アトピー性皮膚炎と腸内細菌の整え方
札幌市南区のアレルギー科・小児科(アレルギー)のアルバアレルギークリニックです。
現在、アレルギーは予防できるものがあります。
アレルギー医は妊娠中、私たちは妊娠前からお子さんにアレルギーが遺伝しないように治療を始めています。
色々な研究が行われた結果、良い結果が出たのは、アトピー性皮膚炎予防と花粉症の治療に良い結果がでています。
特に、「妊娠後期から乳酸菌を摂取すると、子どものアトピー性皮膚炎の発症予防には効果あり」とわかっています。
花粉症の場合には、予防効果はないことがわかりましたが、症状を軽くする効果については、特定の人にはあることがわかりました。
アレルギーになるかどうかは、父母の体質、その子の本当の体質、生活環境など様々な要因を受けます。
色々なことを組みあわせて、予防できる病気は予防し、病院にかからなくても良い体質を目指すことが大切です。
今回は腸内細菌とアレルギーについて、考えてみます。
1.ちなみに、腸内細菌とは
腸内細菌とは腸の中にいる細菌のことで、1000種類ほどいます。
この細菌は、善玉菌とか悪玉菌とかに分けられることもありますが、個人個人で様々に組み合わさっています。
腸内細菌の構成は、個人、人種、住んでる地域などで大きな差があり、食生活、年齢などの環境要因でも大きく変化します。
1.腸内細菌は母の膣内、腸内、口腔内の影響を受ける。
2.腸内細菌のメンバーは、乳児期の早くに決定する。
3.腸内細菌のメンバー変更は出来ないが、善玉菌の数は増やせる。
乳児期以降に飲んだ乳酸菌は生着はしないものの、腸の中で能力を発揮している可能性が言われています。
つまり、妊娠前からでも赤ちゃんのために腸内細菌を整える必要があるんです。
2.アレルギーと腸内環境との関係
アレルギー児(特にアトピー性皮膚炎児)では悪玉菌の割合が多いことが分かっています。
例えば、牛乳アレルギー児やスギ花粉症患者でも、悪玉菌が増加しており、善玉菌が減る、悪玉菌が増えることがアレルギー発症に関与している可能性が言われています
特にアトピー性皮膚炎児では悪玉菌の割合が多い
治療すると善玉菌が増える
善玉菌が減る、悪玉菌が増えることが悪そう
つまり、「善玉菌を増やす」と、よさそうな気がしてきます。
3.腸内細菌を整えてアトピーの予防
腸内細菌を整えることについて、色々な研究が行われた結果、良い結果が出たのは、アトピー性皮膚炎予防でした。
「妊娠後期から乳酸菌を摂取すると、子どものアトピー性皮膚炎の発症予防には効果あり」と複数の研究で結果がでています。
・妊娠後期~授乳中での複数のプロバイオティクスを飲むことで、アトピー性皮膚炎の発症率を抑制できた
Zuccolif, et all.Allergy , 2015
・帝王切開予定の妊婦にラクトバシラスを投与したところ、児のアトピー性皮膚炎を50%抑制できた
Pelzer , et al. Plcenta 54; 30-37, 2017
・妊娠最終2週間~生後3ヶ月までのラクトバシラス摂取で、アトピー性皮膚炎の発症を20~24%抑制できた
Baquerizo, et al. J Am Acad Dermatol. 71; 814-821, 2014
簡単にいうと、「ヨーグルトを食べた母親では、生まれたお子さんの約半数でアトピー性皮膚炎を予防できた」とゆうことです。
4.乳酸菌は予防効果がある。ただし、条件あり
じつは、1種類の乳酸菌だけを摂取していても腸内細菌は整えられません。
通常アレルギー医のところに通院している方であれば、妊娠後期から乳酸菌摂取、新生児から湿疹があってもなくても保湿をすることについて説明があります。
妊娠後期から乳酸菌摂取とは、腸管の善玉菌を増やす目的で、ヨーグルト(ビフィズス菌)を食べるのが簡単です。
腸内細菌でアトピー性皮膚炎の予防効果を得るための条件は2つで、
「複数種類を日替わりで摂ること」
「妊娠後期(当院では30週)~授乳中も摂取すること」
です。
これを、自宅で行うとゆうことは
1.母親の腸内細菌叢ケア
2.妊娠中の口腔内ケア
3.善玉菌である乳酸菌のエサとなる食物を増やす
の、3つです。
アトピー性皮膚炎になってしまってからも腸内細菌に注目するのは、「自分の内側に意識が向けること」につながります。
5.だからこれが必要です
①母親が出きることは?
「色々な市販品のヨーグルトやヤクルトを日替わりで食べること」
「食物繊維をとること」
「善玉菌のエサになるバナナ、オートミール、オリゴ糖が良い」
です。
②アレルギーになるかどうかは簡単ではない
父母の体質、その子の本当の体質、生活環境など様々な要因を受けます。
③だから、遺伝するリスクを下げていく
色々なことを組みあわせて、予防できる病気は予防し、病院にかからなくても良い体質を目指すことが大切です。
参考文献
・鈴木美穂、他:小児科臨床 72;4 ; 423-427
・内藤祐二. アレルギー・免疫. 26: 3; 278-286
・ジャスティン S, エリカ S. 腸科学.
・医科プロバイオティクス学. シナジー. 2009.
・Kalliomark M, et.al. Lancet, 357: 1076-1079, 2001.
・Taylor AL, et.al.JACI, 119: 184-191, 2007.
・Sibylle Koletzko. Supplement, 1: 9-10, 2016.
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・Forsberg, A, et.al. Clin Expo Allergy 46; 1506-1521, 2016.
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・Lundelin K, et.al. Pediatr Allergy Immunol. 13;7; 1619, 2016.
・Zuccolif, et all.Allergy , 2015
・Pelzer , et al. Plcenta 54; 30-37, 2017
・Baquerizo, et al. J Am Acad Dermatol. 71; 814-821, 2014
・永倉 顕一 、海老澤元宏. 日小ア誌 2021;35:186-191