなど)には少ないとされていますが、絶対ではありません。

アニサキスは、魚の皮と身の間にいることが多く目で見えます。しかし、アニサキスアレルギーの場合には、

陸揚げされてから時間が経過すると、身にも入り込むことが確認されていますので、皮を剥いでも大丈夫ではありません。

5)だから、こういう指導をしています

①アニサキスも魚もアレルギーでは対応は一緒

全ての魚にいるのがアニサキス。つまり、アニサキスアレルギーの場合、魚を食べることができません。かまぼことかもです。貝類、甲殻類(エビ、イカ)、出汁も絶対ではありませんが、経験上は大丈夫です(食べるなら自己責任となります)。

つまり、心配なら魚介類は「全除去」が正しい対応方法となります。

②自然には治らない

アニサキスアレルギーは自然には治ることはありません。加熱しても、冷凍してもダメです。

③治療できないことはないが・・・

アニサキスアレルギーは、「経口免疫療法」で、治療出来ないことはありませんが、成人の場合には免疫細胞が敵だと記憶する力が強く、治らない場合もあります。

1) まずは、半年魚介類を完全に除去(一切食べない)

これで、体をいったんリセットします。

2) 採血でアニサキスIgEが下がっていれば、治療可能な可能性あり

下がっていなければ、経験上無理です。

3) 経口免疫療法開始

経口免疫療法は、ただ食べることを指すワケではありません。

「食べて慣らす治療」です。

経口免疫療法自体が、簡単なものではなく、1~2年はかかります。

経験上はアニサキスアレルギーの以外のアレルギーでは、3ヶ月以上続けることができた成人はいません。

特に成人の場合には、経口免疫療法の成功率が小児に比べて低い割に、ちょっとした体調の変化で治療中にアレルギー症状を起こします。

アレルギーは症状を出せば出すほど、体が敵だと認識しますので、ますます治りづらくなります。

さらにアニサキスアレルギーの場合、アレルギー症状がでれば、救急車で搬送されることの方が一般的なほど強く症状がでますので、経験のある医師でなければ危ないです。また、症状が出た場合、受診できる救急病院を準備しておく必要があります。

あくまでも経験上ですが、アニサキスアレルギーで経口免疫療法が上手く行く方は、治療中に一切症状を起こすことができません。逆に治りづらいからは、症状を起こすことが多くあります。

 
記事監修医師
続木 康信
                     

続木 康伸

岩手医大卒、蓮桜会理事長。医師・歯科医師のダブルライセンス。新生児から妊婦まで、人生を自由にするアルバアレルギークリニック院長 。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ」、東京MX「医史」出演。学研「保湿を変えればアトピーは治せる」著者。

【所属】
・日本花粉学会(評議員)・ヨーロッパアレルギー・臨床免疫学会・アメリカアレルギー・喘息・免疫学会・日本小児アレルギー学会
・抗原研究会・日本美容皮膚科学会・日本痤瘡研究会・日本脱毛学会・再生医療クロスボーダー協会・日本臨床カンナビノイド学会

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