札幌市南区のアレルギー科・小児科(アレルギー)のアルバアレルギークリニック札幌です。
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北海道の花粉症の特徴
花粉症は地域によって大きな差があります。
本州のスギと違い、北海道では、シラカンバ、ハンノキ、オオアワガエリ 、ヘラオオバコ、ナガハグサ、ヨモギ、ブナ、コナラ、マツ(エゾマツ、トドマツなど)、ヤナギ、ニレ、ヒメスイバ(ギシギシ)、イチイなどが問題になります。
北海道では、本州とは異なり、札幌の北海道神宮に植えられた数本のスギしかありませんので、スギ花粉症はありません。
一方で、メインの花粉症はシラカバ花粉症です。
シラカバの花粉は4月から6月にかけて飛散し、シラカバ花粉症の患者はバラ科の果物に対して果物過敏症を併発することがあります。
他にも、春にはハンノキやイチイの花粉が、夏にはイネ科の花粉が、秋口にはヨモギの花粉が飛散します 。
花粉の飛散時期

花粉症が、軽くなることはない
花粉症に一度なったら、勝手に治ることはありません。
子どもの頃から腸内細菌を整えることは、花粉症の予防にはなりますが、残念ながら、アレルギー体質が食事で改善することはないという世界的な研究結果が出ています。
つまり、「今年はダメでしたけど、来年は大丈夫でしょう」ということはないのです。
花粉症の症状は、身体の中に入ってきた量とその日の体調によるため、たまたまあまり花粉が飛んでいない日に外出すると、あまり症状が出ないかもしれませんが、風の強い日なら重い症状が出ることになりますが、温暖化で花粉の飛散量は、ますます増える傾向にあります。
また、実際に診療していると、温暖化により、花粉の時期が長くなり、ピークもズレ来ている気がしています。
北海道の冬が温暖になると、これまでよりも春の到来が早まり、シラカンバやハンノキなど、花粉を多量に生産する樹木の生育期間が延長され、さらに花粉の飛散量が増加する可能性や、花粉症のシーズンを長引かせる可能性があります。
これにより、花粉症患者はより長い期間、症状に悩まされることになるかもしれません。
また、気候変動によって極端な気象が増えることも、花粉の飛散パターンに影響を与え、一時的に花粉の濃度が高まる日が増え、これまで花粉症の症状がなかった人や、子供たちが新たに花粉症を発症するケースが今後も増加してくるでしょう。
また、既存の花粉症患者さんにおいても、症状が悪化する可能性が考えられます。
さらに、温暖化が本州で問題となっているスギ花粉など特定の植物種の北上を促す可能性があるので、新たな花粉の源が北海道でも見られるようになるかもしれないため、今後も、花粉症は増える一方です。 花粉症になると、さまざまな生活改善を試みる方が多いのですが、一度かかると自力で治すことができないことは、冷静に周囲を見れば、わかっていただけることでしょう。
花粉症の症状
北海道での花粉症の症状は、基本的には他の地域での花粉症の症状と同様ですが、その原因となる植物の種類によって、症状に違いが出ることがあります。
特に北海道では、一般的な目や鼻の症状だけでなく、たとえば、シラカンバの花粉は、全身のアレルギーを悪くすることが多々あり、アトピー性皮膚炎や気管支喘息、ニキビの悪化を引き起こしますし、最近増えているポプラの花粉症は、顔面の腫脹や顔の皮疹の悪化を引き起こします。
一般的な花粉によるアレルギー反応
鼻症状(アレルギー性鼻炎):
鼻水、鼻づまり、くしゃみ、鼻のかゆみなどが主な症状です。
特に屋外に長時間いると症状が悪化することがあります。
目の症状(アレルギー性結膜炎):
目のかゆみ、赤み、涙目、充血などが見られます。
花粉が目に入ると、痒みを感じやすくなります。
皮膚の症状:
皮膚のかゆみや湿疹、アトピー性皮膚炎の悪化、顔面腫脹などが生じることがあります。
これは、花粉が皮膚に直接触れることで引き起こされることがあります。
呼吸器症状: 喘息を持っている人では、花粉の飛散期間中に喘息の症状が悪化することがあります。息切れ、咳、胸の苦しさなどが挙げられます。
主な花粉別の症状
シラカンバ:
全身に症状を起こすことが多い花粉です。呼吸苦、肌荒れなど全身の症状を出すことも多いです。果物・野菜アレルギーを起こす力も強いです
オオアワガエリ、カモガヤなどのイネ科:
花粉の飛散距離が短いために一般的には公園に行ったときだけ症状がでるなど限られますが、北海道では牧場、農業などの職業の方で問題になります。
花粉症状がないままに、果物野菜アレルギーをおこすことが問題です。
ヨモギ:
飛散距離が短いために花粉症の症状はあまり強くありません。しかし、アレルギーが強くなると、ヨモギ餅やヨモギ茶でも強い腹痛を起こします。
ブナ・コナラ:
眼、鼻の掻痒が強いです。近年急激に花粉症の人が増えています。
ヤナギ(ポプラ):
顔を荒らす力が強いです。綿毛が飛び始めると、顔のアトピー性皮膚炎が悪化することが非常に多いです。
北海道特有の注意点 : 果物・野菜アレルギー
シラカンバ花粉症の人は、果物野菜アレルギーを引き起こします。リンゴや桃など特定の果物を食べると口の中がかゆくなるなどの症状を経験することがあります。これは、花粉とこれらの食物の間にアレルギー成分が同じものがあるためです。
果物・野菜アレルギー
花粉症の採血の見方
花粉症の採血結果においては、それぞれの数値が同じだからといって、同じ程度の症状が出るとは限りません。
例えば、シラカバの「2.5」は確実に花粉症の症状が出ますが、ヨモギの「2.5」は症状が出ることはあまりありませんから、シラカバの「2.5」とヨモギの「2.5」では大きく解釈が変わります。
以下に症状が出る目安の数値を記載していますので、参考にしてみてください。
なお、2~3年程前より、採血では計測できないローカルな花粉に反応する方が顕著に増えてきています。
採血では判定できない花粉症については、5年程前に九州で増えていると聞いていましたが、北海道でも増えてきており、温暖化の影響で今後も採血で計測できない花粉に反応する患者さんは増え続けると思われます。
もし、季節ごとに眼や鼻のかゆみなどの症状が出ているものの「採血で何も反応が無い」場合には、積極的に花粉症の治療考えるべきでしょう。
北海道の花粉症で症状が出る目安の値
シラカンバ:
採血の値が0.5くらいから症状がでます。
アトピー性皮膚炎、気管支喘息を悪化させることも多く、採血値が20を超えると呼吸苦や目の腫脹が出てきます。
50を超えると、花粉が多い時には喘鳴や咳、全身蕁麻疹などアナフィラキシーを起こす人がでてきます。
オオアワガエリ、カモガヤなどのイネ科:
最近では、採血の値が1.5くらいから目や鼻が痒いといった症状が起きます。
ヨモギ:
採血値が20を超えると、ヨモギ餅やヨモギ茶でも症状を起こし、40以上では強い腹痛を起こし入院することも多いです。
ブナ・コナラ:
採血値が5を超えると、花粉の量により目が腫れあがるなどの症状を起こすことが多くみられます。
目のかゆみを非常に強く起こす印象です。
ヤナギ(ポプラ):
3くらいから症状が出てきます。肌、特に顔を荒らす力が非常に強いです。
原因花粉が不明の場合
4~6月の3カ月くらい症状がでます。
今後は温暖化の影響により、花粉症の人も期間も増加することが予想されます。
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