知っておきたい動物アレルギーの基礎知識
こんにちは。アルバアレルギークリニック院長の続木です。
今回は、ペットを飼っている方、これから飼おうと考えている方、そして動物アレルギーで悩んでいる方に役立つ情報をお伝えします。
動物アレルギーの原因と症状
動物アレルギーの主な原因は、動物の毛、フケ、唾液、尿などに含まれるタンパク質です。
特に猫の場合、主要なアレルゲンはFel d 1という唾液にあるタンパク質で、猫アレルギー患者の90~96%がこれに反応します。
なでても大丈夫だけど、なめられると症状がでるなど個人のよって症状に差がありますが、多くの場合毛やフケに反応します。
症状の中でも、喘鳴など呼吸に症状が出ると症状がひどくなることが多く、緊急を要する場合もあります。
症状は個人差が大きいですが、以下のような症状が見られます:
目や鼻のかゆみ、充血
くしゃみ、鼻水
喘息様症状(呼吸困難、咳など)
皮膚のかゆみ、蕁麻疹
動物アレルギーの症状の重さは、接する時間やその時の体調(免疫が下がってる)、個人の体質によってによって大きく変わり、アナフィラキシーを起こす場合もあります。
つまり、普段のアレルギー症状が軽微でも、突然重症化する可能性があります。
油断は禁物です。
意外と知られていない動物アレルギーの特徴
犬や猫以外にも、ウサギ、ハムスター、フェレット、鳥などのペットでもアレルギーを引き起こす可能性があります。
猫
猫アレルギーの場合、猫の毛は48時間も空中に浮遊します。
そのため、猫を別室に隔離しても効果は限定的です。
動物園に行き、眼のかゆみでライオンやトラの方向が分かると重症で、猫科動物のアレルゲンが非常に強力で、遠くまで飛散するためです。
ハムスターなどの小動物
噛まれると、重度のアレルギー反応を起こす可能性があります。これは唾液中のアレルゲンが直接体内に入るためです。
馬アレルギー
動物の体が大きいため、アレルゲンの量が多く症状が強く出やすいです。
蕁麻疹と呼吸苦が主な症状になります。
花粉症との関連
イネ科の花粉症を持つ場合、床材やエサの草で症状がでます。
最近ではイネ科ではない床剤もあり、代表的なのはウサギのアルファルファ(マメ科)です。
ほとんど花粉症の症状がでることはありません。
動物アレルギーへの対策
動物アレルギーは年齢とともに悪化することが多く、自然に治ることはほとんどありません。
完全に動物を避けるのが最善ですが、現実的でない場合が多いです。
以下の対策は「やらないよりは、全然マシ」と考えて試してみてください:
定期的にペットを洗う(特に犬の場合、週2回の洗浄でアレルゲン量を大幅に減らせますが、すぐ戻ります)
HEPAフィルター付き空気清浄機を使用する
寝室にペットを入れない
高効率の掃除機でこまめに掃除する
マットレスや枕にアレルギー対策カバーを使用する
可能な限り、ペットとの接触を制限する
ただし、猫の場合は毛が非常に軽く、長時間空中に浮遊するため、これらの対策だけでは不十分な場合があります。
治療法
予防方法としては、アトピー性皮膚炎がない場合、1歳未満で犬や猫に接触した子どもは、その後のアレルギー発症リスクが低くなる可能性があります。
動物アレルギーの治療には主に以下の方法があります:
抗ヒスタミン薬などの内服薬
目薬や点鼻薬
吸入ステロイド薬
免疫療法(現在日本では保険適用外):完全に治すことを目指せる唯一の方法
重要なのは、症状が出る前に予防的に薬を服用することです。
例えば、動物のいる場所に行く前日から服用を始め、帰宅後も1日は継続するのがおすすめです。
免疫療法は、長期的にアレルギー反応を抑える可能性がある唯一の方法ですが、日本では現在、動物アレルギーに対する免疫療法の薬剤が承認されていないため、海外から個人輸入する必要があります。
併発する他の動物アレルギー
動物アレルギーがある方は、他のアレルギーも併発しやすい傾向があります。
北海道では、猫アレルギーがあるとウサギとウマのアレルギーを併発することがあります。
猫アレルギーの方が豚肉アレルギー(ポークキャット症候群)を発症することがありますが、イヌはありません。
注意すべきポイント
「低アレルゲン」や「アレルギーフリー」と宣伝されているペットでも、完全にアレルギーを防ぐことはできません。
個体差が大きいため、注意が必要です。
動物に噛まれたり引っかかれたりした場合、アレルギー反応だけでなく、感染症のリスクも高まります。
特に猫に噛まれた場合は要注意です。
最後に
動物アレルギーは個人差が大きく、症状の現れ方も様々です。
また、年齢とともに悪化することもあるため、定期的な検査と適切な対策が重要です。
心配な症状がある場合は、ぜひ専門医にご相談ください。
当クリニックでは、患者さん一人ひとりの状況に合わせた診断と治療を行っています。
血液検査だけでなく、症状の詳細な聞き取りや生活環境の確認なども含めて、総合的に評価します。
また、重症度に応じて、内服薬、点眼薬、点鼻薬、吸入薬など適切な治療法を提案します。
動物アレルギーは、ペットとの大切な絆を脅かす可能性のある悩ましい問題です。
しかし、適切な対策と治療を行うことで、症状をコントロールし、より快適な生活を送ることができます。
【参考文献】
J Feline Med Surg. 2022 Jan; 24(1): 43–52.
堀口高彦. 耳喉頭頚. 91; 1;61-67. 2019.
吉原重美、他. Modern Physician. 38; 10; 1077-1078. 2018.
赤澤 晃. 日小ア誌 2014;28:58-65
Hodson T,etal. J Allergy Clin Immunol 1999;103:581-585
David A Warrell.infect Dis Clin North Am. 2019 Mar;33(1):17-38.
Núñez-Acevedo B,etal. J Investig Allergol Clin Immunol 2015; Vol. 25(5): 365-384.