花粉症とは
花粉症で多いのはスギやヒノキ、シラカンバなどの植物の花粉が原因となりますが、住んでいる地域によって症状は大きく変わります。
北海道は他の地域と異なり、シラカンバなど特有の花粉が多く、季節ごとに異なる対策が必要です。
自分のアレルギーの原因となる花粉を知り、適切な時期に適切な対策を取ることで、花粉症の症状を軽減できます。
北海道の花粉症と採血結果
北海道の花粉症の症状
通常の花粉症の主な症状
鼻と目の症状
- 止まらない鼻水と鼻づまり
- 連続するくしゃみと鼻のかゆみ
- 目の充血、かゆみ、涙目
- まぶたの腫れ
北海道特有の花粉症の特徴
海道の花粉症は、関東のスギと違い、アトピー性皮膚炎の悪化、喘息発作、全身蕁麻疹などの全身症状を起こすため、鼻水やくしゃみだけでは終わりません。
北海道では一般的な症状に加え、以下のような特徴的な反応が見られることがあります:
- 全身のアレルギー反応の悪化:
- 顔面の腫れ:
- アトピー性皮膚炎の悪化
- 皮膚のかゆみ
- 果物・野菜アレルギー
- 強い疲労感と集中力低下
- 頭痛
- 睡眠の質の低下
- イライラ感や気分の落ち込み
- 微熱
主な花粉別の症状
シラカンバ:
全身に症状を起こすことが多い花粉です。呼吸苦、肌荒れなど全身の症状を出すことも多いです。果物・野菜アレルギーを起こす力も強いです
オオアワガエリ、カモガヤなどのイネ科:
花粉の飛散距離が短いために一般的には公園に行ったときだけ症状がでるなど限られますが、北海道では牧場、農業などの職業の方で問題になります。
花粉症状がないままに、果物野菜アレルギーをおこすことが問題です。
ヨモギ:
飛散距離が短いために花粉症の症状はあまり強くありません。しかし、アレルギーが強くなると、ヨモギ餅やヨモギ茶でも強い腹痛を起こします。
ブナ・コナラ:
眼、鼻の掻痒が強いです。近年急激に花粉症の人が増えています。
ヤナギ(ポプラ):
顔を荒らす力が強いです。綿毛が飛び始めると、顔のアトピー性皮膚炎が悪化することが非常に多いです。
花粉症は自然には治らない
花粉症に一度なったら、温暖化の影響で悪化することはあっても、勝手に治ることはありません。
子どもの頃から腸内細菌を整えることは、花粉症の予防にはなりますが、残念ながら、アレルギー体質が食事で改善することはないという世界的な研究結果が出ています。
つまり、「今年はダメでしたけど、来年は大丈夫でしょう」ということはなく、ただ花粉の飛散量に影響されているだけです。
花粉症の症状は、身体の中に入ってきた量とその日の体調によるため、たまたまあまり花粉が飛んでいない日に外出すると、あまり症状が出ないかもしれませんが、風の強い日なら重い症状が出ることになりますが、温暖化で花粉の飛散量は、ますます増える傾向にあります。
また、実際に診療していると、温暖化により、花粉の時期が長くなり、ピークもズレ来ている気がしています。
北海道の冬が温暖になると、これまでよりも春の到来が早まり、シラカンバやハンノキなど、花粉を多量に生産する樹木の生育期間が延長され、さらに花粉の飛散量が増加する可能性や、花粉症のシーズンを長引かせる可能性があります。
これにより、花粉症患者はより長い期間、症状に悩まされることになるかもしれません。
また、気候変動によって極端な気象が増えることも、花粉の飛散パターンに影響を与え、一時的に花粉の濃度が高まる日が増え、これまで花粉症の症状がなかった人や、子供たちが新たに花粉症を発症するケースが今後も増加してくるでしょう。
また、既存の花粉症患者さんにおいても、症状が悪化する可能性が考えられます。
さらに、温暖化が本州で問題となっているスギ花粉など特定の植物種の北上を促す可能性があるので、新たな花粉の源が北海道でも見られるようになるかもしれないため、今後も、花粉症は増える一方です。 花粉症になると、さまざまな生活改善を試みる方が多いのですが、一度かかると自力で治すことができないことは、冷静に周囲を見れば、わかっていただけることでしょう。
北海道特有の注意点 : 果物・野菜アレルギー
北海道の花粉は、果物野菜アレルギーを引き起こします。
リンゴや桃など特定の果物を食べると口の中がかゆくなるなどの症状が多く、これは、花粉とこれらの食物の間にアレルギー成分が同じものがあるために起こります。一度アレルギーになってしまうと、シラカバ花粉症の治療をする以外で治ることはありません。
果物・野菜アレルギー
北海道の花粉の時期
花粉症は地域によって大きな差があり、北海道と本州では飛散時期や症状が大きく違います。
本州のスギと違い、北海道では、シラカンバ、ハンノキ、オオアワガエリ 、ヘラオオバコ、ナガハグサ、ヨモギ、ブナ、コナラ、マツ(エゾマツ、トドマツなど)、ヤナギ、ニレ、ヒメスイバ(ギシギシ)、イチイなどが問題になります。
北海道では、本州とは異なり、札幌の北海道神宮に植えられた数本のスギしかありませんので、スギ花粉症はありません。
一方で、メインの花粉症はシラカバ花粉症です。
シラカバの花粉は4月から6月にかけて飛散し、シラカバ花粉症の患者はバラ科の果物に対して果物過敏症を併発することがあります。
他にも、春にはハンノキやイチイの花粉が、夏にはイネ科の花粉が、秋口にはヨモギの花粉が飛散します 。
花粉の飛散時期

春(3月~6月)
- 主な花粉源: シラカンバ、ハンノキ、ブナ、ニレ、コナラ、イチイ、タンポポ、マツなど
- 特徴: 北海道で最も花粉症が多い季節。特にシラカンバは北海道特有の強いアレルゲンです。
- 症状: 鼻水、くしゃみ、目のかゆみ、喉の痒み、時に全身蕁麻疹や喘息発作などの症状がでる。果物アレルギー(特にシラカンバ花粉症の方)
夏(6月~8月)
- 主な花粉源: オオアワガエリ(ティモシー)、ナガハグサ、ヒメスイバ(ギシギシ)など
- 特徴: 牧草由来の花粉が主体。飛散距離が短いため、牧草地の近くでない限り重度の症状は出ない人が多い。
- 症状: 鼻炎、眼のかゆみがあるが飛散距離が短いのであまり症状はでない。メロンなどのウリ系やオレンジなどの柑橘系の食物アレルギーとの関連あり
秋(8月~10月)
- 主な花粉源: ヨモギなど
- 特徴: ヨモギは食物アレルギーとの関連が強い
- 症状: 鼻炎、眼のかゆみがあるが飛散距離が短いのであまり症状はでない、特にスパイス類のアレルギーと関連している。
その他の特徴的な花粉
- ヤナギ(ポプラ): 綿毛と共に飛散し、顔のアトピー性皮膚炎を悪化させることもある
- マツ類(エゾマツ、トドマツ): 北海道の代表的な針葉樹
- ブナ: 近年、特に子供の間で急増している花粉症の原因
原因花粉
花粉症の原因は、特定の植物の花粉に対するアレルギー反応です。
代表的な花粉症の原因としては、シラカンバ、スギ、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギ、イネなどがありますが、地域によって大きく変わります。
花粉症の症状は、花粉の飛散量に応じて季節的に現れます。
スギ花粉症は春、ヒノキ花粉症は春から初夏、ブタクサ花粉症は夏に、ヨモギやイネ花粉症は秋に症状が顕著になります。
診断と治療
花粉症は主に症状とアレルギー検査の結果をもとに診断されます。
診断を受けたら、医師から治療法や対処法を指導されます。
治療法には、抗ヒスタミン薬、ステロイド鼻スプレー、目薬、アレルギー免疫療法(アレルギー導入療法)などがあります。
予防方法
花粉症の症状を軽減するために、以下の予防策を取ることができます。
- 花粉の飛散時期に室内に滞在する。
- 花粉の飛散が多い日には外出を控える。
- マスクを着用する。
- 目を保護するためにサングラスをかける。
花粉症は個人差があり、症状の程度や感受性は異なります。
重度の場合、日常生活に支障をきたすこともありますので、医師の指導のもとで適切な治療を受けることが大切です。また、自己判断や自己治療せず、医師の診断と指導に従うことが重要です。
私が、アレルギー性鼻炎を治療する理由
私の息子はアレルギー性鼻炎がとても酷く、人の4倍の薬を飲んで、2倍の量の点鼻薬を使っていました。
しかし、色々な専門医に受診しても、4歳の時にはこれ以上やれることはないと言われ、鼻の詰まりで息子は夜中に泣いて起きる状態でした。
その当時、アレルギー医になりたてだった私は、親として「本当に治療方法はないのか?」と思う反面、専門医が言うならと諦めの気持ちから泣きたくなっていました。
ところが、勉強に行ったイタリアのアレルギー学会で、他の国ではアレルギー性鼻炎の原因のダニアレルギーは、注射で根治させていることを知ります。
そこで、私は日本でも同様の治療を探しましたが、2015年の日本では他の国よりも6割程度の効果しかない薬しかありませんでした。
他の国と同じ薬を輸入して治療しようとしましたが3ヶ月はかかる事がわかったので、まずは息子のダニアレルギーを日本にある薬で開始しました。
すると、治療開始1ヶ月後には夜中に起きることは一切なくなり、不眠が続き機嫌の悪かった息子や家族がイライラする事はなくなり、明らかに私の息子の鼻は良くなっている事を実感しました。
そして、3ヶ月後には今まで悩んでいた症状を忘れるくらいになり、今までの薬を減らし始めました。
その6ヶ月後には月1回の注射以外の薬は不要になり、現在に至ります。
大量にあった毎日の薬も必要なく、鼻の症状がない事で生活が楽になり、毎日快適に眠れることでストレスもなく、家族が毎日笑えるとは思ってもいませんでした。
いつでも笑っている家族をみて、もっと早く注射の治療を知っていれば、4歳だった頃の私の息子が毎日泣くようなことはありませんでしたが、実はごく一部の日本のアレルギー病院でもこの治療は普通に行われていたことを後に知ります。
一方で、アレルギーを掲げているクリニックは多いものの、健康保険の仕組み上仕方ないこととはいえ、アレルギーを根治するような治療や我々アレルギー医が行っているような検査を行える医者は全体の0.5%程度もいません。
このため、有名なアレルギー病院に患者は集中し、受診するのに3〜6ヶ月待ちです。
広告や宣伝をする必要が無いので表にも出てきません。
こういった状況のため、地方のアレルギー医であった自分では、アレルギーを根治するような治療や全てのアレルギーに対応して治療を行っている医師達と知り会うことが出来ませんでした。
ですが、私は今もアレルギーの勉強を続け、海外の学会を回っています。
さらには、知り合ったアレルギー医達にお願いし、休暇を取って日本全国の病院を勉強して回り、アレルギー医同士で患者さんを紹介し合って、他のアレルギー医達と関係を作り続けています。
私の息子は何年もこの情報に辿り着けませんでしたが、私がアレルギー全般の治療が行えるようになった今では、早くから知っていれば大きく生活が変わるアレルギーの治療を、悩み続けている私のところ来る子ども達には受けてほしいと思っています。
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