運動と蕁麻疹
疲れたり、生理になると赤い蕁麻疹が出て痒くなる。薬を飲んでも現状維持が精一杯、時々悪くなり、周囲の人から病院を変えるようアドバイスを受け、通える範囲の病院をいくつか変更しても、原因不明のものだから、これ以上やる事はないと言われている。数年前は腕だけたまに出るくらいだったけど、今は体にまで出るようになった。このまま治らないのかと思うと不安。
蕁麻疹で、長年同じような薬を飲み続けなければいけない方がいらっしゃます。
かかりつけ医に相談しても薬を飲みなさいと言われるだけ。
1.蕁麻疹の原因が不明。それは、誘発する原因が不明とゆう意味
蕁麻疹とは紅くて、ぼこぼこと盛り上がる感じのやつが、出たり消えたりするやつです。
その蕁麻疹にはタイプがあります。
・特発性蕁麻疹(蕁麻疹が出るのに原因がない)
:急性(発症6週間以内)と慢性(発症6週間以上)
・刺激誘発性の蕁麻疹(蕁麻疹が出るのに原因がある)
:寒冷、日光、温熱、物理的、コリン性蕁麻疹など
・血管浮腫:原発性、遺伝性など
・蕁麻疹関連疾患:蕁麻疹様血管炎など
この中でも圧倒的に多いのが特発性蕁麻疹です。
この特発性蕁麻疹は、他と違い「蕁麻疹が出る原因がない」=体質と思っていただけるとわかりやすいかと思います。
逆に原因のわかるものの例としては、寒冷蕁麻疹があります。
これは寒い、冷たいものをさわると突然蕁麻疹が出てくるタイプの蕁麻疹です。
つまり、カフェで水を飲もうとした、冬外に出たなどで症状がでます。
さらに、この寒冷蕁麻疹は重症のアレルギーであるアナフィラキシーを起こすこともあり、時に心肺停止にもなるため注意が必要ですが、あまり治療されていないのが現実です。
2.蕁麻疹はでる状況が決まっていることが多い
蕁麻疹はその人によって出る状況が違ってきます。
私の患者様は女性がほとんどなので悪化する要因は大体決まっています。
・疲労(特に睡眠不足)
・生理
・精神的ストレス
・下着(得にレース、シルク)
が女性に特徴的で、特に精神的ストレスで悪化しやすい印象があり、本人が自覚されています。ちなみに、旦那さんはこの辛さを理解できません。「病院に行けば?」、「相談したら?」と軽く返され、気分を害する女性が多いようです。
3.蕁麻疹を全くでないようにしておくべき理由
蕁麻疹は重症になります。
特に運動中の寒冷蕁麻疹は、心肺停止になって救急搬送されてきたり、そこまでいかなくても腹痛や呼吸苦も一緒におこすようになり、救急車で運ばれるほどひどくなります。
大会に参加する選手はなおさらです。
特に女性では生理の時に悪化するタイプの方はひどくなりやすいイメージがあります。
ピルで生理を止めると蕁麻疹は出てこない方が多いですが、ピルを内服されることを嫌がる方も多いと思います。
ただし、重症の蕁麻疹は注射で治療しなければ、飲み薬では間に合いません。
全員に共通しているのは、「蕁麻疹をあまり治療しないまま長年経過していた」です。
特に、症状が出ている期間が長い方がある日何かのきっかけで突然悪化すると、飲み薬では間に合わなくなります。
これが妊娠中に悪化すると大変なことになります。
多くの医師は妊婦の治療になれておらず、また女性も赤ちゃんに影響がでると思い内服をせず、何か月も症状を我慢する羽目になります。
そうならないためには、妊娠前から蕁麻疹を出ないような体質にしておくことが重要です。
日本皮膚科学会でも、「蕁麻疹の治療における最初の目標は,抗ヒスタ ミン薬の内服を継続することにより皮疹の出現を完全 に抑制することである」、つまり「薬で蕁麻疹を完全に抑えてておきましょう」と示しています。
蕁麻疹が収まるまで薬や蕁麻疹が出る状況を避けなければいけないのですが、ほとんどの方は蕁麻疹の治療がうまくいかないままに長年経過されています。
蕁麻疹は長くなればなるほど落ち着きにくくなっています。
良くも悪くも良くもならないまま、こんなものだと諦めているかもしれませんが、実は、蕁麻疹はどんな症状が出るかによって、薬の組み合わせを変えることで、蕁麻疹をゼロにしておくことが必要です。
本当はその人にあって色々な薬や組み合わせがあります。
健康保険の制度上むずかしいことはありますが、きちんと薬を組み合わせるためには、しっかりと時間を作って医師と話す必要があります。
参考文献
・Roxana-Silvia, etal. Management problems in severe chronic inducible urticaria: Two case reports. Exp Ther Med 18; 2; 960-963, 2019.
・Reid Singleton, etal. Diagnosis and Management of Cold urticaria. Cutis. 97: 59-62, 2016.
・日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会. 蕁麻疹診療ガイドライン2018.