歯科治療と金属アレルギー

良い多くの方は、歯科治療によるアレルギーでは、金属アレルギーのイメージがありますが、この他にも局所麻酔薬、抗生剤、鎮痛剤、レジン、印象剤アレルギーなどがあります。

金属アレルギーは症状が長期にわたり、金属が触れた部分~全身まで、症状が出る範囲が広いですが、命に係わる症状になることはありません。

一方で、局所麻酔、抗生剤、鎮痛剤は命に係わる症状が出現、救急搬送されることも少なくありません。

私に紹介になる患者さんは、局所麻酔、抗生剤、鎮痛剤が多い状況ですが、金属アレルギーでは、全身に症状が出るタイプ方が多いです。

歯科治療による金属アレルギーで、全身に症状が出るタイプの方を中心にお話しいたします。

1)歯科治療での金属アレルギーは全身に出ることも

歯科治療による金属アレルギーは、3パターンが多い印象です。

①触れている部分が赤く、痒くなる(接触型)、②手足に湿疹がでる(手足型)、③全身の皮膚に症状がでる(全身型)

殆どの場合、皮膚に症状が出ます。

①は歯科治療後に数か月以内で症状が出ることが多いですが、②、③は歯科治療後から症状が出るまでに最低半年~1年はかかる印象です。特に、③の場合には、症状の出方が様々でかつ個人差がとても大きく1)、さらに歯科治療から時間が経ってから出るために、金属が原因であると判断するのはとても難しいです。

治療してみた結果、結局金属が原因ではなかったことの方が多い印象です。

歯科による金属アレルギーの検査は、パッチテスト、歯科治療による金属除去、金属内服テストなどありますが、パッチテストと歯科治療による金属除去が一般的です。

2)世の中では、歯科で金属を外せば治ると思われています

そもそも、歯科治療が原因で金属アレルギーになったのではなく、もともと金属アレルギーだった、もしくは金属アレルギーになる体質で歯科治療が最終的な引き金になっただけのどちらかです。

アレルギーの場合、時間が経過してから出てきた症状や長引いた症状は、治まるのも時間がかかります。

接触型の方の場合、金属を除去してからすぐに、1~2ヶ月で症状が無くなることがほとんど、わかりやすいです5)

一方、手足型や全身型の方は、歯科金属を除去しても、1ヶ月以内に症状が急激に改善した方は1名しか出会ったことがありません。通常、皮膚が良くなり始めるには半年~1年以上かかります1)2)。このため、良くなったかどうか怪しいままに治療をあきらめる方が少なくありませんが、どちらかとゆうとアトピー性皮膚炎の治療が上手く行ってなかった方の方が多い印象です。

また、掌蹠膿疱症の方も多く見てきましたが、残念ながら歯科金属を除去して良くなった方は見たことがなく、逆に歯科金属を除去してしばらく経つが治らないといって来られる方の方が多いです。

歯科金属アレルギーでは、う蝕でも金属成分が溶けだして症状が出ると報告されており1)、金属アレルギーだけではなく、歯科治療も必須です。

また、私自身は経験がありませんが、掌蹠膿疱症で扁桃腺摘出術を行うと、60~75%の方が良くなることも報告されています4)

3)原因となる金属はほぼ決まっています

歯科治療での金属アレルギーは、コバルト、ニッケル、クロムが圧倒的に多く、パラジウムなどもあります。金属アレルギーで多い原因がそのままとなります。

金、銀、白金(プラチナ)などのアレルギーは珍しいですが、婚約・結婚指輪などのアクセサリーで症状が出るので、ご自分でわかっていることがほとんどです。婚約指輪を買い直された方は2名いらっしゃいました。

歯科治療の場合、健康保険と自由診療では使う材料が全く異なり、治療内容によっても使う金属の割合が異なってきます。ただし、割合よりもどの金属を使っているかが大切なので、Au、Ag、Cu、Pd、Ir、Zn、In、Co(義歯)、Cr(義歯、ワイヤー)、Ni、Ti(インプラント)が主に使われていることを知っておくと医療者側は良いと思います6)

参考:歯科治療 代表的な金属含有量

金属名 インレー

クラウン、ブリッジ、メタルコア

義歯 金属床義歯 インプラント 矯正ワイヤー
金合金 金銀パラジム合金 同左 同左 チタン  
Au (以下%) 40-90 40-75 68 68  
Ag 2-40 2-40 9 45-55
Cu 3-20

3-20

5 10-20
Pd 0-10 0-10 2 20
Co    

45-55

 
Cr 20-32 18-20
Ti   100 49.5
Ni   8-10

文献6より改変

ちなみに、チタンの検査については、検査薬を輸入、もしくはクリニック内で自作しなければならいため、検査は自費となります。インプラントや整形外科手術後に金属アレルギーで症状が出た場合、金属を取り出すのも手術になります。特に整形外科の場合、装置の種類が多いため術前チェックをお勧め致します。

4)金属アレルギーが食事で良くなる人は少ないです

伴う金属アレルギーの治療の場合には、食物制限を併用する場合があります。

これは、食物の中には自然の状態で金属を含有しているものがあり、場合によってはその食物で金属アレルギーの症状がでることもあります。この場合、1ヶ月は金属を含有している食物を完全にやめて、症状が良くなるかどうかみます。限度は1ヶ月です。しかし、金属を含有している食物は非常に多く、これを制限するとかなり大変ですので、あまり現実的な方法ではありません。

コーヒーや紅茶の場合、手が荒れてくることが報告されており、2名ほど経験があります。

が、私のところに来る方は腹痛で症状がでることの方が多い印象です。

腹痛は飲むと必ず症状が出ますのでわかりやすいです。手荒れの場合には、コーヒーや紅茶を中止して、2週間経過して良くなっていれば、さらに2週間継続します。この場合1ヶ月以内に、かなり良くなるのが特徴です。「良くなった気がする」は、「良くなっていない」と思って頂いて結構です。

水道水で金属アレルギー症状が出ていた方も2名だけ見たことがあります。

1人は皮疹から口唇の腫脹、1人は腹痛でした。どちらの方も、ミネラルウォーターにすると症状が出ない、水道水を出してしばらくしてから飲むと症状が出ないか軽い、抗アレルギー剤を飲んでいると症状が出ないと自分で工夫して生活しており、2人とも全く同じ方法をご自分で見つけていました。

アレルギーは、その人に合った検査とその方の症状で判断するので、研究結果が頭に入っていないと治療戦略が立てられません。

つまり、戦略が間違えていたら、あなたの生活は変化しないとゆうことです。

5)だから、これが必要です

①検査結果でその後の治療は変わる?

パッチテストだけしても、患者の生活が変わらないのであれば、医者の評判が悪くなるだけです。

②治療計画で患者の生活を変えないと行けません

検査することが目的ではなく、患者の生活を変える方針が立てられるかどうかです。

③パッチテストで全身に蕁麻疹がでることもある

背中に金属の検査薬を貼っても、全身に蕁麻疹がでることもあります。

 

【参考文献】

1) 足立厚子. 金属接触アレルギーと全身型金属アレルギー. J environmentl Dermal cutan Allergol, 3; 5: 413-422, 2009.

2)吉川涼一. 口腔内金属が全身に及ぼす影響について -歯科金属アレルギー治療の現状-

3)足立厚子. 金属、歯科治療による接触性皮膚炎の臨床と原因抗原. アレルギー・免疫 16; 11:1733-1740, 2009.

4)伊藤明子. 金属アレルギーとパッチテスト. 医学の歩み. 240; 7 : 601-606. 2012.

5)Hirotaka T, etal. A Case of Metal Allergy in Oral Mucosa Recoverd with Dental Treatment. Jpn J Oral Diag. 22;3:334-338, 2009.

6)松阪賢一. 歯科金属アレルギー:知っておこう、歯科治療に用いる金属. Visual Dermatoloy, 7; 4: 2008.

 

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