乳児湿疹 保湿しない方が良い?

札幌市南区のアレルギー科・小児科(アレルギー)のアルバアレルギークリニックです。
【質問】
赤ちゃんは保湿しないほうが良いと聞きました。本当ですか?
【答え】
ありえないです。
1)乳児湿疹は、保湿しないほうが良い?
ありえないです。
特にありえないのが、「生後~ヶ月までは保湿はいらない」、「乳児にはワセリンで保湿が良い」の2点です。
そもそも「生後~ヶ月まで保湿はいらない」は全くのデマで、その子その子でまったく状況が違います。我々アレルギー医が、一律に対応することはありません。
また、ワセリンは保湿作用はゼロ、つまり保湿剤ではないとゆうこと。さらには、べとつきが多いので子どもの体には使えません。
私が研修医と呼ばれていた15年くらい前には、すでに上司は使っていませんでした。
ワセリンは、よだれが多い子のかぶれ予防、おむつかぶれ予防に使います。
それ以外での使い道はあまりないのは、子どもの体に塗った日にはそれはもう
顔には保湿がいらないといわれることもあるようですが、ありえません。
生後3ヶ月までの口周囲の湿疹は、卵アレルギーと直結しているので、卵アレルギーになれと言ってるようなものです。
2)乾燥肌?乳児が?
乾燥肌は乳児では普通なので、保湿を使うと自力で保湿の成分を作れなくなると、いまだに言う方が世の中にはいるようです。
事実として、乾燥肌の時点で、皮膚のバリアー機能が異常になっていることが分かっています1)。
さらに、アトピー性皮膚炎は肌のバリアー機能が壊れた状態から始まることが分かっているので、乾燥肌はアトピー性皮膚炎のスタート状態にいるのと同じです。
「うちはよくなった、そのうちよくなる」と、いまだに話される方もいらっしゃるようですが、何もしないままに自力で回復するのを待つのは、治るかどうかの”賭け”。
賭けに負けた時のリスクが大きすぎて話にならない、と私は思います。
肌年齢のため、乾燥肌が気になってくるのは40代からではないでしょうか?
これは乳児じゃなくても同じです。
乾燥肌は痒みの原因になりますが2)、3歳児が乾燥肌で悩むでしょうか?
そもそも、子どもや何もない若い女性が乾燥肌で悩むことはありません。
乾燥肌で出血するまでかく?
ないです。
乾燥肌は湿疹が出る前の一番軽い症状なのです。
3)いつから保湿する?
乳児の場合は生後1週間以内、「湿疹が出る前」からです。
これは湿疹があってもなくても関係なく、予防として保湿をします。
アレルギー医がいる病院では、妊婦教室でアトピー性皮膚炎の話があります。病院からプレゼントする出産セットにも保湿剤が入っており、生後1週間以内から助産師の保湿指導があります。
出産後に落ち着いたら、病院にいる時から保湿を始めています。
また、保湿剤の塗布は生後1ヶ月の時点でのオムツかぶれと皮膚トラブルも低いことが分かっています3)
つまり、保湿を塗ってマイナスになることはありません。
対応が遅れた場合の典型例はこんな感じとゆうのをお話します。
「赤ちゃんの頃から肌荒れがひどく、小児科では乳児湿疹と言われるも悪くなるばかり。病院に行って、時々塗り薬を使っても現状維持が精一杯、乾燥肌の状態がづっと続いている。病院を変えて何度相談しても、肌を見てくれることもなく、これ以上やる事はないと言われ、帰ることを急かされる。
病院に通うたびに悲く、不安になる。
しばらくぶりに会った友人の子は、同じくらい肌が荒れていたのに、通っている病院で薬の塗り方と体の洗い方の説明を詳しく受けており、毎回肌を触って診察してもらっていた。
そのせいか、今は週1回だけ、お腹に軟膏を塗るだけでキレイな肌で痒みも無くなっており、来月からは保湿剤だけになるとゆう」
肌が心配になってきてからでも出来るだけ、早く対応しましょう。
4)なにで、保湿する?
保湿はローション、クリーム、軟膏がありますが、基本はセラミド入りのローションか軟膏があります。食物、植物配合のスキンケア製品は、配合されている成分にアレルギーを起こすようになるため使用できません。
また、皮膚が良くならないのに同じ方法を続けないこと。
保湿で良くならないのであれば、それはアトピー性皮膚炎として治療が必要です。
これは、予防的に保湿を塗布することは、アトピー性皮膚炎の予防、それに続く食物アレルギーの予防につながる可能性がある4)と言われているから。
肌荒れはアトピー性皮膚炎、そこからの食物アレルギーにつながるのです。
乳児湿疹は保湿しない方が良いなんて、30年前の話なのです。
【参考文献】
1)Infantie eczema pediatric and dermatology section. EAACI 2014
2)Hiroyuki Murota, etal. Allergology International 66; 8-13,2017.
3)Yonezawa. K, et al. J Dermato. 45(1):24-30, 2018.
4)Sayantani Sindher, etal. Pediatr Allergy Immunol.231(6):699-703, 2020.