スキンケアで、アトピー性皮膚炎を予防する
赤ちゃんの頃から肌荒れがひどく、小児科では乳児湿疹と言われるも悪くなるばかり。病院に行って大量の塗り薬を使っても現状維持が精一杯、時々悪くなるのを繰り返している。
病院を変えて何度相談しても、肌を見てくれることもなく、これ以上やる事はないと言われ、帰ることを急かされる。
病院に通うたびに悲しかった。
しばらくぶりに会った友人の子は、生まれた時から保湿剤を塗るように言われ、通っている病院でスキンケアの説明を詳しく受けており、3ヶ月に1回定期診察をしてもらっていた。
そのせいか、オムツかぶれもなく、保湿剤を塗る回数も徐々に減らしており、来月からは保湿剤も卒業するとゆう。
治ってない自分の子どもを見て泣きそうになったから、かかりつけのアレルギー医を教えててくれた。
1.アトピー性皮膚炎は予防する時代
アトピー性皮膚炎とは、医学用語では、痒みのある湿疹が、慢性的に増悪・寛解を繰返す疾患で、簡単には「痒し、ぼつぼつが、出たり消えたりする疾患」のことです。
乳児アトピー性皮膚炎は生後2~3ヶ月頃までに発症し、8ヶ月頃までは加速度的に悪化し、10ヶ月頃には軽快傾向になる④)と、以前は言われてもいました。
が、実は2歳までに発症した患者で、7歳までに寛解するのは1/3、つまり2/3は症状が継続する④)ことが解っており、がっちり治療していなければそれほど良くなりません。さらに、アメリカでは、 20歳以前に6ヵ月間無症状または無治療期間を1回以上有した患者の割合は50%いない⑤)、とも言われています。
また、両親のどちらかにアトピー性皮膚炎があるなど、わかりやすく言えば家族にアレルギーがあるとお子さんもアレルギーになりやすいです。なので、乳児期に出来るだけアトピー性皮膚炎を予防してしまおうと、今は考えられています。
すべての病気はできるだけ早くから治療するのが、治る条件です。つまり、よくある「乳児湿疹だから」で、何も治療せずに様子を見ていたのでは良くはなりません。
具体的には、生後7日以内、つまり産院にいる間にスキンケアを開始します。スキンケアとは、保湿剤を全身に塗り、体を丁寧に洗うこと。特に保湿剤を全身に塗ります。
医学用語でいえば、生後1週間以内からの保湿剤塗布群で、アトピー性皮膚炎の発症が約30~50%抑制できた①~③)。
これは、生後7日以内からスキンケアを継続することでアトピー性皮膚炎になる確率を下げ、もしアトピー性皮膚炎になったとしても重症度を下げられるとゆうこと。さらに、食物アレルギーに出来るだけならないような予防も兼ねています。
アレルギー医がいる病院では、妊娠前からのアレルギー予防として、妊婦教室でお話しされています。
2.皮膚の問題ではない
アトピー性皮膚炎は、治療がうまくいっていないと、次から次にアレルギーを起こします。そして次々に起きてしまった多くアレルギーは、日本の健康保険では、治すことはできません。
この、アレルギーマーチの引き金になるアレルギーの72.4%がアトピー性皮膚炎で、発症時期が早い、重症度が高い、罹患期間が長いほど、他のアレルギーを発症する確率が高くなることが解っています。
なかでも、乳児期にアトピー性皮膚炎になると、食物アレルギーを併発しやすく、次にアレルギー性鼻炎、気管支喘息を起こします、経験的には、乳児期からのアトピー性皮膚炎の場合、食物アレルギーが必発と言ってよいほど合併します。
このため、アトピー性皮膚炎にならないための予防、アトピー性皮膚炎になってしまったら早くに治療することよって、重症化・遷延化を防ぐことが最重要なのです。
3.予防、軽症化はできないの?
アトピー性皮膚炎は、医学用語で言えば「皮膚のバリアー機能障害」。
つまり、肌のバリアーが壊れてるので、何にでもかぶれるような状態になっているのが原因です。
なので、肌のバリアーを本来の自分に戻してあげれば良い。
これがアトピー性皮膚炎の予防、治療の原則で、医学用語で言えば、①皮膚バリア機能の強化、②アレルギー性炎症を起こす刺激の侵入排除が、重要になってきます。
4.重要なことはスキンケア
次々にアレルギーを発症するのを防ぐためには、アトピー性皮膚炎にさせないこと。これは子どもの場合、ワンオペ育児では絶対に無理で、日本では母親のみならず子どもに大きなしわ寄せがくることになります。
スキンケアで予防できるものは全て予防しますが、スキンケアは体に保湿を塗るだけです。
利点
- 市販品で行える
- 難しいことが不要
- 悪化しても早期に受診出来る
欠点は、困ってないとやらないくらい。
では、どの保湿剤がよいのでしょう?
食べ物・植物・香料が入っているものはダメです。
時間が経てば経つほど治りにくくなります。早くから治療して、本来の自分の肌を取り戻してあげましょう。
【参考文献】
①Kenta Horimukai et al. JACI;134(4):824-830, 2014.
②Eric L, et al. JACI;134(4):818-23,2014.
③Lowe ta al. Ann Allergy Asthma Immunol. 120(2):145-151, 2018.
④片岡葉子. 日皮会誌:124(13), 2498-2500, 2014.
⑤Jacob S et.al. JAMA dermatology,2014.
⑥大矢幸弘.臨床免疫・アレルギー科, 59(5): 581-586, 2013.