大人の卵アレルギーにお悩みの方へ:症状・対

卵を食べると何だか体調が悪い…でも原因が分からない。
大人になってからこんな経験をすると、不安になりますよね。
もしかして卵アレルギー? 突然アレルギー症状が出ると「どうして今さら?」と戸惑い、次にまた起こるかもしれないと心配になるものです。
さらに、もし本当に卵が食べられなくなったら食生活はどう変わるだろう…と悩む方も多いでしょう。
実はアレルギーは子どもだけのものではなく、大人になってから発症するケースもあります。
今回は、大人の卵アレルギーについて症状や対処法を分かりやすくご紹介します。
大人の卵アレルギー
成人の卵アレルギーの有病率は、世界全体で見ると非常に低く(約0.1~0.2%)と推定されています
。多くの子供は思春期までに卵アレルギーを克服するため、成人まで残る例が少ないのが理由です。そのため欧米の調査では、成人の食物アレルギー患者に占める卵アレルギーの割合は小児より著しく低くなります。たとえばイタリアの大規模アナフィラキシー症例登録では、小児の重度食物アレルギー原因の16%が卵でしたが、成人では卵は上位原因に挙がらない(5%未満)ことが示されています
このように成人の卵アレルギーはまれであり、代わりにナッツ類や果物野菜、甲殻類アレルギーが成人期の主要な問題となっています。
卵アレルギーの症状は?
まず、卵アレルギーでは具体的にどんな症状が現れるのでしょうか?
個人差はありますが、軽い症状から重い症状までさまざまです。
以下のような症状が食後数分~数時間以内に起こる場合、卵アレルギーの可能性があります。
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皮膚の症状(かゆみ、赤み、ブツブツ、腫れ): じんましん(蕁麻疹)や紅斑、口周囲の発疹、唇や瞼の腫れ(血管浮腫)が成人卵アレルギーで最もよく見られる症状です。研究でも、卵アレルギー患者では皮膚症状が高頻度で認められており、ほぼ全例(約95%)で皮膚症状がみられるとの報告もあります。慢性的な湿疹(アトピー性皮膚炎)を持つ患者では、卵摂取により湿疹が悪化することもありますが、急性の蕁麻疹・発赤が典型的です。
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呼吸の症状(くしゃみ、鼻水、咳、息苦しさ): 鼻がムズムズして花粉症のようなくしゃみ・鼻水が出たり、咳き込んだりします。喉がイガイガして違和感を覚えることや、喉や気管支が腫れて息苦しくなる場合もあります。卵を食べた直後に口の中や喉がかゆく感じたり、声がかすれるような症状が出る人もいます。
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お腹の症状(吐き気、下痢、腹痛): 卵アレルギーでは消化管にも症状が現れることがあります。典型的には口腔内のかゆみ(口腔アレルギー症候群的な症状)や吐き気、腹痛、嘔吐、下痢などです。成人では小児に比べ消化器症状の頻度はやや低い傾向があり、重度反応時の消化器症状は成人で約3割、児童では約4割との比較データがあります。ある研究でも、21.7%の患者に吐き気・嘔吐・腹痛など消化器症状が見られたと報告されています
不快感や嘔吐は成人でも無視できない症状ですが、皮膚・呼吸器症状に比べると出現頻度はやや低い場合があります。
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全身の重い症状(血の気が引く、気を失いそうになる、体全体に影響が出る): アレルギー反応が強い場合、全身に症状が及ぶことがあります。急に血の気が引いて顔色が真っ青になったり、心臓がドキドキして意識がもうろうとすることもあります。最も重い場合には命に関わる危険な状態になることもあり、この場合はすぐに医療機関で手当てを受ける必要があります。卵アレルギーだからといって必ず重症になるわけではありませんが、自分の症状のパターンを知っておくことが大切です。
大人の場合、これらの症状が出ても卵が原因だと気づきにくいことがあります。
子どもの頃は平気だった食べ物でまさかアレルギーが起きるとは思わず、「たまたま体調が悪かっただけかな?」と見過ごしてしまうこともあるでしょう。
しかし自己判断で「大丈夫だろう」と放置するのは危険です。
最初は軽い症状でも、ある日突然重い症状が出る可能性もあります。
卵を食べるたびに体調不良を感じる場合は、早めに対策することが大切です。
どんな人がなりやすいの?
卵アレルギーは誰でもなる可能性がありますが、アレルギー体質の人は特に注意が必要です。
小さい頃にアトピー性皮膚炎やぜんそく、花粉症などを持っていた方は、大人になってから新たに食物アレルギー(卵に限らず)を発症しやすい傾向があります。
逆に、それまで全くアレルギー症状がなかった人でも、ストレスや体調不良をきっかけに突然アレルギー体質に変わることもあります。
「自分は平気」と思っていても、大人になってから体質が変わる可能性はゼロではありません。したがって、日頃から自分の体の反応に注意し、少しでも「あれ、おかしいな?」と感じたら無理せず対策をとることが大切です。
卵アレルギーと上手に付き合うために
疑わしい症状があれば、まず正しい診断を受けることが重要です。
アレルギーかどうかをきちんと調べることで、適切な対処法がとれます。
医療機関では問診のほか、血液検査などで卵に対する抗体の有無や量を調べ、卵アレルギーかどうか診断できます。
自己判断で卵を避けすぎて必要な栄養まで不足させてしまったり、逆にアレルギーを見逃して食べ続けてしまったりしないよう、専門家による診断を受けておきましょう。
もし食べてしまったら?
うっかり卵入りの食品を食べてしまった場合、まずは落ち着いて自分の症状を確認しましょう。
口の中が少しイガイガする程度だったり、肌が少しかゆい程度であれば、コップ一杯の水をゆっくり飲んだりして様子を見る方法もあります。
手元に市販のアレルギー薬があれば服用すると症状が軽くなることもあります。
ただし、時間が経つにつれてかゆい発疹(じんましん)が全身に広がってきたり、激しい吐き気や腹痛が出てきた場合は要注意です。
無理をせず、病院を受診しましょう。
日常生活での工夫
卵アレルギーと診断された場合でも、工夫次第でこれまで通り安心して食事を楽しむことができます。
例えば次のような対処法があります。
- 卵の代替食品を活用する: 卵の代わりになる食材や市販の代替製品を使ってみましょう。料理やお菓子作りでは、豆腐やバナナ、じゃがいもデンプンをつなぎに使う、卵不使用のマヨネーズやドレッシングを利用するといった方法があります。最近はアレルギー対応の食品も増えているので上手に取り入れてみてください。
- 加工食品の成分表示を確認する: 思わぬ食品に卵が含まれていることがあります。パンや麺類、お菓子、練り製品などの原材料表示を購入前にチェックする習慣をつけましょう。「卵」「卵由来」「卵黄粉」といった表示がないか確認することで、卵の摂取を防ぐことができます。
- 外食時は遠慮なく伝える: レストランやカフェで食事をするときは、事前に卵アレルギーがあることを伝えましょう。卵を使わないメニューを案内してもらえたり、料理から卵を抜く対応をしてもらえたりする場合もあります。「言いづらい」と感じる必要はありません。安全に食事を楽しむために、遠慮せずお店の方に伝えてください。
- アレルギー検査で原因を正確に特定: 血液検査などで卵アレルギーの有無や重症度を調べます。「実は卵ではなく他の食材が原因だった」というケースもあり得ますので、原因をはっきりさせておくことは安心につながります。
- 栄養士による食事指導: 卵を除去する場合、代わりにどんな食材で栄養を補えば良いかなど、管理栄養士が具体的にアドバイスします。卵抜きでも美味しくバランスの良い食事が続けられるよう、レシピや食品選びのコツをお教えします。
- 治療と緊急時の備え: 症状に応じて抗ヒスタミン薬など必要なお薬を処方することができます。また、万一重いアレルギー症状(アナフィラキシー)が起きたときのためのエピペン(自己注射薬)の使い方指導や、今後のフォローアップ体制も整えています。
このように専門家の手を借りることで、卵アレルギーがあっても無理なく日常生活を送ることが可能になります。自分だけで対処法を模索するより、プロの力を活用した方が安心ですし、症状悪化の防止にもつながります。
卵アレルギーは一人で抱え込まずにご相談ください
卵アレルギーかもしれない、と感じたら自分だけで抱え込まず専門家に相談することが大切です。
適切な診断とサポートを受ければ、「卵をうっかり食べてしまったらどうしよう」「外食が怖い」といった不安も次第に和らぎます。
卵アレルギーがあっても、正しい知識と対策があれば安心して生活を送ることができます。

