アトピー性皮膚炎は、症状がないのが普通
アトピー性皮膚炎が良くならない方は、「薬の選び方と塗り方」が間違えていることが多いです。
良くならない方は、一般的な強い弱いで決めた薬を悪い時だけ塗る。もしくは最初から自然の力を信じて薬を使わない。しかし、これだと基本的に悪い状態がさらに悪くなったときだけ薬を使う羽目になるので、どこの病院に行っても同じ事の繰り返しです。
アトピー性皮膚炎は毎日薬を塗り段階的に減らしていくのが主流で、きちんと治療していれば、症状が無いもしくはほとんど無い日常を目指します。
あなたが良くならなかったのは、これまでは治療の選択肢が少なすぎたから、本来なら良くなるはずのものを治せていなかっただけ。本当はたくさんの、さまざまな症状にあった効果的な薬と使い方があって、症状を無くし、最終的には薬自体を使わなくてもよい状態を目指すのが私たちの行う現在の世界標準です。
症状を無くして薬を使わなくても良くするために、これまでの経緯をよく聞いて、あなたの症状に対して薬を選び、これまでとは違った角度で血液検査の分析を行い、あなたのアレルギーを全く別の方向から見直すことで、じっくり治療方針を立てます。
つまり、まったく別の方向からアプローチするので、これまでにない結果を得られます。
1.皮膚の汚れを取って清潔にし、保湿すること
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、皮膚の汚れを取って清潔にし、保湿することです。
このためにはいくつかポイントは3つです。
- 外用薬を段階的に減らすこと
- スキンケア(保湿と体を洗うこと)
- 悪くなる要因を知ること
ステロイドを含めた薬は、保湿剤だけで過ごすためのつなぎなのです。
2.薬は段階的に減らす
アトピー性皮膚炎は毎日軟膏を塗り、段階的に減らしていくのが主流で、きちんと治療していれば症状が無いもしくはほとんど無い日常を目指せます。
痒みや湿疹が出る前に塗っておく、これをプロアクティブ療法といいます。
一方で、普段は何もせず、季節の変わり目や生理、体調不良時など、今よりもさらに悪くなった時だけ薬を塗布する方法は、リアクティブ療法と言い、平成元年くらいまで行われていました。
私が医師になった2008年頃には、恩師から悪い時だけ薬を塗るリアクティブ療法は、「昔の治療で、今は行っていない」と教えられ、悪化した時のつなぎ以外は行ったことがありません。
リアクティブ療法だと痒みが出てから対応するので、痒い状態が続きいつもイライラ、時々血だらけになることも、夜痒みで起きることもあるかもしれません。
これを予防するのがプロアクティブ療法です。
最初は毎日軟膏を塗布していますが、徐々に塗布する日を少なくし、保湿剤に置き換えていきます。
3.目的は症状が無い状態を目指すこと
最終的な目標は薬を減らすことではなく、症状がでない最低の塗布日数で、症状がない状態を保つことです。
ダイエットや美容と同じ。
本来の自分に戻ってから、それを維持することが必要です。
本当は、その人に個人個人に、さまざまな症状にあった効果的な薬と使い方があって、症状を無くし、最終的には薬自体を使わなくてもよい状態を目指すのが私たちの行う現在の世界標準です。
良くなっていない方は、すぐに症状を無くし、さらに薬を使わなくても良くすることが必要です。
これまでの経緯をよく聞いて、肌を見て触って診察を行い、症状に対して薬を選び、アレルギーを全く別の方向から見直すことで、じっくり治療方針を立てる必要があります。
4)現に、合併症が起きてから受診されます
アトピー性皮膚炎の合併症は、全身におきます。
特に眼と子どもの発達が問題です。
5)だから、これが必要です
①悪い時だけ塗るのはやめる
リアクティブ療法は平成元年頃の治療です。
②症状が出ないようにしておく
症状が出ない状態で薬を減らしていきます。
当然、症状があるうちは薬は減らせません。
③合併症が怖い
アレルギーマーチ、全身合併症が問題なのです。
参考文献
- アトピー性皮膚炎ガイドライン 日本皮膚科学会 2012
- Guidelines of care for the management of atopic dermatitis 2014
- Infantie eczema pediatric and dermatlogy section (EAACI 2014/6)
- ヨーロッパアレルギー・臨床免疫学会総会 (EAACI 2015)
- 第12回アトピー性皮膚炎治療研究会(広島 2014/2)
- アレルギーエデュケーター 基礎講習会 2014年
- 第52回日本小児アレルギー学会(2015年)
- Thomas Bieber(2013 EAACI Milan)
- Thaci D, Br J Dermatol. 159; 1348-56; 2008
- AAD newest guidelines for the management of AD focus on treatments; 2014
- Berth-Jones J,. BMJ 2003;326:1367
- Schmitt J, Br J Dermatol. 2011;164(2):415
- Hanifin J. Br J Dermatol. 2002;147(3):528
- Paller AS, et al. : Pediatrics 122(6)1210, 2008
- Breneman D, et al. : J Am Acad Dermatol 58(6)990, 2008
- Wollenberg A, et al. : Allergy 63(7)742, 2008
- Grimalt R, ; Dermatology 214 : 61-7, 2007
- Szczepanowska J,; Pediatr Allergy Immunol. 19 : 614-618, 2008
- Wallberg P;J Eur Acad Dermatol Venereol 23 : 1267-72. 2009
- Thomas Bieber (Germany), EAACI 2014
- J Invest Derm.2014;134:345-50
- 馬場実.アレルギーマーチ. 小児科診療. 61:481-485. 1998
- 下條直樹. 薬局. 64(3):P27-31. 2013
- 椛島健治. 皮膚アレルギーフロンティア 8(1): P29-32, 2010.
- 佐伯秀久. ドクターサロン Vol59:4, 2015
- Jon A Halvorsen:The Journal of investigative dermatology. 2014
- Natalia Ballardini:Acta dermato-venereologica. 2013