手荒れ:看護師と美容師
1)職業による手荒れ
最も手荒れが多い職業が、看護師と美容師です。
医療従事者で、手荒れをしている人は81.4~90%であったともいわれ1)、看護師の85%が、手に何らかの皮膚問題を経験している2)と報告されています。
指の衛生を保つには「手洗いと消毒」が必要
→どちらも脂肪の除去、皮膚の表面(角層)剥離が起きる
→皮膚が乾燥する
→バリアーが壊れる
→壊れる回数が頻回だと皮膚の再生が間に合わない
→これが「手荒れ」
特に手荒れの場合には、悪い時期が長くなればなるほど治りません。
さらには、いったんバリアーが壊れると、全く影響のなかった洗い物やハンドクリームなど、日常生活行為ですらさらなる悪化の原因になってきます。
また、手のバリアーが壊れると、アトピー性皮膚炎と同じなので、食物アレルギーの原因にもなり、多くの報告がなされています。
美容師の場合には、「洗髪」がこれに当たり、シャンプーでやられてきます。
2)手荒れの原因
「手洗いと消毒」は、どちらも皮膚から脂肪、皮膚の表面剥離(角層)を除去されるので、指が乾燥します。
この乾燥で指のバリアーが壊れますが、常に続くので、肌が再生しません。
荒れた時間が長ければよくならない期間も長くなり、集中的な治療をしないと、とても治りにくいです。
つまり、職業として手荒れが起きると、治療方法を変えない限り治りません。
看護師や美容師の場合、手荒れは就業後6ヶ月以内から始まると言われており、出来るだけ早い段階から対応が必要です。
このため、デンマークでは、美容学校時代から手荒れの予防が行われ、手のケアを教育に取り入れることで、手湿疹の発症頻度を減らしていると報告されています。
この時に大切なことは、
・治療は皮膚のバリアーを再生させること
・薬よりも原因を取り除くことが最重要
・薬は一時的な補強にしかならない
とゆうことです。
3)予防が大切
美容師の場合には、「洗髪」の多い就業後6ヶ月以内から出やすいことがわかっています。
これは看護師の場合は消毒と手洗いなだけで状況は同じです。
新人さんの時に始まりやすいのでが、かと言って、ベテランになれば治る訳ではありません。
治療しなければ、現状維持のまま「悪い」か、「余計悪くなる」かのどちらかです。
しかし、一旦荒れてしまうと仕事をしながらでは治療は大変です。
例えば対策として、①肘までの長さのある手袋で洗髪、②スキンケア9)ですが、①は現実的に無理があります。
なので、指荒れを防ぐには
1.発症する前から予防的に保湿剤を使う
2.手荒れ発症後も、頻回の保湿を使って悪化防止
3.手洗い後のハンドクリームと作業時の手袋着用
商売道具である指のケアが必要なのです。
4)手荒れの治し方
私の親戚も指の荒れが酷くて、美容師を辞めてしまいました。
なぜかとゆうと、指が荒れたままになっていると、全く影響のなかった日常生活行為すら悪化の原因になってくるからです8)。
美容師の指は商売道具です。
ハサミと一緒で手入れが必要ですが、多くの方はハサミは手入れしても自分の指は手入れがないことは多いのではないでしょうか?
手入れすると思ってもみないからで、美容学校からこの手荒れ対策は教えていく必要があります。
「でも、仕事中は出来ない」なんて、思わないで。
手洗い(洗髪)の前に保湿しても効果は少しは残るし、保湿した10分後に拭いても、1/4くらいは効果が残ります。
さらには、塗布量よりも「塗布回数」が保湿効果に影響するので、時間を見つけてこまめにやれば大丈夫です4~6)。
この場合、薬は重要ではないといった意味ではなく、いったん荒れてしまったら、保湿だけでは対応することが出来ません。
ステロイドでかぶれた状態を収めなければならず、むやみに保湿だけで治療していると年単位の長期間悪化が続く原因になります。
ただ、実際働きながらだと難しいことがおおので、ケアのタイミングとしては
・洗髪前後
・アイドルタイムは保湿+手袋
・昼休みは保湿+手袋
・寝る時には保湿+手袋
を、真面目にやると見違えるように良くなる印象です。
また、薬以外のケア用品を選ぶには、
- 無香料、食べ物が入ってない、尿素製剤はダメ
- ヘパリン類似物質かセラミド入り
- 切れた傷になった場合は傷の治療が必要
を、まもると良いでしょう。
5)だから、これが必要です。
- 手洗い(洗髪)の前に保湿しても効果は少しは残る
- 湿した10分後に拭いても、1/4くらいは効果が残る
- 布量よりも「塗布回数」が保湿効果に影響する
とにかく、毎日のケアが必要なのです。
参考文献
1)宮崎博章. INFECTIOUS CONTROL. 26(12).P78-84
2)松永佳代子. 第30回環境感染学会総会・学術集会 教育講演4
3)医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン.P30
4)清水雅美、他. 滋賀医科大学看護ジャーナル. 7(1), P35-38.
5)甲田雅一、ほか. INFECTION CONTROL. 17(4). P82-87, 2008.
6)大久保保憲. INFECTIOnNCONTROL. 9(4).P360-362, 2000.
7)大野夏代、ほか. INFECTION CONTROL. 15(6).P628-633, 2006.
8)河合修三. 皮膚メカニズムと手荒れの発症機序. INFECTION CONTROL. 2008増刊号
9)西岡和恵、他. J Visual Dermatol 17; 456-459, 2018.
10)Bregnhoj A, et al. Occup Environ Med. 77;42, 2017.