乳児湿疹 冬におすすめの保湿
1)乳児湿疹とは
乳児湿疹とは、「赤ちゃんにできた湿疹」のことです。
つまり、原因が何かは関係なく全て乳児湿疹と呼ばれます。
この場合の乳児湿疹とは、明らかにボツボツ出ている、赤い、ザラついているなどを含みます。
生後1ヶ月の新生児に多い皮膚トラブルは、乳児湿疹 29%ですが、この半分はアトピー性皮膚炎の初期症状と言われています。特に湿疹が顔から始まり、体に広がるなど典型的な部位と経過、または出血するくらいかゆみが強い場合はアトピー性皮膚炎の可能性が高いと言われています。
実際の現場でもその通りで、急激に広がってくる場合にはほぼアトピー性皮膚炎と考えて対処しないと、出遅れます。
つまり、典型的な子は軽症アトピー性皮膚炎との単なる肌がデリケートな子との鑑別はできないので、保湿だけでは無理。
アトピー性皮膚炎と治療方法は区別しないのが正解になります。
また、乾燥肌はすでに皮膚バリア機能が異常の状態で、アレルギーの始まりとも言われています。
なので、乾燥が続いているのに無理に区別して保湿だけ塗るのは、「ギャンブルで賭ける」のと同じ。
賭けに負けた時のダメージが大きく、お勧めはできません。
2)保湿剤の選び方
乳児湿疹がある子は、アトピー性皮膚炎の可能性を念頭に入れて保湿を選びます。
保湿剤は、大まかに化粧水、ローション、クリーム、軟膏に分けられます。
これらは基本的な成分は同じで、製品によって、配合する成分の機能を期待した「機能成分」か、配合量は少なくても配合したことでイメージをよくする「イメージ成分」が加えられます。
なので、製品の基本としては「水分成分が多いか油分成分が多いかの違い」と考えるとわかりやすいでしょう。
この中で、乳児、特に湿疹がある場合には化粧水は保湿成分が少なすぎて使えません。
ローション:新生児で肌が荒れる前の予防(夏、親と兄弟にアレルギーなしの時)
クリームと軟膏:肌が怪しくなったら(親と兄弟にアレルギーありの時は、東北より北では季節は関係なし)
製品としては、肌バリアを回復させるセラミド入りのものを選びます。
もちろん、最初からクリームタイプを使っても問題はありません。
3)冬の乳児におすすめの保湿剤
冬は乾燥しているので水分を入れたくなりますが、油分成分の多いクリームか軟膏を選びます。
特に乳児湿疹と言われている子は、ローションでは間に合わないため、軟膏タイプ一択と考えても良いです。
化粧水だけを使うと、油分成分が少ないので、すぐに肌が乾燥してしまい、逆に反動で乾燥が強く、肌が荒れる感じがすることもあります。保湿効果は期待できません。
化粧水を塗ってから、軟膏やクリームを塗ることも可能ですが、1種類で間に合わないのであれば、それは保湿だけなんとかなる域を超えているとゆうことです。
目的は「塗ること」ではなく、肌を回復させること。
特に肌を回復させる「セラミド」が入ったものをつかいましょう。
その子、その子にあったタイプの製品を使います。
4)乳児湿疹の子に使ってはダメな製品
「フォーム製剤(泡)」、「食物・植物成分が入っている製品」は絶対だめです。
フォーム製剤(泡)のものは水分成分が多く、使い心地や効果は化粧水に近いです。特に保湿力を必要とする冬は、保湿力が足りないので効果は見込めません。
また、食物・植物成分入りのものは、荒れた肌に使うとその成分のアレルギーになるリスクが高い(なる確率がはね上がる)です。
イギリスでは以前伝統的にピーナッツオイルで乳児の保湿を行っていた時に、イギリスに移住してきた中東系の子ども達にピーナッツアレルギーが少なく、イギリス人には多いことに気が付いた医師が、肌から吸収する成分が一番アレルギーを起こし、食べるとアレルギーになりにくいことを発見したことから始まります。
日本では含有している小麦のアレルギーを引き起こし、運動誘発アナフィラキシーの患者を大量に引き起こした「茶のしずく石鹸」やスキンケア製品に含まれているアーモンドオイルによるアーモンドアレルギー、魚を扱う職業についている方の手荒れからの魚アレルギーなど、多くの報告がなされています。
花粉症である私も、植物成分が入った保湿はかゆみが出て使えません。
保湿剤を選ぶときは、「塗りごこちや塗りやす」さ、「なんとなくオーガニックでよさそう」で決めると失敗します。
5)ポイントは、湿疹が出る前から使う
①保湿は湿疹が出る前から
アレルギー医がいる病院では、妊婦教室の時からスキンケアの話があります。病院からプレゼントされる出産セットに保湿剤が入っていることもあります。
生後1週間以内から湿疹があってもなくてもローションを使用するのが良いです。
②早めに治療に切り替える
良くならないなら、それはアトピー性皮膚炎の可能性が高いです。
③セラミド入りを使う
セラミドは肌を回復させる成分で、これ一択です。
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