アレルギーと予防接種:打てます
5年ほど前までは、毎年多くの方がアレルギーがあるから予防接種は打てませんと説明され、予防接種を断られていた時代がありました。
現在、コロナワクチンはアレルギーとの関連が証明されているので、特定のアレルギーは治療してから接種した方がよいですが、その他の予防接種は関係ありません。
1.予防接種は大丈夫
例えば、卵アレルギーがあっても、インフルエンザワクチンも大丈夫です(①~⑤)。
時々断られるMR、麻疹、おたふくかぜワクチンには、そもそも卵白成分は含まれていません(③)。
また、採血などでアレルギー体質かどうかを調べることはできますが、
予防接種のアレルギーかどうかを事前に調べることはできません。
2.750本同時に打ったら
卵アレルギーの場合、約150~750本のインフルエンザワクチンを一度に打てば、アレルギー症状が出るかもしれません程度です。
インフルエンザワクチン中の卵アレルギー成分が0.6μg/mL以下では、重篤な反応はないと報告されています(②)。
【ワクチン中の卵アレルギー成分】(①~③)
・重篤な反応はないレベル: 0.6μg/mL 以下
・WHO基準のインフルエンザワクチン : 10μg/mL 以下
・日本のインフルエンザワクチン : 0.8~4ng/mL未満
→日本のインフルエンザワクチンには卵のアレルギー成分は0.0008~0.0032㎍未満
つまり、インフルエンザワクチンは約150~750本分になります。
3.保存剤のアレルギー
インフルエンザワクチンでのアレルギー反応は保存剤が影響している可能性が指摘されています(①)。
このため、当院では保存剤不使用のインフルエンザワクチンで接種します。
ただし、数年に1名程度、保存剤不使用でも症状がでる方はいます。
この場合、インフルエンザワクチン自体にアレルギーがあるので、症状の強さによってインフルエンザワクチンは打たない方が良いとゆうとになります。
予防接種の場合、アレルギーではなく、腕が腫れるなどの副反応があります。
もし予防接種でなんらかの反応が起きたとしても、インフルエンザのように毎年中身が変更になるワクチンの場合、
アレルギーでなければ腫れ方は年によって大きく差があります。
また、その時の症状で対応方法が違ってきます。
また、アレルギー対応に慣れていない病院では、予防接種を断れることがほとんどです。
予防接種を断られた場合には、理由を説明しても接種してくれることはありません。
4.インフルエンザアレルギーの症状
・打った場所より広がって腫れる(肩~前腕までなど)
ほとんどがここ
・呼吸苦
・全身蕁麻疹
・発熱
多くの場合、腫れるだけですが、40℃近い発熱がある場合もあります。
5.対応
ワクチン接種の前後1週間、抗アレルギー剤を内服します。
注射部位にステロイド外用剤塗布、腫れと痛みを抑えるために鎮痛剤を内服する場合があります。
アナフィラキシーなどの症状の際には、接種中止も考慮されますが、上記対応で接種できる場合が圧倒的に多いです。
参考文献
①長尾みづほ. 診療現場の疑問から臨床研究へ. 日小ア誌 2015;29:18-21.
②内田理、菅井和子. 鶏卵アレルギー. 小児食物アレルギーUP DATE. P681. 金原出版.
③伊藤節子. 食物アレルギー診療ガイドライン 第9章 食物アレルギーの治療. 日小ア誌 2013;27:605.
④Paul J. Turner. etal. Safety of live attenuated influenza vaccine in atopic children with egg allergy.JACI 136(2); P376-381, 2015.
⑤Ann Des Roches etal. Egg-allergic patients can be safely vaccinated against influenza.
JACI 130(5):P1213-1216, 2012.