妊婦:コロナワクチン接種と副反応
新しい命を宿されているみなさんが、次の世代のため、自分のお子さんのため、周囲の人のためにコロナワクチンを接種することを決められたことに心から敬意と感謝を申し上げます。
コロナワクチン接種証明は、あなたが「周囲のためにできることを私はやっています」とゆう思いやりを持つ女性であることの証明です。
お礼の意味で、妊婦さんの副反応と対策をお教えしたいと思います。
当院で接種する場合、全てのかかりつけ産婦人科に連絡し、ワクチン接種に関する連携をすべての産婦人科と行っています。
1)妊婦とコロナ感染
インフルエンザもそうですが、女性のコロナ感染は、妊娠時の方がより重症化しやすいことがわかっています①。
特に妊娠後期では、母体(つまり、お母さんが)の重症化リスクが高まるとされています。一方で、コロナは子宮内感染をほとんど起こさないので、胎児への催奇形性はないことが明らかとなってはいますが、妊娠後期で母体がコロナ感染で重症化すると、治療のために帝王切開などで早産になることはあります。
また、母体が重症化するにも関わらず、コロナ感染の妊婦の受け入れ先の病院がなく、たらい回しになる事例が後を絶ちません。
つまり、胎児に直接感染はしないけど、妊娠中の女性の問題は、母体の状態がダイレクトに赤ちゃんに影響するとゆうことを意味します。
妊婦がコロナに感染すると27%の赤ちゃんが、早産、胎児臓器還流不全(血液が赤ちゃんにいかなくなる)、前期破水などを起こします。
つまり赤ちゃんが重篤な状態になる可能性があがります②。
アメリカの調査では、コロナに感染した妊婦では12.7%が早産となっていました。
また、妊婦がコロナに感染した場合、胎盤の血栓、胎盤の血管成長不全(つまり、赤ちゃんに血液がいなかい)などを引き起こします③。これは胎盤だけでなく、母体つまり母親の血栓(血管が詰まる)にもつながります。
妊婦がコロナに感染すると、感染中も感染後も母体、胎児ともに重い影響があるのです④。
一方で、コロナに感染した後でも問題になるのが後遺症です。
これは、とても、とても、とても大きな問題です。
私に相談に来られる女性は、1年以上、呼吸苦や動悸が治らず、各種検査でも何も異常がでない、そして精神科に紹介されるパターンが結構あります。つまり、コロナに感染して1年経過しても後遺症が治らなければ、治らない可能性が高いのです。
出産後にコロナ感染の後遺症が残ってしまった。
体が辛らくて、動悸も息切れもする。いつもイライラ。
育児はどうなるでしょうか?
さらに、コロナに感染しても有効な治療薬はいまだにありません。
現在、ファイザーが開発した経口薬で、自宅でのコロナ感染治療に期待が持てますが、アメリカで緊急承認されたとしても妊婦に適応になるのは数年先でしょう。
アメリカで承認されたとしてもで、日本ではさらに後になります。
つまり、現時点では感染しないことが最も大切で、ワクチン以外の手はありません。
2)妊娠15週以降が接種のベスト
どの薬でも必要な時以外は出されませんが、期間形成期(妊娠4~7週)は避けたほうが良いです。
なので、うちはマージンを取って「ワクチン接種は妊娠15週以降を推奨」しています。
現在札幌のクリニックに配給されているのは、ファイザー(バインテック)です。
ファイザーは、3週間間隔の2回投与です。
なので、接種時期を考えて2回目の接種が出産ギリギリになってしまわないように、あくまでもベストであれば妊娠30週前には終了するのが良いでしょう。
この期間を逃しても大丈夫。
ベストがダメなら、ベターを考えれば良いだけです。
3)ワクチンの副反応はこれ
ワクチンの副反応は妊娠しているときと非妊娠時では違いはありません。
ファイザーとモデルナでは注意する点が大きく違いますが、当院で使用しているファイザーについて、これまでの経験から述べます。
【基本の副反応】
3日以内で終了。10~20代は接種翌日、典型例から外れると1週間程度はかかる。
【多いのは、腕の痛み、発熱、倦怠感、頭痛】
何もない人もいれば、全部ある人もいます。年齢によって違いがありますが、副反応があるのは全体で40%くらいです。
痛みの程度は、ほとんどの人が気にならないですが、こればかりは感じ方に個人差が大きいです。
普段から体調を崩しやすい人は、副反応が出やすく、それも倦怠感、腹痛などの全身的な副反応が出やすい印象があります。
腕の痛みは6時間後、発熱は9時間後くらいから始まります。発熱期間は接種後24~60時間で、突然始まり突然解熱します。腕の痛みを除けは副反応は30~40%程度、つまり多くても50%程度の人は、「ほぼなにもない」です。
・10代:腕の痛みがほとんど。1回目の方が強いです。2回目の方が軽くすぐに終わります。
・20代:10代と逆。2回目の方が強いです。発熱は50%くらいの人が接種翌日から、頭痛が出る人は接種当日の夜から多い印象ですが、翌日朝にはほぼ消失しています。
・30代:上記に加え、生理不順や生理が重くなる症状が出てきます。倦怠感は長くても30時間程度です。この年代から体調が悪くなりやすい人は、副反応が出やすくなる印象です。
・40代以降:副反応が何もない人が増えてきます。多いのは2回目接種後約10時間後から始まる倦怠感です。多くの人はサーフィンやトレーニング、仕事もできる程度で、翌日1日で終了します。
ちなみにモデルナの副反応も違いはありませんが、年齢関係ない印象です。
【腹部の張り】
腹緊(腹部の張り)が1回目接種後に1.65%、2回目接種後で2.98%でした。
2回目接種後に子宮の痛みが1.06%にあったようです。
【不正出血】
0.8%と割合は少ないです。産婦人科検査で問題なしとなった人ばかりですが、妊娠中はびっくりすると思うので、もしあったら産婦人科へ行きましょう。
【早産など】
合併症はワクチンと関連は不明です。
一方で、出⾎、胎動減少、浮腫、⾎圧上昇、破⽔のような重⼤な症状は1回⽬接種後、2回⽬接種後ともに1%未満でした。これも関連しているかは不明です。要するにたまたま時期が被っただけじゃないかとゆうことです。
ただ、コロナ感染で妊婦が重症化、赤ちゃんが死亡する報告は多数あります。
【持病の症状が出てくると、長く続く】
関節リウマチや片頭痛に多い印象す例えば、片頭痛は一度発作があると数日起こしやすい時期がありますが、これが週単位になる印象です。また、何かの持病がある(例えば癌やメンタル系の疾患)と、腕の痛みと発熱以外の症状が出ることが目立ちます。この場合には個人差が大きく、「これ」といった症状はない印象です。
・打った時に痛い(痛った~と言いたくなる感じの時)があると
6時間後~翌日朝に100%発熱してます。10~20代は接種翌日です。
発熱してない時は痛みは大したことがない印象です。
妊娠中のワクチンの副反応にはアセトアミノフェンを使います。
・翌日の鼻閉、鼻汁が多い
妊娠中のアレルギー性鼻炎は、耐えられないほどひどくなりやすいです。
事前に治療しておきましょう。
・接種しても授乳に影響はない
「痛くて抱けない」とならないように、赤ちゃんを抱っこする腕を考えて打ちましょう。2回とも同じ腕で構いません。
モデルナでは、母親が下痢、赤ちゃんは便秘(どちらも1~2日程度)のパターンがあります。赤ちゃんに影響はないです。
ファイザーはない副反応ですので、うちでは授乳中の方はファイザーを勧めています。
【副反応対策で必要なこと】
・旦那の家事教育をしておく
日本では、旦那さんが家事・育児をできるようにしておくことが重要です。
男は事前にトレーニングしておかないと、いざととゆう時に使えません。
これは女性の間隔で「このくらいできるだろう」は通用しません。事前トレーニングが必要ですので、普段から少しでも家事・育児を手伝ってもらい、レベルアップしたことを褒めておきましょう。
これは、夫を「カイゼン」モードに入れて、夫が自分で工夫して効率よく家事・育児をこなすようにさせるのが目的です。こうなったら止まりません。いつの間にか書籍を出版して、セミナーをやって、「かじえ〇ん」とか呼ばれるようになるかも知れません。とても素晴らしい副業です。
そんな感じで、最終的にはワクチン接種後の数日間は夫に任せっきりにします。
いつもがワンオペだったらこれを機に数日でも羽を伸ばしましょう。うまくいけばずっと休めます。
・ワクチン接種後は、具合の悪いふりをしておけば大丈夫です。
これで、日中に美容院に行ったり、カフェ、書店でファッション雑誌を読みあされますね。
ワクチン接種した同士で、遊びにも行けます。アメリカはディズニーランドですらマスクなしでOKになりました。
突然アフロにしない限り、どうせ女性の髪型の細かい違いは男性は気が付きません。
バレませんから。
ちなみに本気で言ってます。
・体調が悪くなりやすい人は副反応が出やすい印象
普段から体調が悪くなりやすい人は、副反応が出やすく、典型例から外れやすい印象です。
妊娠中は心配になると思うので、休む体制を整えておきます。実家に応援を頼んでおきましょう。
接種後の休息期間を3日はみておきます。
4)ワクチンアレルギーで起こさないためにはこれ
アレルギーの医者として、予防できるものは絶対に予防したい事例です。
最も効果的だと思っていることは、持っているアレルギーを事前に治療しておくことが、アレルギーを起こす確率を下げます。
つまり、時速100㎞で走っている車を、時速50㎞まで落とすような感じです。事故が起きても100㎞よりは軽く済みます。これを「リスクをコントロールする」と言います。
ご存じない方が多いですが、特にアトピー性皮膚炎は全身の問題なので、ワクチン前の治療が非常に重要です。
アトピー性皮膚炎は、軽い重いは関係なく、湿疹が少しでもあると体がアレルギーを起こしやすい体質になっていくことがわかっています。
妊婦の気管支喘息治療を行っているクリニックでは常識的なことではありますが、、妊娠中は後期(特に30週以降)はアレルギーを起こしにくい状態には入ります。
接種時期を考える参考になるかと思います。
5)だから、これが必要です
①気分を上げておく
ビタミンC、たんぱく質、腸内細菌を整える、スポーツ飲料水・・・どれも全く副反応は減りませんが、副反応対策として準備している時はとても気分があがります。しかし、この感情は女性に大事です。
②体に素直になる
眠かったら寝る、妙にお腹がすいたら食べる。どれも1日程度のことです。
③あなたの周囲を思う気持ちに感謝です
ワクチン接種をするあなたは、周囲と子供たちに思いやりを与えられるとても強い女性です。
あなたの思いは、きっと子どもたちに引き継がれます。
【参考文献】