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薬物アレルギーと副作用

薬物アレルギーと副作用

いつもカゼの時にはクリニックで、抗生剤をもらっていた。

いつもと同じように抗生剤をもらい飲んだだけなのに、全身に蕁麻疹が出て、呼吸が苦しくなって動けなくなり、救急車で運ばれた。受診した病院で、注射で治療し、呼吸が苦しいのは取れたが蕁麻疹は残り、翌日にかかりつけに行くように言われた。

いつものクリニックに行ったが、抗生剤が原因ではないと言われ、抗アレルギー剤をもらったが、蕁麻疹は良くなることはなく、さらに悪化した。

蕁麻疹がひどく眠れないため、違う病院を受診したら、熱も出ていたので入院となった。蕁麻疹は良くはなるものの完全に治まらず。数日後に、これ以上やることはないと言われ、苦しくなったら救急車を呼ぶようにと言われただけで退院になった。

もう1ヶ月以上蕁麻疹は消えないし、痒い。日常生活をどうして良いかわからず、これから治るのか、ずっとこのままなのか常に不安。

1)薬アレルギーは完全に体質

薬アレルギーは、量を飲んだから、長い日数飲み続けたからとゆうよりは、完全に体質で発症します。

もちろん、注射で一気に多くの量が体内に入れば、症状は早くひどく出ます。

しかし、例えば「1日3錠飲んだ」などは、一見関係ありそうな気がしますが、実は関係ありません。

そして、アレルギーを数多く持っているアレルギー体質の方は、もちろん薬物アレルギーを起こしやすいですが、「これまでアレルギーは一つもない」とゆう方の方が多い印象があります。

全ての薬はアレルギーと副作用を起こしますが、アレルギーで圧倒的に多いのは、抗生剤と鎮痛剤です。

また、漢方だから安全だと思われている方が多いようですが、私のとろに受診される漢方でアレルギーを起こされる方は少なくありません。

印象的にはブクリョウが原因のことが多いです。

2)症状は蕁麻疹だけではない

薬物アレルギーはいつでも起きる可能性があり、「いつも飲んでいるからこの薬は大丈夫」は通用しません。

つまり、「今までは大丈夫だった」は副作用だとしてもアレルギーだとしても通用しないのです。

特に鎮痛剤、抗生剤は日本では汎用されますが、いったん薬アレルギーになると症状がひどくなりやすいこともあり、注意が必要です。

一般的に薬アレルギーと言われると、蕁麻疹を想像される方も多いですが、蕁麻疹だけではありません。

顔面腫脹、呼吸苦、喘鳴、腹痛が主な症状ですが、体内に薬が入る前に当事者が「ヤバい」間隔がわかることも多いです。

口に入れた瞬間に毒を飲んだとわかる、舌に触れた時に髪の毛の先までしびれた、薬の封を開けた瞬間に全身が痒くなった、点滴につながれる前に非常に嫌な感じがして看護師になんの薬か再確認したなど、薬の投与前や投与直後に異変を感じる方も少なくありません。

3)「副作用」でも「アレルギー」でも、当事者には関係ない

じつは、副作用だとしても薬物アレルギーだとしても、関係があるのは医者であって、当事者には関係ありません。

どちらにしろ、その薬は今後は飲めないので、違う薬を使えばよいからです。

幸い、日本にはやたらめったら使える薬があるので、困ることはありません。

一方、医者側には関係あります。

鎮痛剤、抗生剤、抗てんかん薬に関しては、どの薬を代わりに使えば良いかを、今後のためにはっきりさせておく必要があるからです。

薬には数多くの類似作用をもつ仲間もしくは同じ成分でも会社が違うだけの「~系」と言われるグループがあります(下図参照)。アレルギーの場合には、研究の結果ある程度はわかっているものの、グループ丸ごとダメな場合が数多くあり、このグループは全部ダメなのか、他のグループは大丈夫なのかを確認する必要があります。

副作用の場合には、該当する薬だけがダメなので種類を変えれば問題ありませんが、一般的には全く別のグループを使うことになります。

薬物アレルギーの検査が出来るような医者は、診察までに3~6ヶ月待ちが普通です。特に抗がん剤は、検査結果を待てないことが多く、検査せずに代替え薬になることが多いです。

また、薬物アレルギーで蕁麻疹が出た場合、初期に適切な治療に至らなかったために、蕁麻疹だけが重症化して残ることがあります。

難治性の蕁麻疹として、治療に慣れた医師を探す必要があります。

4)現に、薬アレルギーは死ぬ確率が高いです

「食物30分、ハチ15分、薬5分」

これは、アレルギーでアナフィラキシ―になり、心臓が止まるまでの時間を表したものです。

私は上記全ての経験がありますが、CT検査の時に使用する造影剤(内臓の病気を見えやすくする)は、経験的にもっとも死亡する可能性が高いアレルギーになります。

私もこれまで心肺停止(心臓が止まった)の治療応援を頼まれた経験が数人ありますが、ほとんどの場合には造影剤の注入直後ではなく、CT撮影して病室に帰る途中で心臓が止まります。全身に蕁麻疹が出た時には、すでに意識はなく、心臓が止まっていることが多いです。このくらい、心臓が止まるまでは早いです。

日本では年間70~90人ほどが薬物アレルギーで死亡しており、ほとんどが高齢者だと報告されています。

また、注意しなければいけない状況として歯科治療時の局所麻酔薬、整形外科での鎮痛剤と抗生剤、産婦人科での抗生剤があります。

歯科医師が気が付いた時には、歯科ユニットで意識を失っていたり、痙攣していたりしていることも少なくありませんが、慣れている我々と違い歯科クリニックでの内科的対応は難しいと言わざるおえないでしょう。

また、整形外科の場合には、鎮痛剤や抗生剤は手術の際に治療と直結しているので、薬物アレルギーを起こした場合には、術後の経過と治療の結果が大きく変わる、つまり治療に難渋するために、大変な場合が多くなります。

産科では、母親の抗生剤アレルギーにより胎児死亡例もあり、非常に注意が必要な状態です。

また、薬物アレルギーはスティーブンスジョンソン症候群/TENと呼ばれる最重症型になることがあります。

この状態になると、経験している医師が少ないため、対応が遅れる場合も多くあります。

高熱、全身の皮膚がむけ、助かっても対応が遅れれば失明の可能性がある状態になります。多くの場合には集中治療室に入ることになります。

無い状況ですが、副作用でも飲み続ければ、代謝をつかどる肝臓が働かなくなり死亡します。

5)その薬、飲む必要あります?

そもそも、薬物アレルギーは飲まなければ起こすことはありません。

「念のため」、「心配だから」と言った理由で薬を飲むのはやめましょう。

そもそも、~酸のサプリを飲むより、余計な薬を飲まない事の方が重要です。

自分の身は自分で守る必要があるのです。

①いまどき、カゼで抗生剤を飲む?

カゼに抗生剤は意味がありません。余計な薬は飲まないのが一番です。

②アレルギー検査を後回しにすると苦労する

薬物アレルギーも、採血ではわかりません(アレルギー医が行うBAT:好酸球刺激試験は別)。

多くの場合、入院して皮膚テスト、点滴をつなぎながら実際に少量づつ投与してみる負荷試験が必要です。

が、20%程度の人は「入院するとは思わなかった」と検査を考えると言って帰りますが、1年以内に再度検査を求めて受診されることが多いです。

つまり、再受診までは「薬を使う必要があったけど、使えないので我慢していた」状態になります。

薬物アレルギーで、専門に紹介される時には、理由があって使える薬を探している場合がほとんどなのです。

記事監修医師
続木 康信
                     

続木 康伸

岩手医大卒、蓮桜会理事長。医師・歯科医師のダブルライセンス。新生児から妊婦まで、人生を自由にするアルバアレルギークリニック院長 。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ」、東京MX「医史」出演。学研「保湿を変えればアトピーは治せる」著者。

【所属】
・日本花粉学会(評議員)・ヨーロッパアレルギー・臨床免疫学会・アメリカアレルギー・喘息・免疫学会・日本小児アレルギー学会
・抗原研究会・日本美容皮膚科学会・日本痤瘡研究会・日本脱毛学会・再生医療クロスボーダー協会・日本臨床カンナビノイド学会

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