例えば、こんな症状ありませんか?
赤ちゃんの頃から肌荒れがひどく、小児科では乳児湿疹と言われるも悪くなるばかり。
病院に行って大量の塗り薬を使っても現状維持が精一杯、時々悪くなるのを繰り返している。
病院を変えて何度相談しても、肌を見てくれることもなく、これ以上やる事はないと言われ、帰ることを急かされる。
病院に通うたびに悲しかった。
しばらくぶりに会った友人の子は、同じくらい肌が荒れていたのに、通っている病院で薬の塗り方と体の洗い方の説明を詳しく受けており、毎回肌を触って診察してもらっていた。
そのせいか、今は週1回だけお腹に軟膏を塗るだけでキレイな肌で痒みも無くなっており、来月からは保湿剤だけになるらしい。
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎は、慢性的に皮膚症状が悪化したり改善したりを繰り返し、強いかゆみを伴う湿疹が特徴の病気です。
この病気は「アトピー素因」を持つ人に多く見られます。アトピー素因とは、家族歴にアレルギー疾患があることや、患者自身がアレルギー反応を起こしやすい体質であることを指します。
アトピー性皮膚炎の根本的な原因は、アレルギーを起こしやすい体質や皮膚のバリア機能の低下にあります。
皮膚のバリア機能が低下すると、外部のアレルゲンが体内に侵入しやすくなり、炎症やかゆみを引き起こします。また、かゆみによる掻き傷が皮膚をさらに悪化させる悪循環を引き起こすこともあります。
つまり、アトピー性皮膚炎は、乾燥肌に加えてかゆみや湿疹が繰り返しあらわれる「皮膚の病気」です。
アトピー性皮膚炎は、ただの皮膚の病気ではありません。
その症状である「痒み」は、患者さんの日常生活に深刻な影響を及ぼし、夜十分に眠れないために身長の伸びが悪くなったり、学校生活や日常活動において本来の力を発揮できなくなることがあります。
特に顔に症状がある場合、視力に影響を及ぼす白内障や網膜剥離といった深刻な眼の合併症が生じる可能性もあります。
これらの問題は、患者さんだけでなく、その家族にとっても大きな負担となります。
さらに、この病気は慢性的に症状が続き、特定のアレルゲンや刺激によって悪化することがあります。
アトピー性皮膚炎は体質による側面が強く、皮膚のバリア機能が低下しているため、外部からの刺激に対して非常に敏感になります。
つまり、アトピー性皮膚炎は、「皮膚の問題ではなく、体の中の問題」であると取れています。
このため、アトピー性皮膚炎は体の中の問題なので、治療がうまく行かないと、どんどんアレルギーが増えていきます。
これをアレルギーマーチと呼びます。
すべての病気が一緒ですが、がっちり治療を始める期間が長ければ長い程、治りにくくなっていきます。
アトピー性皮膚炎の合併症
アトピー性皮膚炎は「アレルギーマーチ」のほかにも、感染症などの合併症を引き起こします。
・皮膚感染症
アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が壊れているために、細菌、ウイルス感染を起こすことがしばしばあります。
いつもと違う湿疹が出た場合に注意です。
とびひ(伝染性膿痂疹)
細菌感染です。見た目はニキビみたいですが、広がっていきます。
・Kaposi水痘様発疹
ヘルペスウイルスの感染です。痛み、発熱などがあり、顔に感染すると一気に広がっていきます。
・みずいぼ(伝染性軟属腫)
これも感染症です。通常症状はありませんが、かゆみがあることもあります。広がっていきますが、3カ月6ヶ月で消失します。
・眼合併症
眼の周囲の湿疹が広がったり、アトピー性皮膚炎自体が原因で、白内障になったりします。
アトピー性皮膚炎の診断基準
アトピー性皮膚炎の診断には、以下の基準があります:
- 強いかゆみがあること
- アトピー性皮膚炎に特徴的な皮疹(湿疹)が体の左右対称に現れること
これらの皮疹は、おでこ、目の周り、口や耳の周り、首、手足の関節などの柔らかい部分によく現れ、症状が周期的に改善したり悪化したりします。
アトピー性皮膚炎は、「かゆみのある湿疹が、慢性化している」かどうかで決まります
「かゆみのある湿疹」とは
皮膚が赤くなる、小さいぶつぶつができる、皮膚が厚くなる、カサカサになる、かさぶたができるなどの湿疹が、額、目や口の周り、頸、体幹、肘、膝などにできます。
「慢性化している」とは
1歳未満であれは2ヶ月以上、1歳以上であれば6ヶ月以上、
良くなったり悪くなったりを繰り返している状態をいいます。
年齢による特徴
アトピー性皮膚炎は年齢によって現れる皮疹の特徴が異なります。
これはあくまでも教科書的な傾向であり、個人個人のよって違いが大きくあります。
- 乳児期:頭や顔から始まり、徐々に体や手足に広がる傾向があります。
- 幼小児期:首や手足の関節部分に皮疹が現れやすくなります。
- 思春期・成人期:上半身(頭、首、胸、背中、肘、膝)に皮疹が多く見られる傾向があります。
乳児は、「乳児湿疹の半分はアトピー性皮膚炎」とも言われており、現在では乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の治療の区別はつけません。
また、急激に広がる場合には、診断まで2カ月間待っていると後々大きな悪化につながります。
成人の場合には、小児期にアトピー性皮膚炎だったものが、再発する場合も多く見受けられます。
この場合、1~2カ月で急激に広がってくることも少なくありません。
アトピー性皮膚炎と肌荒れ、乾燥肌との違い
「肌荒れ」は、肌が荒れた状態全てです。
つまり、「乾燥肌」も「アトピー性皮膚炎」も、一般的には「肌が荒れている」でひとまとめになります。
ただし、一見似ているように思われがちですが、根本的な違いがあります。
肌荒れとは
肌荒れは多くの人が経験する一般的な問題であり、その原因は多岐にわたります。
吹き出物、かゆみ、赤み、乾燥、ブツブツなど、さまざまな症状をひとまとめにした表現です。
特に女性の肌はデリケートで、さまざまな外的・内的要因により肌荒れが起こりやすい傾向にあります。
肌荒れの主な原因としては、
- 外的要因:紫外線、マスクの擦れや蒸れ、空調、花粉など
- 内的要因:睡眠不足、ストレス、ホルモンバランスの変化(生理前・生理中、妊娠中など)、生活習慣(栄養バランスの乱れ、運動不足)、化粧品の使用
等があります。
これらの要因が組み合わさることで、肌のバリア機能が低下し、肌荒れを引き起こします。
乾燥肌とは
乾燥肌は、文字通り肌の水分が不足し、うるおいを失った状態を指します。
肌のバリア機能が低下すると、外部からの刺激に対する抵抗力が弱まり、肌がカサカサしてしまいます。
乾燥肌の主な原因には、加齢や紫外線ダメージ、過度な洗顔や洗浄剤の使用などがあります。
乾燥肌は「肌の状態」であり、適切なスキンケアによって改善が見込めます。
肌荒れ、乾燥肌とアトピー性皮膚炎との共通点
- 肌のバリア機能の低下:
- 肌のバリア機能が低下していることが一般的です。バリア機能が低下すると、肌は外部からの刺激やアレルゲンに対して脆弱になり、炎症や刺激感を引き起こしやすくなります。
- 乾燥:
- 乾燥はアトピー性皮膚炎と肌荒れの両方で見られる症状です。肌のバリア機能の低下により水分保持能力が低下し、乾燥してしまいます。乾燥した肌はかゆみや赤みなどの症状を引き起こしやすくなります。
- 炎症:
- アトピー性皮膚炎の患者は、慢性的な炎症を経験することがありますが、肌荒れの場合も、炎症(赤み、腫れ、熱感など)が起こることがあります。これらは肌の刺激に対する反応として現れます。
- 外部刺激に対する感受性の増加:
- アトピー性皮膚炎と肌荒れの共通点として、外部刺激(化学物質、環境因子など)に対する肌の感受性が増加していることが挙げられます。これにより、肌トラブルが発生しやすくなります。
アトピー性皮膚炎の重症度
アトピー性皮膚炎は、皮膚症状の重さや面積によって、重症度が決まります。
アトピー性皮膚炎の重症度の分類
- 軽症:皮膚に軽度の赤みや乾燥が見られる
- 中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の約10%未満
- 重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以上30%未満
- 最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上
アトピー性皮膚炎の治療薬は、重症度によって異なります。
ポイントは、「湿疹が出ている部位の広さ」です。
アトピー性皮膚炎の治療法
アトピー性皮膚炎は、適切な治療によって症状を長期間コントロールすることが可能な病気です。
早くから治療を開始すれば、寛解、つまり症状がなくなる状態に至ることも期待できます。
アトピー性皮膚炎が良くならない方は、「薬の選び方と塗り方」が間違えているからです。
アトピー性皮膚炎の治療では、「病気としての重症度」よりも、「それぞれの皮疹の重症度」が重要です。
良くならない方は、一般的な強い弱いで決めた薬を悪い時だけ塗る。もしくは最初から自然の力を信じて薬を使わない。
しかし、これだと基本的に悪い状態がさらに悪くなったときだけ薬を使う羽目になるので、どこの病院に行っても同じ事の繰り返しです。
範囲が狭くても、皮膚が腫れてジクジクするなどの重症状態があれば、その人にあった治療を選択する必要があります。
つまり、一般的な薬の強い弱いで決めるのではなく、「その人の症状に対して強いのか弱いのか」で決めていく必要があります。
簡単に言えば、症状が改善したら、一段階軽いステージの治療に変更し、逆に悪化した場合は一段階重いステージの治療に変更します。
アトピー性皮膚炎は毎日薬を塗り段階的に減らしていくのが主流で、きちんと治療していれば、症状が無いもしくはほとんど無い日常を目指しています。
あなたが良くならなかったのは、これまでは治療の選択肢が少なすぎたから、本来なら良くなるはずのものを治せていなかっただけ。
本当はたくさんの、さまざまな症状にあった効果的な薬と使い方があって、症状を無くし、最終的には薬自体を使わなくてもよい状態を目指すのが私たちの行う現在の世界標準です。
症状を無くして薬を使わなくても良くするために、これまでの経緯をよく聞いて、あなたの症状に対して薬を選び、これまでとは違った角度で血液検査の分析を行い、あなたのアレルギーを全く別の方向から見直すことで、じっくり治療方針を立てます。
つまり、まったく別の方向からアプローチするので、これまでにない結果を得ることを目指します。
薬物療法(一般的な治療法)
炎症を抑え、痒みをコントロールするため、一般的な強い弱いではなく、その人の湿疹に対して強い弱いで薬が決まります。
ステロイド外用薬は効果的に炎症を抑えることができますが、「症状にあった強さ」、「正しい量」、「塗り方」で、使用する際は正しい方法で塗布することが重要です。
デュピクセント
生後6ヶ月から使用可能です。
アトピー性皮膚炎は、炎症、かゆみ、およびバリア機能の低下という3つの要素、すべてに対して効果的に作用する新しい治療薬です。
デュピクセント(デュピルマブ):アトピー性皮膚炎治療
皮膚科の治療との違い
当院では、アトピー性皮膚炎を「体の中の問題」として捉え、体の中と外からの改善を目指しています。
アトピー性皮膚炎のセルフケア
スキンケア
皮膚を清潔に保ち、保湿を行い、薬物治療では炎症を抑え、環境整備によって悪化因子を排除します。
これにより、症状の改善を目指し、「寛解導入」を図ります。
また、症状が改善された後も、再発防止のために継続的なスキンケアや必要に応じて薬物療法を続けることが重要です。
食事による改善
食物アレルギーが関与するアトピー性皮膚炎とも言われています。
食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の症状を悪化させていることがありますし、特定の食物が悪化要因になっていることもあります。
このため、食物アレルギーを判断し、悪化要因となる食物を排除し、タンパク質と食物繊維、ビタミンを見直す必要があります。
環境の改善
悪化要因として、寝具、汗、ストレス、睡眠不足などが挙げられます。
一般的なことになりますが、これらを改善していくのが一番の近道です。
特にストレスと睡眠不足は、アトピー性皮膚炎を一気に悪化させます。
アトピー性皮膚炎の当院での治療法
アルバのアトピー性皮膚炎の治療はカスタマイズ治療です。
スキンケア、薬物療法、悪化要因の対策の3つを患者さんの症状に対し組みあわせ、カスタマイズ治療していきます。
アトピー性皮膚炎の背後にあるアレルギー反応や免疫系の異常に注目し、体の中の問題として、治療を行います。
治療にあたっては、見た目の改善だけでなく、皮膚の深部に潜む炎症にも注意を払い、適切な期間、薬物を使用することが重要です。
特にステロイド外用薬に関しては、正しい使用方法を守ることで、副作用のリスクを最小限に抑えることができます。
これらは互いに補完し合い、効果的な治療を実現します。
正しい治療を行うことで、症状をコントロールし、湿疹のない健康な肌を目指すことができます。
治療の実際
- スキンケア:皮膚を清潔に保ち、保湿することで症状の悪化を防ぎます。
- 薬物治療:炎症を抑え、痒みをコントロールします。ステロイド外用薬は効果的に炎症を抑えることができますが、使用する際は正しい方法で塗布することが重要です。ここで大事なのは、あなたにあった薬を選ぶことです。使い始めて3~5日で症状がなくなる薬があなたにあった薬で、薬を一般的な強いが弱いかで決めると、絶対に失敗します。ステロイドは保湿だけに移行していくためのつなぎです。
- 環境整備:アレルギーを引き起こす可能性のある要因を特定し、除去することで症状の悪化を防ぎます。
【ポイント】
①3日から5日で症状をゼロにすることを目指します。
②症状がゼロになったら、その状態を3~4週間維持します。
③そこからが治療のスタートです。
④半年から1年くらいかけ、徐々に薬を減らします。
⑤最終的に、3~4年かけて保湿剤に移行、卒業を目指していきます。
薬の塗り方
アトピー性皮膚炎は、長年のダメージで肌バリアが壊れ、デコボコしているような状態です。
このため、薬を薄く塗ると、デコボコしている底にしか薬がととかず、治りません。
このためバリアの分だけ、たっぷりと塗ることが重要です。
たっぷりとは、ティッシュがくっついて落ちない程度、皆さんが思われているより、倍くらいの量になります。