妊娠中の気管支喘息発作は胎児にダメージがある
妊娠中に気管支喘息発作を起こして入院すると、酸素マスクを常につけ、点滴につながれた。
お腹の赤ちゃんの超音波検査を行い、お腹に装置をつけることになった。
アレルギー医と産婦人科医から母親が今後はがっちり治療しなければいけないこと、赤ちゃんへの影響は現時点では大丈夫そうだが、今後の様子を含めて見ていかなければがどんな合併症があるかわからないと言われた。病室にいると怖くなり、夜中にずっと泣いてしまった。
1.妊娠中の気管支喘息
妊娠中の気管支喘息の状態が悪いと、赤ちゃんに流産や合併症として影響が出ます。
- 胎児死亡
- 低出生体重児
- 早流産
- 先天奇形
さらに、妊娠中にひどい気管支喘息発作を起こすと、母親の酸素が低くなりますが、胎赤ちゃんはもっと苦しくなります。
このことは、母親の酸欠(低酸素血症)は、赤ちゃんにも同じことを引き起こし、赤ちゃんの脳に大きなダメージを与え、元にもどりません。
胎児死亡につながる可能性も十二分にあります。
2.アレルギーも遺伝しやすくなる
具体的には、母親の妊娠中の気管支喘息症状や重症度は、生まれてくる子どもの気管支喘息の発症と相関しています。また、妊娠中のアレルギー性鼻炎症状は、子どものアレルギー性鼻炎の発症と相関するとの報告されています。
アレルギーに対する薬は妊娠初期に大量に使用すれば、口蓋裂、口唇裂、低出生体重児などのリスク(なるわけではない)となりますが、通常使用量であれば問題はありません。
つまり、合併症や遺伝から見ても、妊娠中はアレルギー症状を出ないようにしておくことの方が重要で、大きなアレルギー症状を起こして胎児にダメージがあれば、そのダメージは「後遺症」として元に戻れません。
しかしも、病院に来た時に母親が症状を長く放置していれば、その症状を収めるために薬の量を多く、強く使用しなければなりません。
母親が苦しければ、赤ちゃんはもっと苦しいのです。
これを防ぐには妊娠前から治療して、最小限の薬で無症状もしくは薬が不要な状態にしておくこと。
ぜひ、妊娠前からアレルギー症状を安定させ、安全に出産、お子さんにアレルギーを遺伝させないようにしましょう。
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