離乳食の進め方:肌荒れがある子

赤ちゃんの頃から肌が荒れていたので、時々病院にいって悪いと思った時だけ治療していた。
そのうち離乳食で卵を食べさせたら、全身に蕁麻疹と咳、意識がもうろうとして病院に運ばれた。
アレルギーの専門病院と言われている病院に通っているけど、説明されても専門用語ばかりでよくわからず。
時々採血されても様子を見ましょうと言われ、何年も治療が進まず、来年幼稚園の年長になるのに卵が含まれているものも食べられない。
小学校が不安になり、同じ卵アレルギーの子を持つ友人に相談したら、友人のかかりつけ医は採血の説明や検査項目自体が全く違っており、食物アレルギーは採血だけではわからないとゆう。
採血の値が低くても全く卵が食べられなかった友人の子どもの話から、アレルギーの採血結果で話が盛り上がったところ、友人の子どもは少しずつ食べる治療を行い、去年には卵は食べられるようになっていた。
離乳食は、肌の荒れを完全になくし、通常通りに進めていく食物アレルギー予防に一番良いと教えられた。
1)自宅で出来る方法はあります
アレルギーは、年々進化しているので、半年程度でそれまでの考え方や治療が古くなってしまうこともあります。
我々がやっている診療や考え方は、一般的に広がる何年も前なのです。
一方で、自分たちで出来る食物アレルギーに出来るだけならないようにする方法はあります。
家庭で良かれと思ってやっていることが、実は子どもたちに大きな負担を残すことは普通にあります。
親は良かれと思ってやっているだけでも、間違えた方法で、子どもに不利益があった時の親の悲しみは大きいです。
私は、子どもや女性が自由になる未来をつくりたいのです。
2)乳児湿疹は関係ないと思われています
乳児湿疹の約半分はアトピー性皮膚炎と言われ、現在は乳児湿疹もアトピー性皮膚炎も治療を分けません。
今は肌が荒れている(湿疹がある)と食物アレルギーになりやすいことが解っており、乳児期の食物アレルギーは、約8割がアトピー性皮膚炎から始まっています。
イギリスでピーナッツアレルギーが問題になっていた時、ある医師が、移住してきた中東系の子ども達はピーナッツアレルギーが非常に少ないことに気が付き、原因を調べます。そこで、イギリスでは伝統的にピーナッツオイルで乳児が保湿されていることの違いに気が付きます。
さらなる研究で、肌の食物接触(経皮膚)は、食物アレルギーの最大の原因であることを突き止めました。
さらに、このことは世界中で研究され、皮膚からアレルギーを起こす状態(経皮膚感作)は、実は肌が荒れている(湿疹がある)と非常に食物アレルギーになりやすくなること(経湿疹感作)がわかりました。
つまり、乳児期の肌荒れや湿疹は、食物アレルギーになりやすい状態のままになっているのと同じです。
3)母親の食事制限と離乳食を遅らせる:意味なし
食物アレルギーの予防を目的とした母親の食事制限は、効果が無いばかりか栄養に支障をきたすため、はっきりと否定されています。
一方、食べることにポイントはあり、例えば、妊娠後期から授乳中にかけれ乳酸菌を摂取することで、子どもがアトピー性皮膚炎になる確率が下がることが言われています。
どの乳酸菌かは決まってないけど、乳酸菌のシロタ株と親の生まれ故郷の乳製品メーカーが良い印象ではあります。
この場合の乳酸菌の摂取は、色々な考えがあるので、気になった場合には主治医と相談すると良いでしょう。
2015年のLEAP STUDYや2017年のPETIT STUDYでも、ピーナッツや卵は遅らせずに、むしろ早く食べた方が食物アレルギーにならないことが示されました。
つまり、よかれと思って特定の食べ物を遅らせるのは逆に危ないとゆうことです。
これは、子どものアレルギーを診る医師であれば、必ず実感していることです。
事情があって遅らせるのではなく、意味もなく離乳食を遅らせることは、むしろ子どもの未来を不自由にしてしまうのです。
一方で、食物アレルギーになってからは、「皆に知られていないけど、食事をこのように変えれば治る」といったことは、アレルギー界では証明されていません。
4)多くの種類を食べることが大切
一方で、離乳食の時から、食事の多様性を持つことが大切です。
離乳食の時から食べる食物の種類が多い、つまり、いろんなものを食べている子ほどアレルギーになりにくいことが解っています。
これは、アレルギーになる可能性の高い子ほど顕著です⑨、⑩)。
食べ物の種類が多いことで間接的に腸内細菌叢を整え、アレルギー予防になる可能性も多く報告されています。
これは食物アレルギーになってからも同じで、かなり以前は食べない(完全除去)で数年様子を見る手法がとられてきましたが、食べなければ、食べられなくなります。
なので、食物アレルギーは採血だけで診断することは出来ないので、現在は食べられる範囲で食べ、食べられる範囲を増やしてく方法がスタンダードです。
もし食物アレルギーと診断されたら、必ず医師と相談しながら離乳食を進めます。アレルギー症状が出てしまうと、子どもは危なくて仕方ありません。
5)だから、これが必要です
①乳児湿疹は絶対に早く治療する
乳児湿疹は、食物アレルギー最大の原因です。
②そのうえで、離乳食は通常通りに進める
乳児湿疹は治療、離乳食は通常通り食べましょう。
③離乳食か色んなを食べる
多くの種類を食べることが、食育や腸内細菌を整えることに役立ちます。
【参考文献】
①福家辰樹. アレルギー予防の観点から考える離乳食の進め方. アレルギー. 69(10),972-978, 2020.
②Peters RL, etal. Early Exposure to Cow’s Milk Protein Is Associated with a Reduced Risk of Cow’s Milk Allergic Outcomes. Allergy Clin Immunol Pract. 2019 Feb;7(2):462-470.
③Du Toit G, etal. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. N Engl J Med. 26;372(9):803-13, 2015.
④Natsume O, etal. Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema (PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 21;389(10066):276-286, 2017.
⑤Section on Breastfeeding. Breastfeeding and the use of human milk. Pediatrics. 129(3):827-41, 2012.
⑥海老澤元宏、他. 食物アレルギー診療ガイドライン2016.
⑦Anne Zutavern, etal. Timing of solid food introduction in relation to eczema, asthma, allergic rhinitis, and food and inhalant sensitization at the age of 6 years. 121(1), 44-52, 2008.
⑧Caroline Roduit, etal. Increased food diversity in the first year of life is inversely associated with allergic diseases. J Allergy Clin Immunol.133(4):1056-64, 2017.
⑨成田 雅美. 食物アレルギーの発症予防~離乳食早期摂取による経口免疫寛容~. 日小ア誌 2020;34:391-399.
⑩夏目統. 乳児期早期摂取開始による食物アレルギー発症予防. 日小ア誌 2019;33:12‒19.
診療のながれ
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1 受付
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初診時は受付にお声かけいただき、保険証の提出をお願いいたします。2回目以降の受付は、アプリにて壁にありますQRコードを読み取っていただければ、自動受付になります。受付詳細はこちら
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2 問診
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これまでの経緯をよく聞くので、症状が出てなくても大丈夫。
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3 診察
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話合いで、一人ひとりに合った検査と今後の治療方針が決まります。
このため、症状がないときに受診しても大丈夫です。
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4 採血
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採血結果からみるべきポイントは、年齢や食べ物、症状、合併するアレルギーによって、全く違ってきます。
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5 治療方針決め
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どの薬を、どの部位に、どのくらいの期間で使うのか、あなたの症状にあったさまざまな薬と使い方がポイントです。
アレルギーを総合的に判断することで、症状を無くし、最終的には薬自体を使わなくてもよい状態を目指すために、きめ細かい対応をしています。
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