コロナワクチン前に治療を推奨のアレルギー
札幌市南区のアレルギー科・小児科(アレルギー)のアルバアレルギークリニックです。
コロナワクチンアレルギーは、珍しいです。
特にコロナワクチンでのアナフィラキシーの原因となる「ポリエチレングリコールが・・・」、「ポリソルベートが・・・」と原因成分を医療関係者から言われてくる人もいますが、実際の現場では少ないです。
ただし、誰かにはコロナワクチンでアレルギーはおきます。
アナフィラキシーは、アレルギー症状のひどいヤツと思って頂いて結構です。
しかし、実際には、厚生労働省ワクチン分科会報告ではコロナワクチンでのアナフィラキシーは結構な数が起こっていますし、大規模接種会場でアナフィラキシーを起こした方が当院に搬送されてきます。
日本では、年間70人ほど薬物アレルギーで死亡しています。
医者がその場にいるのに、アナフィラキシーで死亡する方を出すのはとても、とても、とても恥ずべきことだと思っていますので、そもそも起きないようにすることがアレルギーでは大切なのです。
【結論:この人が起こしやすい】
このアレルギーを持っている人は、ワクチン前に治療・対策を推奨(理由は1)以降)。
- 「アトピー性皮膚炎」の症状が残っている
- 「気管支喘息」を治療していない
- 「食物アレルギー」を持っていて、事前に対策してない
- 「以前に何かでアナフィラキシー」を起こした
- 「薬物アレルギー」を持っていて、事前に対策してない
- 「30~40代女性」、動物(特にネコ)を持っていて、事前に対策してない
治療を中断してしまった人は、再開する良い機会だと思っています。
1)アレルギーは「起こさないように接種する」のが鉄則
世間では、ワクチンでアレルギー症状が起きてから対応することが前提で話が進んでいます。
これまで予防接種アレルギーを含め、約200人程の薬物アレルギーの人を対応してきましたが、普段から既往のアレルギーを症状があるのに治療していないと、アレルギー症状を起こしやすいです。
イメージとして、体が反応しやすくなっている状態。
「起こしてから対応するのではなく、起こさないようにする」、のがアレルギーです。
つまり、「アレルギーがあるなら、接種前に治療しておく」これが正解です。
アレルギー症状を起こさないようにするのが、アレルギー医の仕事なのです。
2)コロナワクチンアレルギーを起こす人
モデルナ社の予防接種でアナフィラキシーを起こした人は、以前に他の予防接種でアナフィラキシーを起こした人はいませんでした。バイオンテック・ファイザー社の予防接種でアナフィラキシーを起こした人は、1人ですが以前に狂犬病・インフルエンザワクチンでアナフィラキシーを起こしていました。
アレルギー症状を起こした人は、モデルナ社では約60%が「薬か食物」に、バイオンテック・ファイザー社では約81%が「薬か食物、昆虫」にアレルギーを持っていました①,②)。
また、アナフィラキシーを起こした人は、モデルナ社では「薬、造影剤、食物」に、バイオンテック・ファイザー社では「薬、食物、昆虫」にアレルギーを持っていました。また、約30-50%の人が「以前にもアナフィラキシ―」を起こしていました①,②)。
しかし、人口の30%以上がなんらかのアレルギーを持っていると言われており、これらのアレルギーがある場合、注意が必要なものの接種不可にはなっていません。
ただし、これは欧米での話。
日本の厚生労働省の発表をまとめてみると、食物アレルギー(約22%)、気管支喘息(約21%)、皮膚関連のアレルギー(アトピー性皮膚炎、蕁麻疹など:約17%)、薬物(約17%)、アレルギー性鼻炎(花粉症含む:約16%)、動物(約2%)、ラテックス(約2%)となっています。
これは、大規模接種会場を含む報告を集めたものなので、しょうがありません。
以下の理由で現実的ではないデータだと思っています。
3) 実際にワクチンでアレルギーを起こした人はこれ
コロナワクチンでアナフィラキシーを起こし、当院に受診・搬送された方、接種を断られてきた方はこの状態でした。
上記以外だと「ネコアレルギー」の人が目立ます(下図:国に報告されたデータ参照)。
厚生労働省の報告を見ると、明らかにアトピー性皮膚炎を持っていないと起こさないようなアレルギーの発症の仕方をしている人が多いですが、その割にアトピー性皮膚炎が既往症に記載されていないことが多く見られます。
ところが一方で、私のところにワクチンアレルギーで相談にきた人や大規模接種会場から当院に救急搬送された患者さんは、「アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、かつこれらを治療していない人、もしくは薬物アレルギー、2~30%の人が食物アレルギーを持っている」が圧倒的に多いです。ネコアレルギーも目立ちます。
なので、私は現実的には下図のように、ワクチンでアレルギーを起こした人の中で最も多いアレルギーは、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーだと考えます。
これまで何百人ものアナフィラキシー患者さんを治療してきて思うのは、アトピー性皮膚炎の治療をしていないと他のアレルギーを起こしやすい状態になっているとゆうことです。
また、気管支喘息を治療していないと、何かでアレルギー症状を起こした時に重症化します(著者論文参照)。これは原因がどのアレルギーでも一緒で、下の図「コロナワクチンでアナフィラキシーを起こし、国に報告された症例」でも、気管支喘息が2位になっているのはこのためだと考えられます。実際、大規模接種会場でアレルギー症状を起こし、当院に救急搬送された方は、アトピー性皮膚炎も気管支喘息を治療していませんでした。
なので、当院では、子どもたちや妊婦さんに安全にワクチン接種を行ってもらうために、今持っているアレルギーの中でも「当院で接種するなら、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎は必ず治療、食物アレルギーを持っている人は要注意」で、ワクチン接種をお勧めしています。
ワクチン前にアレルギーを治療することは、時速80㎞で走っている車を時速40㎞に落とすのと似ています。40㎞で交通事故を起こさない訳ではありませんが、80㎞よりは各段に起こしにくいです。
つまり、これだけやってもコロナワクチンでアレルギーを起こさないとゆうことではなく、アレルギーを起こす可能性を減らす、もし起こしてもできるだけ軽症にする、ベストは何も起きないことを期待しています。
これまでの経験だと、この方法ワクチンアレルギーがある人でも「腕の紅斑」以外の症状がひどく出たことはありませんので、ワクチンアレルギーの方や起こしやすいと判断した方には、もう10年以上このパターンでやっています。
コロナワクチンは、「パンデミック前と同じ生活をして良いですよ」とゆう証明証です。
留学、研究、移住、仕事・・・・・・・
世界では、ワクチン接種証明が義務化されている国や地域が多く、ワクチン接種証明を持っていないと、今後日本以外の国では大きく大きく活動が制限されます。
また、このmRNAワクチンは我々の未来を、特に癌の治療で、大きく、大きく、大きく、変えます。
私は、子どもたちや女性には、絶対にワクチンは怖いものだと思わせたくないのです。
妊婦さんと子ども達にはできるだけ安全に接種を受けて頂きたいのです。
うちが「あなたは、うちでワクチンを打ってません」と判断すると、その方はワクチンを打てる場所はなくなります。
だから、当院ではとても、とても、とても、とても慎重にワクチン接種をするのです。
4) 当院で「接種当日にお断りする人」はこの人
薬物アレルギーを起こすとどうなるのか、これを嫌とゆうほど経験していますので、下記がワクチン前に未対策の場合には、安全のため当院での当日の接種はお断りします。
- アトピー性皮膚炎の症状が残っている
- 気管支喘息の治療をしていない
- 食物アレルギー、薬物アレルギーを持っていて、事前対策をしていない
- 受診時点でなんらかのアレルギー症状がある
ワクチンでアレルギー症状を超しやすいかどうかは、医学的なルールで決まり、あなたの感覚ではありません。
- 「重症じゃないと思った」
- 「何年も前だから大丈夫だと思った」
- 「アレルギークリニックなら打ってくれると思った」
- 「救急車で搬送されなかったから大丈夫だと思った」
ご自身が大丈夫だと思っているだけです。
持っているアレルギーが軽症だからコロナワクチンでアレルギーを起こさないわけではないのです。
例えるなら、「ビール1本なら飲んだうちにはいらない」と言い張っているようなものです。
酒気帯び運転は、「呼気1リットル中アルコール0.25mg以上」もしくは「呼気1リットル中アルコール
0.15mg以上0.25mg未満」と呼気濃度で決まっており、あなたの感覚で飲んだか飲まないかでは決まりません。
アレルギーを持っている方でもワクチン接種が可能なのは、事前に治療や対策を行っているからです。
なので、注意事項にも書かれているように当院でも、危険だと判断した場合には当日に接種をお断りさせて頂く方が毎回6~8人はいます。
5)ワクチンでのアレルギー症状はこれ
アレルギー症状を起こす約90%が女性です①)。
コロナワクチンでアレルギーを起こす人は、1回目で75%、2回目で25%です。
アレルギー症状の約60%は軽症で①,②)、蕁麻疹、紅斑、口や喉の痒み、喉の閉塞感、軽度の呼吸症状があります。
アレルギー症状は、平均7.5分-13分で始まり、ほとんどの人が接種15分以内に症状が起きます①,②)。
30分以上経過してからアレルギー症状を起こす人は少数ですが、最も長い人ではモデルナ社で53分、バイオンテック・ファイザー社で150分でした。モデルナ社よりもバイオンテック・ファイザー社製の方が、症状が出るのが遅めです。
重症になる人は、約0.00001%と非常に稀、全員が回復しています①,②)。
6)だから、接種前に治療と対策を推奨
このアレルギーを持っている人は、ワクチン前に治療・対策を推奨しています。
- 「アトピー性皮膚炎」の症状が残っている
- 「気管支喘息」の症状が残っている
- 食物アレルギー、薬物アレルギー、以前に何かでアナフィラキシーを起こした
治療を中断してしまった人は、再開する良い機会だと思っています。
私は、子どもたちや女性には、絶対にワクチンは怖いものだと思わせたくないのです。
特に、妊婦と子ども達にはできるだけ安全に接種を受けて頂きたいのです。
だから、当院ではとても、とても、とても、とても慎重にワクチン接種をするのです。
【参考文献】
③Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States. ④Mariana C. Castells, etal. Maintaining Safety with SARS-CoV-2 Vaccines. NEJM. 2021; 384:643-649.
⑥厚生労働省ワクチン分科会報告
【著作】
・ナシ摂取後に重篤な喘息発作を起こした1例. 小児内科. 52(5):709-711. 2020.
・妊娠中に憎悪した気管支喘息発作を薬物療法にてコントロールしえた1例. 産婦人科の実際. 68;13. 1593-1596. 2019 .
・「気管支喘息吸入指導に応用行動分析学の手法が有用だった自閉症スペクトラム障害を抱えた1例」 小児科診療 69;2:231-234.2016.
コロナワクチンで「アレルギーを起こした人が、持っていたアレルギー」