北海道の花粉症とその対策
春になると、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ……つらい花粉症の季節がやってきますね。
実は、花粉症の原因となる花粉は、地域によって違うのはご存じでしょうか。特に北海道と本州では、悩まされる花粉の種類が異なります。
そこで今回は、北海道で花粉症に悩む方に向けて、北海道で多い花粉症やなぜ検査が必要なのかをお伝えします。
■北海道の花粉症:シラカバ花粉に注意
北海道にお住まいの方や、春に北海道を訪れる方が注意したいのが「シラカバ花粉」です。シラカバの花粉症は、北海道で最も多いと言われています。北海道エリアでは、本州で多いスギやヒノキの花粉症の心配はほとんどありません。
シラカバ花粉は春から初秋にかけて飛散します。ピークは4月下旬から6月上旬。3月の気温が高いと早まる傾向があります。
また、北海道にはシラカバ以外にも原因となりうる花粉が、いくつか存在します。たとえば、春にはハンノキやブナ、夏にはイネ科(オオアワガエリやナガハグサなど)、秋口にはヨモギなどが飛散します。

■花粉症の症状
花粉症の症状には、さまざまで、部位でいうと、鼻、目、皮膚、呼吸器などがあります。
部位別に、一般的な症状を確認しましょう。
鼻の症状:
鼻水、鼻づまり、くしゃみ、鼻のかゆみなど。
長時間屋外にいると、症状が悪化することがあります。
目の症状:
目のかゆみ、赤み、涙目、充血など。
花粉がダイレクトに目に入ると、痒みを感じやすくなります。
皮膚の症状:
皮膚のかゆみや湿疹、アトピー性皮膚炎の悪化、顔面腫脹(顔が腫れること)など。
花粉が皮膚に直接触れたことで引き起こされる場合があります。
呼吸器症状::
息切れ、咳、胸の苦しさなど。
喘息のある方は、花粉の飛散期間中に喘息の症状が悪化することがあります。
■北海道の花粉別よくある症状
実は、花粉の種類によっても出やすい症状が異なります。それぞれの症状を抑えておくと、予防や対策を立てやすくなるので確認しておきましょう。
シラカバ:
息苦しさや肌荒れなど、全身の症状が見られることも多いです。果物・野菜アレルギーを起こす力も強いため、より適切な治療が求められます。
オオアワガエリ、カモガヤなどのイネ科:
悲惨距離が短いため、毎年の花粉症の症状はないにもかかわらず、果物野菜アレルギーを引き起こすことがあります。
ヨモギ:
飛散距離が短いために花粉症の症状はあまり強くありません。しかし、アレルギーが強くなると、ヨモギ餅やヨモギ茶でも強い腹痛を起こします。
ブナ・コナラ:
目、鼻のかゆみが強いです。近年、急激にブナやコナラの花粉症患者が増えています。
ヤナギ(ポプラ):
皮膚、特に顔を荒らす力が強い傾向にあります。綿毛が飛び始めると、お顔のアトピー性皮膚炎が悪化することが多いです。
■なぜ検査が必要なの?
なんとなく市販の鼻炎薬を飲んで症状を抑えているだけの方も多いと思いますが、北海道で最も多いとされるシラカバ花粉症は、果物・野菜アレルギーを併発する可能性があるため、要注意。
というのも、シラカバ花粉に含まれるたんぱく質と、リンゴやモモなど特定の果物・野菜に含まれるたんぱく質の構造が似ているため、花粉症を放置していると、特定の食物を口にしたときに、免疫システムが、同じ敵だと勘違いして反応してしまうことがあるからです。
特定の果物・野菜を食べた後に「唇がかゆい」「喉がイガイガする」「口の中がチクチクする」などの軽い症状がすでに出ている方は、すみやかに検査で原因となる花粉を特定し、正しい治療をすることが大切です。また、今は、軽い鼻水や目のかゆみだけで、軽い花粉症にすぎない、市販薬で十分だと考えていると、アナフィラキシーを起こしてしまうこともあるため危険です。
果物・野菜アレルギー
まずは、自分が何のアレルギーなのか、しっかりと検査をして把握しておくことが大切だと言えます。
■どんな検査をするの?
主に「血液検査」でアレルギーの原因を調べます。
一般的な血液検査では、100種類ほどの種類の中から13項目に絞って花粉症の原因を特定します。より効果的な検査方法には、一度の採血で30種類以上の項目を調べられるものもあります。
ですが、アルバアレルギークリニックでは、あえて別の方法を選択しています。200種類以上あるアレルギーの原因の中から、患者さまに適切な項目を医師がオーダーメイドで選ぶ方法を採用することで、検査の精度をより高めることができるからです。
精度を高めることで、アレルギーを引き起こしている真の原因をより的確に見つけ出し、お一人おひとりの患者さまに最適な治療法をご提案することが可能になります。
■採血結果の見方
花粉症の採血結果を見て「数値に応じたおおよその症状が知りたい」とお申し出いただくことがあります。以下に症状が出る目安の数値を記載していますので、参考にしてみてください。
ちなみに、検査結果でそれぞれ項目の数値が同じくらいでも同程度の症状が出るとは限りません。例えば、シラカバの「2.5」は確実に花粉症の症状が出ますが、ヨモギの「2.5」は症状が出ることはあまりありません。そのため、シラカバの「2.5」とヨモギの「2.5」では大きく解釈が変わるのです。
シラカバ:
採血の値が0.5くらいから症状が出ます。
アトピー性皮膚炎、気管支喘息を悪化させることも多く、採血値が20を超えると呼吸苦や目の腫脹が発現するケースも。50を超えると、花粉が多い時には喘鳴や咳、全身蕁麻疹などアナフィラキシーを起こす人が出てきます。
オアワガエリ、カモガヤなどのイネ科:
最近では、採血の値が1.5くらいから目や鼻が痒いといった症状が起きます。
ヨモギ:
採血値が20を超えると、ヨモギ餅やヨモギ茶でも症状を起こし、40以上では強い腹痛を起こし入院することも多いです。
ブナ・コナラ:
採血値が5を超えると、花粉の量により目が腫れあがるなどの症状を起こすことが多くみられます。
目や鼻のかゆみを非常に強く起こす印象です。
ヤナギ(ポプラ):
3くらいから症状が出てきます。肌、特に顔を荒らす力が非常に強いです。
■北海道での花粉症、アルバアレルギークリニックにご相談ください
つらい症状の根本原因を正確に知ることが、適切な治療と安心への第一歩です。 当クリニックでは、北海道の状況や患者さま個人に合わせたオーダーメイド検査で的確な診断を行い、お一人おひとりに最適な治療法をご提案します。なかでも、シラカバ・イネ科の花粉でつらい症状がある方には、花粉症の根本的な改善が期待できる「免疫療法」をご案内しています。
■当院こだわりの治療法「シラカバ花粉の免疫療法」
アルバアレルギークリニックでは「シラカバ」「イネ科」の花粉症の診断を受けた方に、花粉症の完治を目指す治療を行っています。
「花粉症をすっきり治したい」と希望する方が多くいるためです。その完治が見込める治療法を「免疫療法」と言います。
免疫療法とは、アレルギーの原因であるアレルゲンを体内に吸収させることで、アレルギー反応を弱めていく治療法です。
スギ花粉の免疫療法では舌の下に投与するタイプが一般流通していますが、シラカバ花粉・イネ科花粉の場合は舌下タイプが日本で取り扱いがないため、当院ではアメリカから薬剤を取り寄せ、注射を用いて体内に取り込みます。
治療期間は3年以上で、治療が完了するまで月1回程度の受診が必要です。途中で中止できますが、継続するほどにくしゃみ・鼻水・目のかゆみが減っていく傾向にあります。
治療期間は長くなりますが、一時的な対症療法ではなく、体質を改善して花粉症自体を治す可能性の見込める治療法です。
※シラカバ、イネ科の免疫療法は、日本アレルギー協会を通じて海外から治療薬を輸入するため、保険適用外の自由診療(自費)となります。
長年のお悩みも諦めず、まずは専門医にご相談ください。一緒に解決策を見つけ、快適な毎日を目指しましょう。
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