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軽度のアナフィラキシー:治療

軽度のアナフィラキシー:治療

1)アナフィラキシーとは

アナフィラキシーとは、「アレルギー症状が急激に悪化し、命の危険性のある状態になっている」ことです。

つまり、「急激発症で、進行していく」+以下から2つ

①皮膚症状(腫脹、発赤、かゆみ、発疹など)

②呼吸器症状(鼻汁鼻閉感、呼吸苦、低酸素、stridorなど)

③消化器症状(腹痛、嘔吐、下痢など)

④sBP<90,平常時の30%以下(失神、痙攣を含む)

があれば、アナフィラキシーとなります。

ちなみに、全身の掻痒、発赤、血管浮腫(口唇腫脹など)は88%の人に見られ、ほとんどの場合には皮膚症状を伴います。

つまり、典型的なアナフィラキシーの症状としては「体が痒くて(もしくは真っ赤で)、咳が出ている」か「体が痒くて(もしくは真っ赤で)、おなかが痛い」のどちらかになります。

自宅では、血圧を測っている余裕はないので、現実的には皮膚、呼吸、お腹の3つのうち2つあればアナフィラキシーとなります。

2)アナフィラキシーには重症度がある

アナフィラキ―は図のように重症度が5段階に分かれ、一番軽いのが1で、重いのが5になります。

つまり、実際には典型的なアナフィラキシーの症状の「体が痒くて(もしくは真っ赤で)、咳が出ている」か「体が痒くて(もしくは真っ赤で)、おなかが痛い」が軽いか重いかだけであり、「アナフィラキシーっぽい」、「私はそう思わない」などでは決まりません。

アナフィラキシーも医学的なルールで決まるのです。

「喘息発作とアトピー性皮膚炎増悪が、たまたま絶妙のタイミングで、急速に同時に悪化した」などといったことは起きることはありません。

なぜ、アナフィラキシーだと判断しなければいけないかとゆうと「治療法が違うから」であり「アナフィラキシーは死ぬから」です。

3)アナフィラキシーで死亡する状況

アナフィキシ―では、呼吸かショックで死亡します。

呼吸の場合は、喉頭浮腫(息ができなくくらい、空気の通り道が腫れること。つまり窒息する)か呼吸不全(状態が悪すぎて呼吸ができなくなる)で死亡します。

ショックとは、心臓が生命を維持できる血液を送り出せなくなるくらい弱ることで、死に向かって急速に進んでいる状態です。

あくまでもイメージしやすいために表現しますが、子どもは大人と違います。徐々にバッテリーが切れてくる大人に対して、いきなり電源が切れるのが子どもです。

死亡するまでの時刻は、食物30分、ハチ15分、薬5分と言われるくらい本当に急速に進行するため、後ろを向いた瞬間に話していた子どもの呼吸が止まっていたなんてことにもなりかねないのです。

私がこれまでアナフィラキシーで心配停止になった方を担当したのは4人で、4人とも後遺症なく蘇生できました。2人は造影剤アレルギーで、2人は寒冷蕁麻疹でした。

アナフィラキシーで子どもがお別れしてしまうようなことは、日本全国で、特に私の周りでは絶対に起こさないと誓っています。

 

4)自宅での治療はこれ

重症度1なら抗アレルギー剤の内服で治まるかもしれません。2だと、抗アレルギー剤の内服だけだと治まるのに時間がかかり、中には3、4と進展していくこともあります。

ちなみに抗アレルギー剤の内服が効果があるのは、皮膚症状のみです。呼吸や腹痛には効果がない印象です。

さらにステロイドの内服は効果発現が遅すぎてやめた方がよいでしょう。

重症度3なら必ずエピペン。この場合、3の症状が一つでもあれば3と判定します。

心配なら、迷ううくらいならエピペンを使った方が良いです。

アナフィラキシーの治療の第一選択はエピペン(エピネフリン:エピペンの中身。病院で使うのはこれ)なので、重症度1で使っても大丈夫です。

つまり、重症度1までが抗アレルギー剤の内服、自宅で治療できる限界で、重症度2以上はエピペンを使用して、救急車で病院に受診するのが正しいやり方になります。

5)だから、これが必要です

①重症度は考えない

考えていてもわかりませんので、迷わなくても大丈夫です。

②救急搬送をためらわない

日本では無料です。特に子どもは急激に反応が進むので、ためらわないようにしましょう。

③迷ったらエピペン

第一選択の治療です。

【参考文献】

・A Muraro, etal. Anaphylaxis: guidelines from the European Academy of Allergy and Clinical Immunology. Allergy2014 Aug;69(8):1026-45.

・ Management of maternal anaphylaxis in pregnancy: a case report. Acute Med Surg. 10;4(2):202-204, 2016.

・札幌徳洲会病院アレルギー科を受診した成人アレルギー650例の検討. アレルギーの臨床. 40(3). 2020.   

・フキノトウでアナフィラキシーを起こした妊婦の1例. 産科と婦人科. 87(7).2020.

記事監修医師
続木 康信
                     

続木 康伸

岩手医大卒、蓮桜会理事長。医師・歯科医師のダブルライセンス。新生児から妊婦まで、人生を自由にするアルバアレルギークリニック院長 。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ」、東京MX「医史」出演。学研「保湿を変えればアトピーは治せる」著者。

【所属】
・日本花粉学会(評議員)・ヨーロッパアレルギー・臨床免疫学会・アメリカアレルギー・喘息・免疫学会・日本小児アレルギー学会
・抗原研究会・日本美容皮膚科学会・日本痤瘡研究会・日本脱毛学会・再生医療クロスボーダー協会・日本臨床カンナビノイド学会

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