『意外と知らないバナナアレルギーの真実―年齢別の症状と対策を解説

バナナでアレルギー?
知っておくべき原因物質と発症のメカニズム
初めてバナナアレルギーという言葉を耳にしたとき、「バナナでアレルギーなんてあるの?」と驚いた方もいるのではないでしょうか。
実はバナナアレルギーは決して珍しいものではなく、誰にでも起こりうるものです。
今回はバナナアレルギーのメカニズムや症状、診断方法、治療法まで詳しく解説していきます。
① バナナアレルギーが起こるメカニズムと原因物質
アレルギー症状を引き起こす原因物質を「アレルゲン」と呼びますが、バナナにはMus a 1やMus a 2というタンパク質が含まれ、これらが主なアレルゲンとして知られています。
これらに対する特異的なIgE抗体が体内で作られることで、バナナを摂取した際に免疫反応が起こり、アレルギー症状が発生します。
また、バナナアレルギーは「交差反応性」による症状も多いです。
珍しいですが、特にラテックスアレルギーを持つ方は、バナナ、アボカド、キウイなどで症状が出ることがあり、これを「ラテックスフルーツ症候群」と呼びます。
この交差反応性の原因は、ラテックスとバナナに含まれる共通するタンパク質構造にあります。そのため、ラテックスアレルギーのある方は特に注意が必要です。
②年齢別の発症傾向と症状
全体的な有病率 一般人口におけるバナナアレルギーの有病率は約0.04%〜1.2%程度と低いものの、アトピー性体質を持つ児童に限ると7%〜10%と高くなります。
■ 乳幼児(0〜3歳)
バナナアレルギーが最も高いのが乳幼児期です。
稀ではありますが、生後数ヶ月の赤ちゃんがバナナ摂取でアナフィラキシーを起こした例も報告されています。
この時期のアレルギーは症状が強く現れることもあり、早期発見と適切な対処が必要です。
■ 幼児~小児(3〜12歳)
幼児期から小児期にかけては、実際に症状が現れるケースは比較的少ないとされています。
多くは口や喉の軽い違和感や皮膚症状にとどまります。
■ 成人(20代〜40代)
成人になると、バナナアレルギーの新規発症は非常に稀になりますが、20代〜40代、特に女性に多く、平均33歳前後で症状が初めて現れることがあります。
成人の場合、多くは軽い口腔症状ですが、稀に全身症状や重症化(アナフィラキシー)するケースも存在します。
③ バナナアレルギーの臨床症状とその重症度
バナナアレルギーの症状は幅広く、軽度なものから重篤なものまであります。
最も一般的な症状は乳幼児は湿疹ですが、そのほかの年齢では口腔症状で、口の中や喉がイガイガしたりかゆくなったりするものです。
しかし症状が強くなると、皮膚症状(じんましんや腫れ)、消化器症状(腹痛、吐き気、嘔吐)、さらには呼吸器症状(喘息、呼吸困難)に至るケースもあります。
稀ですが、命に関わるアナフィラキシーショックを引き起こすこともあります。
症状が重篤化するケースには、加熱などで分解されにくいアレルゲン(Mus a 4)が関係するとされています。
特に乳幼児期はアナフィラキシーなどのリスクがあるため、慎重な対応が求められます。
④花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)とは?
PFASとは、花粉症を持つ人が特定の果物や野菜を食べた際に、口や喉にアレルギー症状を引き起こす病態で、花粉症の発症年齢と同様に思春期以降から成人(10代〜40代)に多いのが特徴です。
稀に全身に広がり、重症化するケースもあります。
■花粉別に起こりやすい食品
・シラカバ:リンゴ、モモ、サクランボ、洋ナシなど
・イネ科:トマト、スイカ、メロンなど
・ヨモギ:バナナ、スイカ、キュウリ、ズッキーニなど
特にバナナアレルギーは、ヨモギアレルギーを持つ人に多く見られます。
バナナによるPFASの症状
多くの場合は軽症ですが、一部重症例も報告されています。
【 特徴的な症状の現れ方】
-
症状は摂取直後(数分以内〜15分程度)に起こりやすい。
-
口腔内・喉を中心に局所的な症状から始まることが多い。
-
加熱や加工により、症状が軽減する場合も多い(果物を加熱したジャムなどでは反応が軽くなることが多い)。
【軽症例】(最も多い:80〜90%程度)
-
口腔症状(口腔アレルギー症候群:OAS)
-
唇・舌・口腔内のかゆみ
-
ピリピリ感、イガイガ感
-
喉の違和感・軽度の腫れや痛み
-
【中等度】(5〜15%程度)
-
消化器症状
-
腹痛、吐き気、嘔吐
-
下痢、腹部膨満感
-
-
皮膚症状
-
顔や口の周りの発赤、じんましん
-
顔面や唇の軽度〜中等度の腫れ(血管性浮腫)
-
【重症例】(1〜3%程度)
-
呼吸器症状
-
喘鳴(ゼーゼー)、息切れ
-
喉頭浮腫による呼吸困難
-
-
循環器症状
-
血圧低下、動悸、めまい
-
-
アナフィラキシー
-
複数の臓器系(皮膚・呼吸器・循環器など)に及ぶ急激な症状
-
※アナフィラキシーは稀ですが、重症例では注意が必要です。
⑤バナナアレルギー診断法
診断には、主に以下の3つの方法が使われます。
・特異的IgE検査(血液検査)
・皮膚プリックテスト
・経口負荷試験(OFC)
特異的IgE検査は採血のことで、広く一般的に使用されます。
皮膚プリックテストはバナナエキスを皮膚に少量つけて反応を見る方法で、結果は即座に得られます。
経口負荷試験は、実際にバナナを食べてみて症状が出るか判定する最も信頼性が高い診断方法ですが、症状誘発のリスクがあります。
通常、医療機関でこれらの検査を組み合わせて総合的に診断を行います。
⑥治療法
バナナアレルギーは1歳までに治る例が多く、現時点で最も確実な予防法は、バナナを厳密に避けることです。
逆に、1歳を過ぎて治らなかった場合や1歳以降でなってしまったバナナアレルギーは治ることがありません。
重症の場合、エピネフリン自己注射薬(エピペン)の携帯が推奨されますが、通常は軽症で止まります。

