サクランボで口がピリピリ…それって単なる好き嫌いじゃない!?意外と知らない「サクランボアレルギー」の正体

「あれ?なんだか口の中がピリピリする…」
サクランボを食べた後、そんな違和感を覚えたことはありませんか?
「きっと酸っぱかっただけ」「単なる好き嫌いでしょ」
そう思って見過ごしているその症状、実はサクランボアレルギーの初期サインかもしれません。
「え、サクランボにもアレルギーがあるの?」と驚かれる方も多いでしょう。
実は、私たちのもとには、「まさかサクランボが原因だったなんて…」という患者さんが年々増えているんです。
この記事を読み終わる頃には、あなたやご家族の「ちょっとした違和感」の正体がはっきりし、今後どう対処すべきかを理解しましょう。
「ただの好き嫌い」だと思っていませんか?そこに潜む危険なワナ
多くの人が見逃している「サクランボアレルギー」の初期サイン
「うちの子、サクランボだけは絶対に食べたがらないの」 「サクランボを食べると、なんとなく口の中がムズムズする」 「サクランボを食べた後、なぜか唇が腫れぼったくなる」
こんな経験、ありませんか?
多くの人は、これらの症状を「単なる好き嫌い」や「たまたまの体調不良」だと片付けてしまいます。
でも実は、これらすべてがサクランボアレルギーの典型的な初期症状なんです。
口の中がかゆいだけじゃない
「ちょっとかゆいくらいだから大丈夫」
そう思っていた患者さんが、ある日突然、全身にじんましんが出て息苦しくなった――。
私たちが診療現場でよく見るケースです。
多くの方は「アレルギー=卵や牛乳のように小さい頃から発症するもの」と考えがちです。ところが、さくらんぼアレルギーは大人になってから突然出てきます。
しかもこのサクランボアレルギー、軽い口の症状だけで終わる人もいれば、全身に強い反応を起こす人もいます。
「最初は軽い症状でも、放置すると重篤化する可能性がある」ということです。
今日は「ちょっと口がピリピリする程度」だった症状が、数ヶ月後、数年後には:
- 呼吸困難
- 全身の蕁麻疹
- アナフィラキシーショック
など、強い症状に発展することもあります。
悪化する人としない人の背景には、
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白樺などの花粉症との関連
-
加熱しても壊れにくい“強いアレルゲン”の存在
が関わっています。
つまり「口のかゆみだけ」と油断していると、知らないうちに重症型へ移行する人がいるのです。
なぜサクランボでアレルギーが起こるのか?
実は「花粉症」が関係していた!
サクランボアレルギーの真の原因は、実は「花粉」にあったんです。
「え?サクランボなのに花粉?」
そう思われるのも当然です。
シラカンバやハンノキなどの花粉に含まれる「Bet v 1」という物質と、サクランボに含まれる「Pru av 1」という物質が、非常によく似ているんです。
つまり、花粉症の人の体は、サクランボを「花粉だ!」と勘違いして攻撃してしまうわけです。
「花粉-食物アレルギー症候群」という現代病
この現象は「PFAS(花粉-食物アレルギー症候群)」と呼ばれ、近年急増している現代病の一つですが、シラカバの多い北海道では、風土病です。
日本の小学生の約1%、中学生の約3%が、すでにサクランボを含むバラ科果物のアレルギーを持っているとも言われています。
「昔はこんなにアレルギーの子はいなかった」
そう感じている方も多いでしょう。実際、環境の変化や食生活の変化により、このタイプのアレルギーは確実に増加しているのが現実です。
医者向けの話
さくらんぼアレルギーを理解するカギは、どの成分に反応しているかにあります。
Pru av 1(PR-10)
白樺花粉と似た構造。加熱に弱く、症状は口の中のかゆみ程度で済むことが多い。
Pru av 3(LTP)
熱にも消化にも強く、じんましん・呼吸困難・アナフィラキシーを起こすことも。
Pru av 4(プロフィリン)
広範囲の花粉と交差。軽症で済むが、他の果物や野菜にも反応が出やすい。
つまり、同じ「さくらんぼアレルギー」でも、体の中で起きている仕組みは人によって全く違うのです。
解決策:検査で「自分のタイプ」を知ること
当院に来られる患者さんには、まず次のようなプロセスを行います。
詳しい問診
・「いつ」「どんな状態で」「どんな症状が出たか」
・花粉症や他の果物アレルギーの有無
・運動や飲酒、薬の服用など症状を悪化させる要因
血液検査
・さくらんぼは検査できないので、関連した花粉、そのほかの果物を血液で測定
成分特異的診断(CRD):日本では不可
・「Pru av 1」「Pru av 3」「Pru av 4」のどれに反応しているかを特定
・重症化リスクを正確に判断
これにより、「加熱すれば食べられる人」と、「加熱しても危険な人」を見分けられます。
当院と他院との違い
唯一根治ができる免疫療法ができることになります。
①シラカバ免疫療法
日本と北朝鮮だけは花粉に対する免疫療法ができませんが、日本以外の国では一般的です。
当院ではアメリカから薬を輸入して治療を行っており、この免疫療法だけが唯一花粉症を根治、果物野菜アレルギーを治す可能性がある治療になります。
②そのほかの治療方法は除去
食べなければ症状がでませんので、食べないことが治療になります。
具体的な事例
ケース①:30代女性・口のかゆみだけ
白樺花粉症あり。さくらんぼを食べると口がピリピリするが、ジャムや缶詰は問題なし。
→ たぶんPru av 1陽性の花粉症に伴う軽症タイプ。花粉症治療の一環で舌下免疫療法を始めたところ、口の症状も軽くなった。
ケース②:高校生男子・アナフィラキシー
部活後に生のさくらんぼを食べたら、全身じんましんと呼吸困難。救急搬送。
→ たぶんLTP型。加熱しても危険なため完全除去を指導。エピペンを携帯。
これらの例からも、同じ果物でもタイプにより対応が全く違うことがわかります。
今すぐできる行動:あなたの健康を守るための第一歩
もし、この記事を読んで「もしかして自分も…」「うちの子も…」と思い当たることがあったなら、今すぐ行動を起こしてください。
検査を受けるべき症状チェックリスト
以下の項目に一つでも当てはまる方は、ぜひ詳しい検査を受けることをお勧めします:
✅ サクランボを食べると口の中がピリピリ・ムズムズする ✅ サクランボを食べた後、唇や舌が腫れることがある
✅ 花粉症がある ✅ 他の果物(リンゴ、桃など)でも似たような症状がある ✅ 家族にアレルギーの人がいる ✅ 子どもがサクランボを異常に嫌がる
「果物アレルギーは軽いもの」と思われがちですが、命に関わる可能性があることを知っていただければと思います。
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