小麦アレルギー 大人の場合
いつもと同じパンを食べ、いつもと同じようにマラソンをしただけなのに、全身真っ赤になり動けなくなって、救急車で運ばれた。
受診した病院で、うちでは検査出来ないと大学病院を紹介されたが、そちらでも、うちで対応する病気ではないと言われ、症状が出たら救急車を呼ぶようにと言われただけ。日常生活で何を食べて良いかわからず、常に不安に思っていたら、友人の同じ状況を解決してくれたアレルギー医を紹介された。
1)大人の小麦アレルギーは「重症」
成人の小麦アレルギーは全て重症になると思って頂いても過言ではありません①、②)。私のところに受診した、成人の小麦アレルギーでは、約93%の方がアナフィラキシーで救急搬送されていました。
特に、成人の小麦のアレルギーは、食べただけでは症状は起こらず、動いて初めて症状が出る食物依存性運動誘発アナフィラキシーが多いのが特徴です。
2)世の中では、「食べ物」だと甘く見られています
前述の93%の方は全員が、食物依存性運動誘発アナフィラキシーでした。
約3%の方は腹痛が起きます。小児では、小麦を食べると、数日かけて肌が荒れてくるタイプはいますが、成人で肌が荒れてくるタイプはあまりいません。
また、アナフィラキシーは別として、約3%の方の腹痛は診断がつく前に自分で色々と試して、気が付いてから病院に受診します。
典型的なのが、うどんやパスタを食べると数時間後に腹痛がある。最初は気のせいかと思っていたが、繰り返す。食べたものを考えると毎回小麦だったので、試してみたらやっぱりそうだった、といったケースです。
成人の場合、軽い症状だと、そのまま様子を見られていることがほとんどです。
3)ただし、発症の予想は難しい
基本的に、成人の食物アレルギーは、軽い症状を無視し続けた結果、アナフィラキシーなどの大きな症状を起こすことが非常に多いです。
一方で小麦アレルギーだけは別で、特に小麦の食物依存性運動誘発アナフィラキシーはいきなり来ます。これは、皮膚から小麦アレルギーになった場合も同様です。
成人の小麦アレルギーの場合、採血の項目としては、単なる「小麦」や「グルテン」は、あまり使えません。
が、小麦の食物依存性運動誘発アナフィラキシーの時には、約80%の人で、ω-5グリアジンが上昇しているのが特徴的です。
4)どうしたらよいのかわからない人がほとんどです
症状は、「食べた量」、「疲労度・体調」、「運動量」、「鎮痛剤の併用」に大きく依存し、また程度は個人差が非常に大きいです。このため、「自分が考える運動ではない」、「普段は大丈夫だった」は通用しません。
症状が出てから、救急搬送されるケースが後を絶たないのが実情で、「1回目はパン+マラソンだったので、パン食べてから歩いて通勤するのは大丈夫だと思った」は、結構一般的な救急搬送される理由の一つです。
なので、治療は「食べない事」。
「食べたら動かない」も可能ですが、飲酒や疲労が絡むと動いていなくても症状が出ることは普通で、個人差とその時の状況がかなり大きいです。
なので、食べないことが一番楽な治療になります。
5)だから、これが必要です
①これを気を付ければよいだけ
食べない。これだけです。
②食べない、食べたら動かない
症状が出たら、周りの人の心配たるや相当なものがあります。
③治ることはありません
自然には治らないし、食べて慣らす方法は成人では無理です。
参考文献
- 続木康伸. 札幌徳洲会病院アレルギー科を受診した成人アレルギー650例の検討. アレルギーの臨床. 2020; 40; 3.
- 中村陽一. 成人食物アレルギー. 日小ア誌 2018;32:88—95.