「お肉、特に脂身を食べると調子が悪い」とお悩みの方へ

知っておきたい牛肉、鶏肉、豚肉アレルギーの最新知識
はじめに
「牛肉や脂身を食べた数時間後に、気持ちが悪くなる」、「お肉を食べると必ず下痢をしてしまう」そんな症状でお悩みではありませんか?「でも肉アレルギーなんて聞いたことないし、まさか自分が…」と半信半疑になっているかもしれませんね。
実はそのような症状を感じている方は決してあなただけではありません。
近年、肉類に対するアレルギー反応が世界的に注目されており、日本でも小学生以上で多くの方が同様の症状を経験していることが分かってきています。
お肉を食べた後の体調不良を「たまたまお腹の調子が悪かっただけ」と考えて見過ごしてしまわないことが大切です。
肉アレルギーは決して珍しい病気ではありません
実は、アジア圏でも肉アレルギーの報告は年々増加しています。
2025年のスリランカでの大規模調査では、急性アレルギー反応を起こした患者さんの1.9%がAlpha-gal症候群と診断され、食物アレルギー全体の23%を肉アレルギーが占めていることが判明しました。
スリランカの研究では、肉アレルギーは、57例中約66%が小児(12歳以下)で、中央値年齢は12歳と報告されています
一方、α-Gal症候群は全年齢層に発症し得ることが知られており、米国バージニア大学の解析では、35名の小児と225名の成人でα-Gal特異IgE陽性率が両群とも90%以上、年齢幅は5〜82歳にわたるとされています。
日本でも、今後さらに多くの症例が発見される可能性があります。
年齢層も幅広く、乳幼児から高齢者まで、どの年代でも発症する可能性があることが分かっています。
肉アレルギーは脂身から起きる?
もし症状が本当に肉アレルギーだった場合、そのまま放置していると思わぬリスクを抱えることになってしまいます。
肉アレルギーの中でも特に注意が必要なのが近年、牛・豚・羊などを食べてから数時間後にじんましんや腹痛、呼吸困難を起こす「Alpha-gal症候群(AGS)」と呼ばれるものです。
このアレルギーの原因として、脂肪組織に含まれるα-Galに対するアレルギーで、特に脂肪分の多い部位やソーセージなどの加工肉ではα-Gal含有量が高いため、反応が出やすいと報告されております。
また、脂肪分の多い牛肉や羊肉だけで症状を起こす方もいらっしゃいます。
実際は、脂身を食べると気分がわるいだけ
通常、肉類摂取後2〜6時間(稀に8時間)で
- 発疹・蕁麻疹
- 腹痛、嘔気
- 下痢
などが出現し、重症例ではアナフィラキシーに至ります。
おなかの不快感などや軽い蕁麻疹から始まって徐々に症状が悪化し、条件により重篤なアナフィラキシーショックを引き起こす可能性もありますとされています。
また、症状が食事の2〜6時間後に現れるという特徴があるため、「何が原因なのかわからない」まま症状に悩み続けてしまう方が多いのも問題です。
しかし、今の子供たちと研究結果と症状は大きく異なります。
ただし、現在小~高校生で圧倒的に多いのは、「食べてすぐに気持ちが悪くなる」即時型です。
特に脂肪分の多い部位やソーセージなどの加工肉ではまだ症状がましで、焼いた時より茹でた時のほうが症状は軽く済みます。
原因がわからないまま同じ食事を繰り返していると、知らず知らずのうちに症状を悪化させてしまうリスクもあります。
しかし、ほとんどの場合、「食べないので、気持ちが悪い以外の症状がない」ケースがほとんどです。
他の肉アレルギーとの違い
肉アレルギーには、Alpha-gal症候群以外にもいくつかのタイプがあります。
それぞれメカニズムが異なるため、適切に区別することが大切です。
鶏肉アレルギーの場合:
- 鳥類特有のアレルゲン(Gal d 5、Gal d 7など)に対する反応
- α-Galは含まれないため、Alpha-gal症候群とは別の病気
- 卵アレルギーと関連することが多い(bird-egg syndrome)
- 七面鳥やガチョウなど他の家禽肉との交差反応あり
- 一部では魚アレルギーを併発することもある
牛肉アレルギーの場合:
- 主に牛血清アルブミン(Bos d 6)への反応
- 牛乳アレルギー患者の40〜60%が牛肉でも症状を示す
- 豚肉や羊肉との交差反応が高い
- 猫アレルギーに伴う「pork-cat syndrome」との関連もある
このように、肉アレルギーといってもその原因やメカニズムは多様です。
正確な診断を受けることで、どの肉を避けるべきか、どの程度の注意が必要かを適切に判断できるようになります。
【参照文献】
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